#マーケティング #生活者理解 #世代
マーケティングの世界で、「若者向け」 「シニア向け」 といった年齢による区分は当たり前のように使われています。しかし、それだけで本当に消費者を理解できるのでしょうか?
例えば、同じ30代でも、今の30代と20年前の30代では、背景にある時代や世代の影響で全く異なる価値観やニーズを持つことがあります。時代の流れや世代の特性を無視すると、お客さんの本質を見誤る危険性が潜んでいるのです。
では、どうすれば消費者を本当に理解し、効果的なマーケティングを実現できるのでしょうか?
今回は、より深い顧客理解のための視点を探ります。
年代の影響、時代の影響、世代の影響
マーケティングにおいて、生活者の行動や価値観を理解するためには、「年代の影響」 、「時代の影響」 、「世代の影響」 の3つを正確に把握することが重要です。
それぞれの影響が生活者にどのように働くかを理解することで、より効果的なマーケティング活動につながります。
では3つの影響について、順番に見ていきましょう。
年代による影響
年代による影響は、人が人生の特定の年齢段階で共通して経験する変化です。
たとえば、二十歳前後では初めてのひとり暮らし、アルバイト、就職活動、就職といった、社会人に入っていくライフステージの変化があります。
30代になると結婚や育児といったライフイベントが増え、自分だけではなく家族の健康や子育てに対する関心が高まります。
さらに人生の針を進めると、60代以降になるとリタイア後の生活や健康管理が主な関心事です。
時代による影響
2つ目の影響は 「時代による影響」 です。特定の時代背景や出来事が生活者全体に及ぼす影響を指します。
例を挙げると、携帯電話やインターネットの普及は、日本では1990年代後半から2000年前後にかけて本格的に進み、消費行動に大きな変化をもたらしました。オンラインでの情報収集、買いもの、後には SNS の登場により、個人が気軽にネットで発信できる環境が生まれ、生活者はほしい情報を入手し、口コミやレビューをときには企業からの公式情報よりも参考にするようになったのです。
2011年の東日本大震災も、人々や社会の仕組みに大きな影響を与えました。未だその傷跡を残し、復興に向けて歩みを止めることはありません。現在進行系で人々に影響を与えています。
2020年の新型コロナウイルスの世界的なパンデミックは、オンラインサービスの急増や利用者の増加、働き方ではリモートワークの普及、子どもたちの学校生活も一変しました。
世代による影響
3つ目の影響は 「世代による影響」 です。
同じ時期に生まれ、同じ時代背景や歴史的な出来事・イベントを共有した集団が持つ、共通の価値観や行動パターンを指します。
先ほど 「時代による影響」 を見ましたが、同じ時代でも子どもや思春期のときに過ごした影響と、その時代を20代や30代、あるいはシニアの年代で過ごしたのでは、受ける影響も異なります。たとえばネットや SNS の普及を思春期のときに経験したのか、それとも中年以降で体験するかで世代への影響は変わります。
そうした世代による影響は、消費行動や価値観に違いをもたらします。
具体的には 「団塊の世代 (1947年 ~ 1949年生まれ (定義によっては1951年生まれまでを含める場合もある) ) 」 は、高度経済成長期を背景に育ち、企業への忠誠心や集団主義を強い価値観を持っています。
他には 「ポパイ・JJ 世代 (1952年 ~ 1960年生まれ) 」 は、雑誌文化が花開いた1970年代に青春を謳歌し、個人の趣味やファッションに強い関心を持っています。この世代は、自分のスタイルを持ち、他人とは違う個性を大切にする傾向があります。
ミレニアル世代 (1981年 ~ 1996年生まれ) は、インターネットの普及とともに成長し、デジタルネイティブと呼ばれるようにデジタル技術に親しみを持ちます。
最近はやりの Z 世代 (1997年 ~ 2010年生まれ) はスマートフォンや SNS が浸透した環境で育ち、デジタル技術に精通するだけではなく、オンラインでの交流や情報収集は日常的に自然に行います。
時代や世代ごとの特徴を加味したマーケティング
生活者を捉え理解を進める際に、人の年代で区切るだけでとどまらず、それぞれの年代が背後に持つ時代の影響や世代ごとの特徴を加味することで、より深い顧客理解ができます。
マーケターが年齢、時代、世代の影響を包括的に理解することで、以下のような具体的なメリットが得られます。
精度の高いターゲティング
生活者の年代だけでなく、その背後にある時代背景や世代ごとの特徴を理解することで、ターゲティングの精度が向上します。
たとえば、30代女性というセグメントだけとはせず、「デジタルネイティブで環境意識の高いミレニアル世代の30代女性」 といったより解像度の高い顧客像を描くといいでしょう。広告配信や商品開発などのビジネス活動の効果の最大化を狙えます。
適切なメッセージ
生活者の価値観や行動パターンに合わせた適切なメッセージを発信することで、自社ブランドへの共感を得やすくなります。
具体的には、仕事と家庭の両立に悩むミレニアル世代の親には、時短や効率化をアピールするメッセージにするという具合です。世代ごとの価値観や課題に寄り添ったコミュニケーションを展開することで、お客さんからの共感を得やすくなります。
長期的な顧客関係の構築
生活者のライフステージや価値観の変化を察知し、変化に適応したマーケティングを展開することで、長期的な顧客関係を築くことができます。
たとえば、若年層向けの商品から家族向けの商品、そして高齢者向けの商品へとライフステージに合わせて提案をつくり分けることで、お客さんごとに合った顧客価値をもたらせます。
また、時代の変化に応じて商品やサービスを進化させることで、世代を超えた支持を獲得することも期待できます。各世代の特徴を理解することで、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の維持や再活性化にも効果的なアプローチを取れます。
短期的な売上向上だけでなく、持続可能な事業成長の実現につながるのです。
まとめ
マーケティングにおいて、年齢、時代、世代の影響を理解し、それぞれの特徴を踏まえた戦略を立てることが重要です。
単に年代で区切るのではなく、生活者の背後にある時代背景、世代ごとの価値観を捉えることで、より深い顧客理解と価値訴求につながります。
ターゲティングの精度が向上し、適切なメッセージを届けられ、長期的な顧客関係を築けるでしょう。生活者への多角的な視点を持つことで、より効果的なマーケティングを展開できるのです。
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