生活者が日常生活の中で何気なくやっていることに、実はビジネスチャンスが隠れていたりします。
今回はエステーの事例から、見えていなかった問題を見つけ出し解決することで、お客さんに新たな価値を提供する方法を探ります。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
ムシューダ防虫カバー
ご紹介したいのは、エステーの 「クリーニング専用 ムシューダ防虫カバー」 です。
エステーの 「クリーニング専用 ムシューダ防虫カバー」 の販売が好調だ。新型コロナウイルス下でクリーニング需要が落ち込んだ中でも利用が広がり、2022年度には全国のクリーニング店の約1割が扱うようになった。
人気の要因はどこにあるのでしょうか?開発の背景も含めて見ていきましょう。
クリーニング店では、利用者が従来の使い捨てのカバーと同製品を選べる仕組みだ。オプションサービスのため各店で追加料金が必要になるが、自宅に持ち帰った後もそのままクローゼットなどで保管できるメリットがある。
開発のきっかけは家庭でのクリーニング済衣類の保管状況への問題意識だ。エステーが一般家庭向けに実施したアンケート調査によると、返却時のカバーをかけたまま衣類を保管しているとの回答が5割近くに達していた。
ただ、通常のカバーは保管目的での使用は念頭に置いていないケースが多く、通気性の悪さからカビが発生する懸念もあった。エステーは多くのカバーが 「誤使用」 されている可能性があると考え、そのまま使えるカバーに商機を見いだした。
従来防虫カバーを使う場合、購入したカバーを利用客自らが衣類に掛け直す手間もかかっていた。
学べること
ではエステーの 「クリーニング専用 ムシューダ防虫カバー」 から、学べることを掘り下げていきましょう。
知らない間に生じていた問題
クリーニング後の服は、清潔を保つためにビニール袋で覆われるのが一般的です。多くの人は自宅のクローゼットでの保管でもこのビニール袋をかけたままにします。
しかし、実はビニール袋は通気性が悪く湿気がこもりカビの温床になる可能性があります。これは良かれと思ってやっていることが逆効果になり、生活者が気づいていない問題が潜んでいたのです。
課題をビジネス機会に変換
エステーは、ここにビジネスチャンスを見出しました。
従来のビニール袋が持つ問題点を解消する新たなビニール袋を開発することで解決を目指しましたのです。クリーニング後の衣類専用のビニール袋を開発することで、クリーニング後の服がカビてしまという問題を防ぐことを可能にしました。
エンドユーザーへの価値提供
今回の事例では、エステーが製品を直接売る相手はクリーニング店ですが、その先にいるお客さん (生活者) にも恩恵があります。開発したエステーのビニール袋は、クリーニング後の衣類を安心して保管できるという新たな価値を提供しました。
これによって、クリーニング店の先のお客さんに価値をもたらし、それが直接のお客さんであるクリーニング店の成功につながっているのです。
競合からのリプレイス
今回の事例は、既存のもの (競合商品やサービス) の問題を見出し、独自の方法で解決することで、自分たちの商品で置き換えることに成功したということです。
エンドユーザーである 「お客さんの先にいるお客さん」 がまだ気づいていない問題を見つけ、その解決策を提供することで 「お客さん」 のビジネスも成功し、それによって自分たちの商品が既存のものからのリプレイス (置き換え) が実現しました。
リプレイスを生み出す顧客理解
リプレイスを生み出すためには、何よりもお客さんのことを理解し、顧客理解から始めることが大事です。
今回のエステーの例では、消費者へのアンケート調査を通じてビニール袋の使いに対する問題点を把握し、そこからビジネスチャンスを見出しました。そして、既存のビニール袋を自社商品で置き換えることで、新たな価値を提供しました。
このエステーの成功例から学べることは、マーケティングにおいて常に新たな視点でお客さんの課題と価値提供を捉え直す重要性です。従来の方法や視点にとらわれず、お客さんが本当に求めているものは何かを理解し、その解決策を提供するのです。
ポイントをもう1つ加えると、理解するのは直接のお客さんだけでなく、その先のお客さんにも目を向けるといいでしょう。自社の商品やサービスが最終的に誰にどんな価値をもたらすのかを明確にし、お客さんの成功を実現する。その結果として自分たちの商品・サービスがお客さんから必要不可欠なものと思ってもらえます。
まとめ
今回はエステーの 「クリーニング専用 ムシューダ防虫カバー」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 顧客設定と価値提供
- 直接のお客さんだけではなく、その先にいる 「お客さんのお客さん」 (例: エンドユーザーである生活者) にも価値を提供する姿勢が大事
- お客さんの置かれた状況や気づいていない課題感、奥にある望みや不満を理解する。お客さんの理解を起点に、問題や課題設定、解決策、提供価値とつなげていこう
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