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お客さんの心をつかむ!完全栄養食ベースフードの市場開拓に学ぶマーケティング解像度

#マーケティング #市場開拓 #価値提案


自社のマーケティングが、本当にお客さんの期待に応えていると自信を持って言えますか?

それとも、どこか 「もっと効果的に、もっと直接的に、お客さんの心に響く方法があるかもしれない」 と感じていないでしょうか?

今回、新しい顧客層に広げ市場開拓の成功例として取り上げるのが、完全栄養食のベースフードです。どのようにマーケティング戦略を研ぎ澄せばいいのか、一緒に見ていきましょう。

ベースフードの市場開拓


ご紹介したいのは、完全栄養食を提供するベースフードの 「BASE FOOD」 シリーズの事例です。

便益をターゲットに合わせて訴求


完全栄養食の商品を出し始めたころの話です。

ローンチ当初は、「完全栄養食」 というもの自体に興味を抱いてもらい、食べてみたいと思ってもらうべく、「イノベーター心」 をそそるようなコミュニケーションを行っていた。

予算があまりなかったため、PR 施策を中心に、記者を集めての新商品発表会を開いたり、有名ラーメン店やカフェチェーン、コンビニチェーンなどとのコラボ商品で話題づくりを行ったりした。また、食や健康に敏感なスポーツ選手、栄養士などにアンバサダーになってもらい、UGC (ユーザー生成コンテンツ) を量産、拡散していく活動にも注力した。エンジニアの方や IT リテラシーが高い方などが支援者やユーザーになってくれた。

20年ごろからは、コミュニティーを通じたコミュニケーションと情報拡散のほか、YouTube 広告、Google のディスプレイ広告、SNS (交流サイト) 広告など、デジタル広告を全方位的に出稿するようになった。「完全栄養食とは機能であって便益ではない」 (ベースフード取締役 CMO (最高マーケティング責任者) の齋藤竜太氏) ので、完全栄養食とうたうだけでは不十分だ。ユーザーにとってどんな便益があるかを、ターゲットに合わせて訴求していった。

ダイエットしている人に 「健康的にダイエットできる」 という便益を、筋トレしている人にサラダチキンだけよりも 「筋トレの効果を高める」 という便益を、ゲームに熱中している人に 「簡単に食べられて時短になる」 という便益を伝え、徐々に 「アーリーアダプター層」 にユーザーを拡大していった。

アーリーアダプターからアーリーマジョリティへ拡大


アーリーアダプターの人たちから、さらに広く展開をしていきました。

続けて見ていきましょう。

22年からテレビ CM を開始した。広告予算の 10% 程度とはいえ、40 ~ 50代の人にアプローチできる。ユーザー層は20代が最も多く3割ほどを占めているが、次第に30代、40代、50代にも満遍なく広がってきていることを見据えた措置だ。

販路もコンビニに加え、スーパーやドラッグストアに拡大中で、ターゲットとして主婦やファミリー層にも力を入れている。「アーリーアダプター」 から 「アーリーマジョリティー」 へと普及のステージが変わりつつあると言えそうだ。IT 業界でいわれてきた、「アーリーアダプター」 と 「アーリーマジョリティー」 の間にまたがる深い溝 = キャズムをちょうど超えようとしているところかもしれない。

前半のまとめ


ではここまでを一度まとめておきます。

  • 完全栄養食ベースフードの認知向上や興味喚起のために、イノベーター心を刺激するコミュニケーションを実施した

  • 次の段階では、ダイエット中の人、筋トレをしている人、ゲーマーなどの各ターゲットごとに具体的な便益訴求を重視。ユーザー基盤をアーリーアダプター層に広げた

  • その後はテレビ CM の開始や販路の拡大から、40 ~ 50代、主婦やファミリー層など新たなターゲット層にもアプローチ。商品の普及ステージがアーリーマジョリティへと移行している


