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学生時代の焼肉バイト接客の学び。POP と POD をとらえるマーケティング戦略

#マーケティング #接客バイト #POPとPOD

市場で生き残るためには、ただ単に競合商品と 「違う」 だけではなく、「その違いがお客さんにとってどんな価値があるのか」 を明確にすることが大事です。

学生時代の焼肉バイト店で私が学べたことが、この課題のヒントになるかもしれません。

今回は、POP と POD という似て非なる2つの概念から、お客さんの心をつかむマーケティングを紐解きます。

学生時代の焼肉飲食店バイトでの学び


学生の時、私は京都に住んでいました。学生時代でいくつかアルバイトをしていましたが、その中でも特に印象に残っているのは、焼肉の飲食店でのバイトです。

このバイトではお客さんとの接客について学びが多くありました。

接客への学びと言うのは、例えば次のようなものです。

  • お客さんの来店時には 「いらっしゃいませ」 、お帰りになる際は 「ありがとうございました」 とホールからでもお腹から声を出す
  • テーブル席で注文を受けるときは、膝をつき相手よりも低い姿勢で応対する
  • 畳の個室の座席では、襖の開け方や締め方、畳での体の移動の方法
  • お客さんが使うトイレは常に清潔にしておく
  • 食事メニューは自分でも食べてみて、お客さんに自分の言葉で説明できるようにしておく
  • お客さんの様子を観察し、店員を呼びそうならお客さんから声をかけられなくても、こちらからお声掛けする


これらはいずれもお客さんに行うことで褒められることはありませんが、お客さんに気持ちよく食事の時間を過ごしてもらうためになるものです。

一方で、もしできていなければ、せっかくの楽しい時間が興ざめしたり、場合によっては気分を害す直接的な要因にもなります。

マーケティングへの示唆


今あらためて学生時代の焼肉店でのアルバイトのことを振り返ると、バイトでの学びはマーケティングにも通じるところがあります。

先ほどの例に挙げたバイトからの学びは、マーケティングで言えば差異化の大きく2つの要素である 「POP」 と 「POD」 において、前者の POP に当てはまるものです。

では順を追って、POP と POD について解説していきます。

POP と POD


出典: MarkeZine

POP は Points of Parity の略で、その商品カテゴリーでお客さんから最低限の求められる必須の要素です。

英語の Parity は 「等しい」 というニュアンスがあります。POP はそのカテゴリーの中でどの商品も等しく持っている特徴 (必須の要素) です。POP は売り手にとってはカテゴリーに参入するために必要なチケットや入場券のような存在です。POP は他社には 「負けない」 という内容です。

POD は Points of Difference の略で差別化要素です。

商品やサービスが他と異なるユニークな価値をつくることで、お客さんからの関心を引き、選ばれる理由を提供します。POD は他社に 「勝てること」 です。

POP と POD をまとめると、次のようになります。

  • POP (Points of Parity) : カテゴリーにおいて、商品やサービスが最低限で満たすべき基本要素。他社には "負けない" こと
  • POD (Points of Difference) : 自社商品・サービスの差異化になり、他とは違うユニークな価値になり得る要素。他社に "勝てる" こと

POP があって初めて POD が活きる

POP とはカテゴリーに参入するための 「入場券」 のようなものです。

たとえば、ネット通販サービスの手数料の 「安さ」 、自動車での 「安全性」 という基本的な要求になります。こうしたカテゴリーでの最低限の水準を満たさなければ、そもそも人はそのサービスや商品を買うかどうかの選択肢に入れることはないでしょう。

こうした基本的な要素である POP が満たされて、初めて POD という価値の差異化要素に目を向けてもらえるわけです。

ここで私の学生時代の焼肉飲食店でのバイトからの学びに話をつなげると、得られた学びで共通するのは、もしできていなければせっかくの楽しい食事の時間が興ざめし、場合によっては気分を害す直接的な要因になることでした。これはつまり、最低限として満たすべき基本要素ととらえられるので、POP だということです。

こうした POP があって、他のお店にはない食事メニュー、特別なサービス、お店の雰囲気という POD という 「他店にはない価値」 が次にきます。

マーケティングで見落としがちなこと

POP が備わっていなければ、商品やサービスは市場に受け入れられません。

POP があっての POD ですが、しかし、少なくないケースにおいて、POP を満たしているかの前に、POD という差別化を追求しようとする傾向があります。

マーケティングでは商品やサービスがそのカテゴリーで最低限に求められるレベル、つまり POP を満たすかどうかの見極めが重要になります。

POP が確立された上で、POD をつくっていくことが大事であり、POP が10点満点中2点や1点の状態で POD から独自性だけを際立たせようとしても、商品全体ではバランスを欠きます。結局はお客さんから選ばれにくいものとなってしまいます。

マーケティングでは 「差異化」 に重点を置きがちですが、その前に土台にあるべき POP を見落さないように注意が必要です。POP があっての POD ということは忘れてはいけません。

まとめ


今回は、私の学生時代のバイトの話を思い出したところから、マーケティングへの示唆を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • POP (Points of Parity) : そのカテゴリーにおいて、商品やサービスが最低限で満たすべき基本要素。他社には負けないこと

  • POD (Points of Difference) : 自社商品・サービスの差異化になり、他とは違うユニークな価値になり得る要素。他社に勝てること

  • POP はカテゴリー参入への 「入場券」 のようなもの。POP というお客さんからのカテゴリーでの最低限の要求を満たし、その上で POD からの独自の価値をつくり、商品が選ばれる理由をつくる。POP があっての POD


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。