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最強タッグ! 「カテゴリーエントリーポイント × ジョブ理論」 でお客さんの心をつかむ

#マーケティング #カテゴリーエントリーポイント #ジョブ理論

自社の商品やサービスは、お客さんにとって必要なときに思い出してもらえているでしょうか?

ビジネスでは、お客さんが商品を選ぶ 「きっかけ」 を理解することが、成功のカギを握ります。そのキーワードになるのが 「カテゴリーエントリーポイント (CEPs) 」 です。CEPs とは何か、なぜ重要なのか、そしてどのように活用すれば良いのでしょうか?

さらに、CEPs と関連する 「ジョブ理論」 を理解することで、より深い顧客理解への洞察が得られます。

そこで今回は、CEPs とジョブ理論をわかりやすく解説し、あなたのマーケティングに活かせるヒントをお届けします。お客さんの心に寄り添うマーケティングの秘訣、ぜひ一緒に紐解いていきましょう。

カテゴリーエントリーポイント (CEPs) 


カテゴリーエントリーポイント (Category Entry Points (CEPs) ) とは、生活者が特定のカテゴリーに属する商品やサービスを利用する際に起こる 「きっかけ」 や 「入口」 となるものです。

CEPs の例

状況や目的に応じて複数のカテゴリーエントリーポイントが存在します。例えば 「急ぎの昼食を手早く済ませたいとき」 や 「外出時の隙間時間で休憩してゆっくりしたい」 など、特定のシチュエーションです。

マクドナルドを例にすると、朝ご飯として、平日のランチ、仕事の外出時の休憩に立ち寄る、週末のお出かけでのドライブスルーの利用、デリバリーで注文して自宅で食事をするなど、さまざまなシチュエーション (CEPs) でマクドナルドが思い出され利用されます。

こうしたシチュエーションを想定し、マクドナルドは消費者の様々なニーズに応えるメニューや場所を提供しています。具体的には、朝マックや夜マックなどの時間帯に合わせたセットメニュー、他にはハッピーセットというファミリー向けの商品です。

カテゴリーエントリーポイントに足を踏み入れようとするお客さんから、マクドナルドのことを思い出してもらえれば、他ではなくマクドナルドが選ばれる可能性が高まります。

CEPs で選ばれるか

カテゴリーエントリーポイントとは、見込み顧客が商品やサービスの利用を思い立つトリガーとなる瞬間です。

重要なのは、お客さんから必要なタイミングで自社商品・サービスのことが想起されることを目指す点にあります。

マーケティングにおいてカテゴリーエントリーポイントを理解することは、お客さんがそのカテゴリーで自社の商品を選ぶ際の具体的なシチュエーションや動機に応えるために不可欠です。自社商品・サービスが、誰が・いつ・どのようなきっかけで・何のために選ぶのかを捉え、顧客文脈への理解にもとづいた施策を行うことが大事です。

CEPs とジョブ理論


カテゴリーエントリーポイントの考え方は、お客さんの購入やサービス利用の 「きっかけ」 を探り、お客さんが何を動機に商品やサービスを選ぶのか、その要因を理解することを目指します。

このアプローチは、マーケティングのジョブ理論 (Jobs to Be Done Theory) とも共通点があります。

ジョブ理論とは

ジョブ理論では、お客さんが特定の状況でどのような 「ジョブ」 を済ませたいのかに焦点を当てる理論です。

ジョブの定義は 「人が特定の状況で遂げたい進歩 (progress) 」 です。ジョブ理論では、お客さんが抱える課題やニーズに対して、どのように商品やサービスが役立つかを考え、商品やサービスがジョブを片付けるための 「ワーカー (働き手) 」 として働くものとして捉えます。

商品やサービスはお客さんが働き手として雇用される存在です。商品・サービスは、お客さんのジョブを達成するための手段と位置付けられるわけです。

たとえば、コンビニの利用もジョブを片付けるために消費者が選んだ結果です。

冷蔵庫の中にストックがなくなった食べ物を今すぐ急いで買いたい、さっとコーヒーを手にとって飲みたい、仕事帰りに手軽な夕食と晩酌のおつまみを買って帰りたいといった状況で、消費者はジョブを完了させるためにコンビニをワーカーとして雇ったわけです。

このように、ジョブ理論では商品やサービスのことをジョブを達成するためのワーカーとして見ることで、お客さんがどのようなシーンで商品を選ぶのかを理解します。

ジョブ理論と CEPs のつながり

ここでカテゴリーエントリーポイントと話をつなげます。

カテゴリーエントリーポイントとジョブ理論では、どちらも 「お客さんの状況とニーズ」 を中心に据えます。

後者のジョブ理論では、ジョブの定義 (人が特定の状況で遂げたい進歩) の中に 「状況」 が入っているように、お客さんが置かれた状況と、その状況で果たしたい進歩 (ジョブ) にフォーカスを当てます。

