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ヤマヒコとウミヒコに学ぶ、日本史から紐解く理想の EX と CX のマーケティングバランス

#マーケティング #インターナルとエクスターナル #歴史

あなたの会社は 「内向き」 と 「外向き」 のバランスをうまく取れているでしょうか?

日本の歴史を紐解くと、実はこの2つの力が交互に影響を与えてきた興味深い傾向パターンが見えてきます。では、現代のビジネスにおいて、このバランスはどう取るべきなのでしょうか?

今回は、日本の歴史に学び、マーケティングへの示唆として 「インターナルマーケティング」 と 「エクスターナルマーケティング」 の適切なバランスを実現するヒントを紐解きます。

 「内向き」 と 「外向き」 が繰り返した日本の歴史


書籍 "ビジネスに役立つ 「商売の日本史」 講義 (藤野英人) "には、著者である藤野さんの大胆な仮説が登場します。

それは 「日本のお金は "内向き" と "外向き" の間を時代ごとにスイングする」 という仮説です。

本書では、内向きを 「ヤマヒコ」 、外向きを 「ウミヒコ」 と表現します。ヤマヒコとウミヒコは、古事記や日本書紀に登場する兄弟の神さまです。2人は対照的な性格をしています。

ヤマヒコ政権 (内向き) の特徴

ヤマヒコは国内志向です。経済は内需が栄えます。

典型的なのは鎖国を敷いた江戸時代です。他には鎌倉時代や戦後の自民党政治にも国内志向のヤマヒコの要素を見ることができます。

昭和においては、道路などのインフラ整備が国家政策として推進されました。田中角栄の日本列島改造論がまさにそうです。

ウミヒコ政権 (外向き) の特徴

ウミヒコは、海外志向です。貿易に力を注ぐ傾向があります。

例えば、日宋貿易で権力を得た平清盛、日明貿易の室町時代、織田信長や豊臣秀吉などの戦国時代です。本書によれば、開国後の明治以降から戦前までもウミヒコの特徴があったと言います。

ヤマヒコとウミヒコがそれぞれ影響されたもの

日本が、ヤマヒコまたはウミヒコとなることに強い影響を及ぼしたひとつに、その時代での中国大陸の動向があります。中国の政権の強弱が、日本の経済活動の方向性に大きな影響を与えました。

中国大陸に権力の強い政権や漢民族政権であれば日本はウミヒコ政権 (外向き) に、一方で弱い政権や非漢民族政権であれば日本ではヤマヒコ政権 (内向き) になったのです。

また、日本の政権がどの地域に基盤を置いたかもウミヒコかヤマヒコに影響を与えました。外向きや中国大陸との関係が強いウミヒコでは奈良や京都などの西日本に、内向きのヤマヒコでは鎌倉や東京などの東日本でした。

時代ごとに繰り返したヤマヒコとウミヒコ

日本史を大きな流れで見ると、時代ごとでヤマヒコの性格が強い日本、ウミヒコの性格が強い日本が現れます。それぞれの特徴が交互にスイングするかのように、現在に至るまで歴史を重ねてきました。

まとめると次のようになります。

ヤマヒコ ウミヒコ
時代 平安 (後期) 
源氏の時代
鎌倉時代
江戸時代
戦後民主政治
現在???
大和, 奈良, 平安 (前期)
平家の時代
室町時代
織田・豊臣の時代
明治, 大正, 昭和 (前期) 
現在???
特徴 平等
クローズ
土地資本主義
垂直思考・ピラミッド型
道路, 高速道路, 新幹線
国内志向
東側の地域
東京, 鎌倉
中国が弱い・非漢民族政権の時代 
自由
オープン
貨幣資本主義
水平思考・ネットワーク型
海, 飛行機
海外志向
西側の地域
京都, 大阪, 広島, 福岡
中国が強い・漢民族政権の時代 

* * *

ではここからは、ヤマヒコとウミヒコの概念をマーケティングに当てはめて考察をしてみます。

マーケティングへの応用


日本史において、ヤマヒコ (内向き) とウミヒコ (外向き) の勢力が交互に影響を与えてきた歴史を、現代のマーケティングに応用すると、どんな示唆が得られるでしょうか?

結論から言うと、インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティングのバランスの重要性に学びがあります。

ヤマヒコの性格が強い時代とウミヒコの性格が強い時代を見比べることで、それぞれが示すマーケティングへのヒントを探ってみましょう。

ヤマヒコ時代に学ぶ 「インターナルマーケティング」 

ヤマヒコの時代は、国内志向が強く、内需を中心とした経済活動が活発でした。例えば、平安時代の国風文化の開花、江戸時代の鎖国政策や、戦後の自民党政治が推進したインフラ整備が代表的です。

これらの時代には、国内の安定や国民の生活水準の向上、国内文化の独自の発展がもたらされました。これを現代のビジネスに当てはめると、インターナルマーケティングという社内へのマーケティングの充実です。そこからの従業員の働き方 (体験) という 「Employee Experience (EX) 」 を高めていくことです。