学べること


ではベースフードの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

お客さんに合わせた価値提案


マーケティングの核心は 「価値の定義と提案」 にあります。商品やサービスはお客さんにとってどんな価値かを明確にし、お客さんの文脈に沿って価値を伝えます。

ただし、この価値提案は全てのお客さんに対して一律に適用できるわけではありません。というのは、ターゲットとなるお客さんの価値観や求めるニーズはそれぞれ異なるからです。

ここで注目したいのはベースフードのマーケティング戦略です。ローンチ当初、完全栄養食という新しい概念をお客さんに理解し興味を持ってもらうため、「イノベーター心」 を刺激するコミュニケーションを展開しました。

その後、ターゲットをダイエットをしている人、筋トレをしている人、ゲームに熱中している人などと具体的に顧客層を分け、それぞれに対する価値提案を明確にしました。

例えば、ダイエット中の人には 「健康的にダイエットできる」 という価値を、筋トレ中の人には 「筋トレの効果を高める」 、ゲーマーには 「簡単に食べられて時短になる」 という便益を伝えるなど、ターゲットごとのニーズに応じたメッセージにしたわけです。

これらから学べるのは、マーケティングコミュニケーションにおいては同じメッセージではなく、お客さんの特性や価値観に応じた価値提案を設定すべきだということです。

顧客獲得のステージの把握


マーケティングを成功させるカギの1つは 「顧客獲得のステージの把握」 です。自社の商品やサービスが現在どのような顧客層に浸透しているか、またその次にどの層をターゲットにするべきかを明確にすることが大事です。

ベースフードの事例から学べるポイントは、イノベーター理論を商品普及の 「ものさし」 として使用したことにあります。


イノベーター理論とは、新しい技術や製品が市場に浸透していく順番について、人々を5つのグループに分けて説明する理論です。

✓ イノベーター理論の5つのグループ
  1. 新しいものに真っ先に飛びつく人 [イノベーター]
  2. 流行に敏感でオピニオンリーダーのような人 [アーリーアダプター]
  3. 取り残されないように後から追いかける人 [アーリーマジョリティ]
  4. 保守的でなかなか取り入れない人 [レイトマジョリティ]
  5. 最後まで決して動かない人 [ラガード]

ベースフードは最初のステージでイノベーターに向けた戦略を取り、次にアーリーアダプター層に移行しました。その後はアーリーマジョリティへと普及のステージを変えました。

このアプローチが示すのは、大きなグランドデザインを描き、現在のステージを理解し、次の戦略を早めに準備する重要性です。

マーケティングにおけるこのステージ感覚は、自社の商品・サービスがどの段階にあり、何をすべきかを判断する上で役立ちます。

解像度を高める


解像度を高めることは、マーケティングにおいて大事な視点です。

具体的にはターゲットとなるお客さんを一括りにしてざっくりと見るのではなく、各個人 (n1) や顧客グループの価値観やニーズに対して粒度を細かく捉えます。解像度を上げることで、それぞれの顧客層に対して、より具体的で魅力的な価値提案が可能となるのです。

解像度を高める視点は、時間軸に対しても適用できます。

現在の状況だけでなく、次の段階も見据え、戦略や施策につなげるといいでしょう。ベースフードの例ではイノベーター理論を用いて、各ステージにおける現状と今後の展開を見極めました。

学びを一般化すると、解像度を高めることはターゲットとなるお客さんの理解と戦略の精緻化を図り、さらに効果的なマーケティングを実行するために欠かせない手法です。


まとめ


今回はベースフードの市場開拓の事例から学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングでは 「価値の定義と提案」 が重要。お客さんによって価値観や求めるものが変わるので、お客さんの文脈に合った価値を伝えること大切

  • 商品やサービスの今の顧客層を理解し、次のフェーズを見極める。今どの段階にいるのかを把握し、次の戦略を早めに準備するといい

  • ものごとへの解像度を高め、お客さんのニーズや価値観を精緻に具体化して理解する。時間軸においても、現状だけでなく未来も見据え戦略を立てる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。