#マーケティング #顧客設定 #新規顧客
市場の変化に敏感になることで、新たなチャンスを見出せることができます。
今回は、明治の新しいチョコレートブランドの事例から、背景にある市場動向や消費者ニーズの変化を理解し、新たな市場を開拓するためのアプローチを解説します。
明治の新ブランド 「濃いちょこれえと」
インバウンド客をターゲット顧客に
明治は初のインバウンド (訪日外国人) をターゲットにしたチョコレート菓子の販売を始めました (リリース) 。
ブランド名は 「濃いちょこれえと」 です。明治がインバウンド向けのブランドを立ち上げるのは初めてになります。
味は、抹茶、黒糖、抹茶チョコサンド、苺チョコサンドの計4種類で、全国のスーパーやドラッグストアで販売されます。
新ブランドの狙い
新ブランドの 「濃いちょこれえと」 は、明治の既存のチョコレートブランド 「リッチチョコレート」 をリニューアルしたものです。
リッチチョコレートでは抹茶味や黒糖味を展開していましたが、こうした素材が日本らしいお土産を求めるインバウンドの外国人観光客と相性がいいと判断してのブランド刷新です。
新しいブランドである 「濃いちょこれえと」 は、商品名、抹茶や黒糖といった素材、パッケージに日本らしさをちりばめ、訪日外国人客のお土産需要の取り込みを狙います。店頭では商品情報を外国語で紹介するサイトに誘導するPOP (店頭販促) を設置するなどして、インバウンドの来店客に気づいてもらえ、関心を高める施策を展開します (参考記事) 。
学べること
では明治のチョコレートの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
今回の事例を汎用化して捉えると、既存ブランドのメインターゲットとサブターゲットの 「メイン」 と 「サブ」 を入れ替えるために、新しいブランドを立ち上げたということです。
メインとサブのターゲット顧客の逆転
明治は、刷新前のブランドの 「リッチチョコレート」 では、これまで日本人の消費者をメインターゲット顧客としてきました。インバウンドの増加を背景に、訪日外国人旅行客を新たなメインターゲット客と位置づけることにしました。
元々、日本国内で販売されていたリッチチョコレートは外国人観光客にも買われていましたが、あくまでサブターゲットであり、外国人客専用の商品は用意されていなかったわけです。
しかし、訪日客数が過去最高の水準に達する中で、明治は市場環境を捉え直し、新しいブランドとして外国人旅行客をメインターゲットに据えた商品を別でつくっても、充分に受け皿になると判断しました。それが外国人観光客をメインの顧客層とする新ブランド 「濃いちょこれえと」 です。
ターゲット顧客に合わせた訴求
新商品となる 「濃いちょこれえと」 の開発では、日本らしさを出す素材選びに明治はこだわりました。抹茶や黒糖、抹茶チョコサンド、苺チョコサンドといった日本独自の味わいを活かすことで、外国人観光客が求める日本の味を具現化したと言えます。
また、新ブランドのマーケティングとして、外国語での商品情報を紹介する POP を商品棚に設置したり特設サイトを用意するなど、言語的なハードルを下げたコミュニケーションと情報提供を行っています。
新ブランド 「濃いちょこれえと」 は日本人にとっても気になる存在になりえるので、日本人の消費者をターゲットから除いているわけではありません。メイン顧客は外国人客ですが、サブターゲット顧客として日本人の消費者も獲得していくことが期待できます。
変化への適応
明治の新ブランド 「濃いちょこれえと」 から学べるのは、市場の変動や消費者ニーズの変化の兆しをつかむこと、そして時には既存の商品展開やマーケティングを見直し、新たな顧客層を積極的に開拓する姿勢が必要であることです。
環境変化が起こり、その変化に適応するために、新ブランドが従来のメイン顧客層とサブ顧客層を逆にするたターゲット顧客設定というのは、他の業界にもヒントになる事例です。
まとめ
今回は明治の 「濃いちょこれえと」 の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ターゲット顧客の逆転戦略: 明治は、日本人をメインターゲットとしていた 「リッチチョコレート」 から、インバウンドの増加に伴い訪日外国人旅行客を新たなメインターゲットと位置づけた新ブランド 「濃いちょこれえと」 を立ち上げた。従来のメインとサブのターゲット顧客を逆転したブランド
- ターゲットに合わせた製品開発とマーケティング: 「濃いちょこれえと」 は、日本らしい素材である抹茶や黒糖、抹茶チョコサンド、苺チョコサンドを用い、訪日外国人が求める日本の味を提供する。外国語での商品情報を POP に表示し特設サイトをつくるなど店頭展開と Web でも外国人客への訴求を強化
- 環境変化への適応と新規市場の開拓: 明治は市場動向や消費者ニーズの変化を捉え、既存の商品展開やマーケティングを見直す柔軟性を発揮した。この事例からは新たな顧客層を積極的に開拓し、変動する市場環境に適応するためのヒントになる
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