従業員の満足度が高まれば、業務への意欲や仕事での生産性も向上し、企業全体のパフォーマンスに良い影響を与えます。

ヤマヒコの時代のように、内部の強化を図ることが、外部との競争力を高める土台になるわけです。例えば、昭和の日本列島改造論のように、社内のインフラとして福利厚生や教育制度を充実させることで、従業員が安心して意欲的に働ける環境を整えることができます。

また、ヤマヒコの時代には、クローズドな環境での地道な取り組みが重視されました。

これを企業に当てはめると、従業員同士の信頼関係や社内コミュニケーションの強化が、組織全体の結束力を高める手段となるでしょう。鎌倉時代の源頼朝が、家臣たちを組織し強い絆を築いたように、企業内でも従業員との関係性を深めることで、強固な組織体制が築かれます。

ウミヒコ時代に学ぶ 「エクスターナルマーケティング」 

ウミヒコの時代は外向き志向が強く、貿易や国際交流が活発に行われました。日宋貿易で勢力を拡大した平清盛、織田信長、信長を引き継いで天下統一を果たした豊臣秀吉が推進した海外との貿易です。

これを現代ビジネスに当てはめれば、エクスターナルマーケティングという外部のお客さんへのマーケティングが成功したと見ることができます。

ウミヒコの時代の特徴として、海外の文化や政治制度、技術の影響を受けてそれまでの価値観や習慣から変化し、日本の歴史に新たな文化を呼び込んだ点が挙げられます。

マーケティングに当てはめれば、市場や顧客ニーズを察知し、既存の認識を書き換えたりアンラーニングも辞さない姿勢がエクスターナルマーケティングには求められるということです。

そのためには、お客さんの声を真摯に受け止め、お客さんからの期待を超える顧客体験を提供し、価値を感じてもらうことが大事です。インターナルマーケティングでは Employee Experiment (EX) でしたが、エクスターナルマーケティングでは Customer Experiment (CX) という顧客体験の向上を目指します。

ブランドのミッションや価値観を明確にし、それを外部に発信することが、お客さんとの信頼関係を築く上で重要になります。織田信長が先見の明のある天下統一への戦略を実行して戦国時代をリードしたように、企業もまた、独自のアイデンティティやビジョンを打ち出すことで、市場でのポジションを確立することができます。

ヤマヒコとウミヒコのバランスを取る

ヤマヒコとウミヒコ、マーケティングに当てはめたインターナルマーケティングと EX 、エクスターナルマーケティングと CX は、どちらか一方に偏ることなく、バランスを取ることが大切です。

企業が持続的に成長するためには、ヤマヒコ政権のように内側の基盤をしっかりと固め、従業員が安心して働ける環境や企業文化を整える必要があります。組織の結束力や社内での効率が上がり、安定した経営の土台を築くことができます。

ただし、内向きの取り組みだけでは市場の変化に対応しきれません。ウミヒコ政権のように外部に目を向け、新たな市場機会を探り、競合の動向を把握し、何よりもお客さんのことを深く理解する姿勢が求められます。顧客体験を優先にする取り組みを続けることで、企業は新たな成長のチャンスをつかめ、市場での競争力を高めことができるのです。

ヤマヒコ的なアプローチとウミヒコ的なアプローチは、互いに補完し合う関係にあります。

具体的には、従業員の満足度が高まることで、お客さんに提供する顧客体験と顧客価値も向上することでしょう。また、お客さんからのフィードバックを受け入れ、顧客理解や商品理解をもとに従業員の教育や組織体制を改善することも可能です。

このように、インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティング、そして EX と CX が相互に影響し合い、ポジティブな好循環を生み出すことが、持続可能な成長を実現していきます。

ビジネスで成功を収めるためには、ヤマヒコとウミヒコのバランスをうまく取り、状況に応じて適切に戦略を調整する柔軟性が大事です。

日本史においてヤマヒコの時代とウミヒコの時代が交互に影響を与えてきたように、現代の企業においても、内向きと外向きの両方をバランスよく取り入れることが、企業の長期的な成功を支えます。

まとめ


今回は、歴史からマーケティングに学べることを考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • インターナルマーケティングは、日本史のヤマヒコ (内向き) 時代から学べる示唆。社内の環境整備や 従業員体験 (EX) への取り組みによる従業員満足度の向上に注力することで、社内の人材育成や組織文化の醸成、生産性と組織の結束力が高まる。これは外部への競争力の基盤となる

  • エクスターナルマーケティングには、ウミヒコ (外向き) 時代の教訓に示唆がある。顧客体験 (CX) と顧客価値の向上を実現するために市場や顧客ニーズの察知、既存の認識やアンラーニングが重要となる。自社やブランドのビジョンとアイデンティティを市場に打ち出す戦略を立案し、実行していく

  • ヤマヒコとウミヒコのバランスを取る。インターナルマーケティングで社内の結束力を高めつつ (EX) 、エクスターナルマーケティングから市場の変化に対応する (CX) 。両者は相互に補完し合う関係にあり、2つのアプローチが企業の持続的な成長を支える


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。