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ダメなリサーチ、良いリサーチ。ビジネスに貢献できるリサーチとは?

#マーケティング #マーケティングリサーチ #調査設計

そのマーケティングリサーチ、目的や活用イメージは明確になっているでしょうか?

調査の結果が出てから 「さてどう分析しよう」 では、うまいマーケティングリサーチとは言えません。良いリサーチにするためには、調査の計画段階に成功のカギがあります。

今回は 「マーケティングリサーチ」 をテーマに、マーケティングとマーケティングリサーチの関係、うまいリサーチとそうでないリサーチの具体的な違い、そして良いリサーチにする方法を解説します。

マーケティングとマーケティングリサーチの関係


マーケティングとマーケティングリサーチは密接に関係し、マーケティングの問題解決のためにマーケティングリサーチがあります。

マーケティングリサーチの役目は、マーケティングの問題解決に答えや示唆を出すことです。

ここでいう解決すべきマーケティングが抱える問題とは、たとえばお客さんの困りごとに気づいていない、理解していないという状態です。お客さんの理解が浅ければ、マーケティングが目指すお客さんに価値をもたらすことはできないからです。

良いマーケティングリサーチは、マーケティングにおける問題解決に貢献するものです。具体的にはお客さんを深く理解して洞察を共有し、マーケティングでの良い判断から意思決定をし、実行につながるサポートをします。

マーケティングとマーケティングリサーチの関係と流れを整理すると、次のようになります。

  1. 設定されたマーケティングの目的がある
  2. その目的を達成するためには解決すべき問題がいくつか存在する
  3. 問題解決にはマーケティングリサーチが必要と判断される
  4. マーケティングの問題解決につなげることを目的にマーケティングリサーチを行う
  5. リサーチからの情報 (分析結果, 示唆, 提言) をマーケティングに提供する
  6. マーケティングでの意思決定に活用される
  7. リサーチが問題解決の一助となり、マーケティングの目的達成につながる


このようにマーケティングリサーチとマーケティングは、密接につながっているのです。

下手なリサーチ、うまいリサーチ


ここからは、マーケティングリサーチについて掘り下げます。

うまく活用されないマーケティングリサーチとは

ダメなマーケティングリサーチの典型的な例は、リサーチ設計のところから詰めが甘いものです。

そもそもとして、「何のためにリサーチをするか」 の目的が明確ではない調査です。そうした調査では、調査を実施した後の集計結果が出てきた段階になって、初めてこの結果は何を意味するのか、何がわかるのかを考えはじめることになります。

必然的に調査結果がどう活用されるかについても、調査が終了し分析中や分析後のタイミングで考えだすことになります。これでは、マーケティングリサーチは具体的なビジネスの成果につながらないでしょう。

活用されるマーケティングリサーチ

では、ビジネスに貢献できるマーケティングリサーチとは、どのような調査なのでしょうか?

良い調査の肝は 「調査設計」 にあります。

設計がきれいにできていて、調査の目的、ゴール設定、調査結果の活用やネクストステップ、活用につながるアウトプットイメージ、そして調査手法と流れるように設計されています。設計書を見れば、ネクストステップまでクリアに描かれているので、何のために実施するのかの調査の位置づけがはっきりと見えてきます。

調査から意思決定などへの活用イメージが明確になっていない限りはリサーチは実施されないので、良い調査になる確率が高くなります。

では、マーケティングリサーチを良いものにする調査設計の主な項目について順番に見ていきましょう。

目的設定

調査設計では、まず目的とゴール設定の 「なぜやるのか」 「どこまで到達したいのか」 を決めることが大事です。

マーケティングリサーチの目的として、そもそもこのリサーチは何の意思決定のためにあるのか、誰がなぜ必要としているのかです。

いわば実施する調査の存在意義を掲げるわけです。マーケティングリサーチとしてのパーパスと言ってもいいでしょう。

成果物と活用イメージの明確化

次に、調査設計では、ビジネスやマーケティングの意思決定のために必要な情報は何か、その中で、ここが重要ですが、マーケティングリサーチでわかること・わからないことの線引きをします。どこまでをリサーチで明らかにするかの調査で注力する領域を定めるわけです。

調査からの成果物と活用に向けて、調査からどんなアウトプットであれば意思決定の議論がしやすいかを、グラフや図といったのアウトプットイメージも設計時点でつくっておくといいでしょう。

問いと仮説

調査の目的 (存在意義) 、実施して得られる成果物、ネクストステップでの活用イメージを明確にしたら、その後に調査で何を明らかにするかの詳しい内容に入っていきます。

具体的には、調査課題というビジネスの意思決定への論点を 「問い」 という形にし、それぞれの問いを全体で構造化します。

そして、各論点に対して仮でいいので現時点での 「仮説」 も問いとセットで言語化します。

さらにそれぞれの仮説が正しかった場合と反証された場合に、意思決定にどう影響するかも事前に想定しておくといいでしょう。

マーケティングリサーチ設計書

リサーチの設計情報が整理され、構造化されているのがマーケティングリサーチ設計書です。

リサーチ設計書では、主に次の項目で調査実施前に整理しておきます。

✓ マーケティングリサーチ設計書
  1. マーケティングリサーチの調査名
  2. 調査の背景 (ビジネス課題など) 
  3. 調査の目的
  4. 活用イメージやリサーチ後の想定するネクストステップ
  5. リサーチ課題 (リサーチで答えや示唆を出す論点) 、課題への仮説
  6. 調査対象者
  7. 調査手法
  8. アウトプットイメージ
  9. 調査が成功したかどうかを判断する基準 (リサーチクライテリア) 
  10. スケジュールや予算


リサーチ設計書は調査をはじめる前の地図となり、そして実施中、集計・分析をしているときにはガイドラインとして常に手元において参照します。

まとめ


今回はマーケティングリサーチについてでした。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ マーケティングとマーケティングリサーチの関係
  1. 設定されたマーケティングの目的が前提としてある
  2. その目的を達成するためには解決すべきマーケティング上の問題が存在する
  3. 問題解決にはマーケティングリサーチが必要と判断される
  4. マーケティングの問題解決につなげることを目的にマーケティングリサーチを行う
  5. リサーチからの情報 (分析結果, 示唆, 提言) をマーケティングに提供する
  6. マーケティングでの意思決定に活用される
  7. リサーチが問題解決の一助となり、マーケティングの目的達成につながる

✓ NG リサーチ vs Good リサーチ
  • へたなリサーチ: 調査の目的があいまいで調査設計が不明瞭。結果が出た後で初めて、調査から何がわかるか、どう活用するかを考えることになる
  • うまいリサーチ: ビジネス課題から逆算された調査の目的とゴール設定がある。ビジネスの意思決定に必要な情報が明確で、ネクストステップとなる調査結果の活用イメージ、調査課題 (問い) と仮説が事前に言語化されている


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。