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歴史 「項羽と劉邦」 に学ぶ、企業衰退の要因。現代ビジネスを救う5つの警告サイン

#マーケティング #企業の衰退 #歴史

古代の歴史には現代のビジネスに通じる教訓が隠されています。

  「なぜ強大な国家が衰退するのか」 。この問いの答えが、今日の企業が直面する課題と驚くほど似ているのです。

今回は、古代中国の歴史 「項羽と劉邦」 から、ビジネスへの重要な洞察を掘り下げます。 歴史の教訓を現代に活かす方法を、ぜひ一緒に探っていきましょう。

項羽と劉邦


横山光輝の漫画 「項羽と劉邦」 を読みました。


漫画のストーリーは秦が中国を統一し (紀元前221年) 、政が始皇帝と名乗るところから始まります。そして、次の王朝である漢王国 (建国は紀元前202年) までの群雄割拠の争いの時代が描かれます。

国が滅ぶ要因


漫画 「項羽と劉邦」 を読みながら思ったのは、国が滅びたり戦いに勝てなくなる要因には共通点があることです。具体的には次の5つです。

✓ 滅亡につながる要因
  1. 内向きの権力闘争
  2. 外部 (国や民, 敵国の外部環境) への無関心
  3. 情報伝達の機能不全
  4. 恣意的な意思決定
  5. 驕りと油断


順番に見ていきましょう。

1. 内向きの権力闘争

国の状態がおかしくなる要因のひとつは、国王が自分の権力や富の豊かさを誇示するようになることです。

例えば過酷なほどの重い税を課して取り立てたり、豪華な宮殿を建てる、生前から壮大な自分の墓をつくったりします。多くの国民に強制労働をさせ、国民にはメリットはなく自分のためだけにやっています。

他には、王の周囲にいる権力のある人物たちが自分の出世や保身ばかりに走ります。

2. 外部への無関心

2つ目の滅亡の要因を見ていきましょう。「外部への無関心」 です。

自国内の状況、国民の声に目を向けず、政治や経済に注力することはなく、やっていることは城の奥の宮殿内で女性や酒で遊んでばかりいると、国が機能しなくなるのは当然です。

外部に無関心になるので、自国だけではなく隣国や敵国の状況も把握できません。1つ目にもつながりますが、内向きな権力争いにしか頭が働いていないので、外部に関心を示さなくなるのです。

3. 情報伝達の機能不全

3つ目の要因は、王や将軍などのトップへの情報伝達が機能しないことです。

外部の情報がかろうじて国の中枢や王に入ったとしても、自分たちにとって都合の良い情報だけになり、悪い情報はもみ消されるか、もしくは黒の情報が白に変えられて伝わります。例えば敵国との情報は、戦況の良いものしか上がらなくなります。

4. 恣意的な意思決定

秦では、始皇帝が法による法治国家を実現させました。

しかし次第に法が恣意的に運用されるようになります。例えば、気に食わない武将を排除させるために、次のようなことが起こります。

戦争で敵国に苦戦をしていると、軍を率いてるその武将のことを 「王の命令を聞かず、真剣に戦っていないのは怠慢だ」 として死罪にするのです。最前線では文字通り必死で戦っているにもかかわらずです。

現場からの正確で迅速な情報がなく、権力者への反対の意見や諌めの言葉がないために、一部の人たちが評価基準を恣意的に自分の都合の良いように使い、意思決定プロセスが機能しなくなります。

5. 驕りと油断

自分たちの驕りの気持ちや慢心が強くなると、敵国や将軍、相手の軍の力を甘く見てしまいます。

王や将軍が、全能感からまわりの反対意見や忠告に耳を貸さず、全てを独断で決めて暴走してしまいます。

現代のビジネスへの示唆


ここまで見てきた 「国が衰退する要因」 の5つは、現代の私たちにも学びがあります。国を企業や組織に置き換えると、企業や組織が衰退する要因と同じなのです。

ではそれぞれについて、現代のビジネスへの示唆を併せて見ていきます。

内向きの権力闘争

内向きの権力闘争に陥るとは、企業や組織が自らの力を誇示することに固執し、外部の現実を無視する状態を引き起こします。

例えば、トップ経営者が豪華なオフィスや高価な装飾品に囲まれていることが当てはまります。骨董品や絵画、贅沢な設備などです。自己満足のためだけではなく、社員に対して自分の地位や権力を誇示する手段としても機能させようとします。

また、幹部社員が会社の経費を私的に流用することや、社内政治や派閥争いに明け暮れることもこの内向きな権力闘争の一環です。

組織全体が内向きになり、外部の顧客や市場の変化に対応できなくなる可能性が高まります。結果として、企業は競争力を失い、衰退の道を辿ることになるのです。

外部への無関心

外部への無関心とは、国の民や他国に目を向けず、宮殿内や派閥などにのは注力するという内向きな姿勢に陥ることでした。

現代のビジネスにおいては、競合他社や市場、そして何よりもお客さんに目が向いておらず、変化に対する関心が欠如している状態がこれに当たります。生活者やお客さんのニーズに対する理解が不足していると、企業は自社の提供する製品やサービスが顧客ニーズと乖離していき、お客さんから選ばれなくなってしまいます。

市場やお客さんの声に耳を傾けない企業は、次第に時代遅れになり、競争相手に追い抜かれてしまうでしょう。ビジネスにおいては、常に外部環境を観察し、変化に対応する柔軟性が求められますが、これを怠ると衰退は避けられません。

情報伝達の機能不全

情報伝達の機能不全は、現場やお客さんの声が経営層に正確に届かない状況を引き起こします。

現場や顧客・競合の情報が社内で階層が上がることにフィルタリングされ、社長や経営陣に届く頃には聞こえの良い情報だけが伝わると、トップの認識は現実から乖離します。

現場の問題や市場の変化を見逃していしまい、経営層がお客さんや生活者のニーズを正しく理解できません。それにより的確な意思決定ができなくなります。例えば、営業部門からお客さんの不満や市場の変化に関するフィードバックが上層部に届かず、経営陣はマーケット感覚を失い、誤った判断を下すというふうにです。

こうした情報伝達の機能不全は、企業全体の連携を阻害し、結果として衰退を招く要因となるのです。

恣意的な意思決定

恣意的な意思決定は、特定の人間関係や個人的な好みで重要な決定が下される状況を生み出します。

恣意的な意思決定を現代に当てはめると、人事評価基準の乱用です。例えば人事評価が公平に行われず、経営層やマネジメント者の意向に沿わない社員が不当に低評価されることがあります。気に入らない人物や生意気な部下を低評価にして左遷させることも起こります。

また、KPI (重要業績評価指標) を用いたマネジメントが行われているように見えても、KPI が絵に描いた餅で機能しないケースもです。声の大きい人の意見が優先され、本来の KPI による業績評価が歪められます。

こうした状態は、組織の健全性を損ない、特に優れた社員が正当に評価されないことで、モチベーションの低下や人材の流出を引き起こします。最終的には、企業全体の競争力が低下し、衰退の道を歩むことになるでしょう。

驕りと油断

驕りと油断は、リーダーが自己の判断に過信し、周囲の意見を無視する状況を招きます。

ビジネスに当てはめると、リーダーが周囲のメンバーの意見を聞かず、全てを独断で決める状態です。リーダーの直感や判断が正しいうちは良いかもしれませんが、リーダーの感覚が顧客ニーズなどのマーケット感覚からずれると、組織全体で誤ってしまいます。

組織の健全性を保つためには、リーダーが自らの判断に固執せず、周囲の意見にも耳を傾け、諫言を受け入れ、チーム全体で意思決定を行うことが求められます。しかし、驕りや油断の気持ちが強くなると裸の王様のようになり、企業は市場から取り残され、最終的には衰退に至りまう。

* * *

このように、「項羽と劉邦」 の歴史からの教訓は、現代のビジネスにおいても多くの示唆を与えてくれます。

まとめ


今回は、漫画 「項羽と劉邦」 から、現代ビジネスへの示唆を考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ 国が滅ぶ要因と現代ビジネスへの示唆
  1. 内向きの権力闘争: 権力や地位の誇示、出世や保身が第一優先になるなど、内向きの社内政治が蔓延る
  2. 外部 (国や民, 敵国の外部環境) への無関心: 顧客や競合などの外部環境に目が向かずマーケット不在、顧客不在になる
  3. 情報伝達の機能不全: 良い情報だけが上層部へ伝わる。悪い情報はもみ消される
  4. 恣意的な意思決定: 法やルールの解釈を勝手につくり乱用する
  5. 驕りと油断: 競合他社を甘く見てリーダーが周囲の反対意見や忠告を聞かず独断で判断。リーダーが誤ると組織全体で間違う


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。