カテゴリーエントリーポイントに当てはめると、状況はエントリーポイントという 「入口」 がどういうシチュエーションで目の前に表れているかということです。また、ジョブは入口に入りたいと思う 「動機」 に相当します。

人はその状況においてジョブを完了させたいと思えば、ジョブが背中を押しエントリーポイントをくぐります。入口を通った先に、雇用する商品を手にしてジョブを済ませるというイメージです。

[例] 休日の朝ご飯

たとえば、ファミリーレストランチェーンのモーニングセットを例に考えてみましょう。

休日の朝という状況において、休みの日の朝は家の外でゆっくりと朝食を食べたいというジョブを達成したいというのがカテゴリーエントリーポイントです。特定の状況においてジョブが顕在化すると、人はカテゴリーエントリーポイントをくぐりたくなる行動が促されます。

このときに自宅から車で10分ほどのファミレスの 「ガスト」 や、コーヒーチェーン店の 「コメダ珈琲」 がそのジョブを片付ける 「ワーカー」 として雇用されます。ガストやコメダ珈琲は、お客さんのこうした状況とジョブに最適化された場所とモーニングセットによって、お客さんのジョブ (進歩) に応えるワーカーになれるのです。

ジョブ理論を活かした CEPs 戦略


ジョブ理論を活用し、カテゴリーエントリーポイントを取り入れたマーケティング戦略を立てるには、どうすればいいか。最後のパートではこの論点を考えてみましょう。

顧客文脈の理解から

まず最初にやるのは、お客さんがどのような状況でどんなジョブを遂げたいのかというターゲット顧客の 「顧客文脈」 を理解することです。そして、その状況でお客さんの前に出現するカテゴリーエントリーポイントを特定します。

例えば、ファミリーレストランの場合は、「ランチタイムを過ぎた午後の時間帯に、遅めのランチをしっかりと食べたい」 という顧客状況とジョブを設定するというようにです。

想定するお客さんが済ませたいジョブを起点とし、自分たちが選ばれるシナリオをとなるエントリーポイントからの顧客プロセスを描き、どうすれば実現できるかを考えます。

状況とジョブを起点にするマーケティング

ここで大事なのは、自社商品やサービスはお客さんのジョブを完了させるための 「手段」 と位置づけることです。主役はお客さんであり、焦点を当てるべきはお客さんの置かれた状況とジョブです。

考え方としては、「お客さんはこうした状況にあるから、こんなジョブが発生していて、それを解決したいと願っている。よって、顧客文脈に合うように自社商品のこの特徴を強みとして打ち出し、お客さんに "これならジョブを済ませられそう" と思ってもらい、選ばれる (雇われる) 」 という、こんな流れでマーケティングの戦略と施策を具体化していくのです。

ジョブ理論を取り入れたカテゴリーエントリーポイントを活用することで、お客さんが特定の状況でどんな進歩を達成しようとしているか、商品にどのような期待や価値を見出すかについての顧客理解が深まり、そして顧客価値を実現できます。

まとめ


今回は、カテゴリーエントリーポイントとジョブ理論を取り上げ、考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • カテゴリーエントリーポイント (CEPs) は、お客さんが商品やサービスを利用する 「きっかけ」 や 「入口」 、トリガーとなる瞬間。マクドナルドの場合は、朝食、ランチ、休憩時、車の運転中など様々なシチュエーションで CEPs が存在する

  • ジョブ理論では、お客さんが特定の状況で遂げたい 「進歩 (ジョブ) 」 に注目する。商品やサービスはそのジョブを片付ける 「ワーカー」 として機能する

  • CEPs とジョブ理論は、どちらも 「お客さんの状況と望むこと」 に焦点を当てる。CEPs は 「入口」 となるシチュエーションを、ジョブは入口に入りたいと思う 「動機」 となる

  • ジョブ理論を取り入れた CEPs 戦略では、顧客文脈を理解し、その状況でジョブが顕在化したときにお客さんの前に現れるエントリーポイントを特定する。商品はお客さんのジョブを完了させる 「手段」 として位置づけ、具体的なシナリオを描き出す

  • 必要なタイミングで自社の商品やサービスを思い出してもらえることが大事。お客さんが 「誰が」 「いつ」 「どのようなきっかけで」 「何のために」 選ぶのかを把握し、顧客文脈にもとづいた施策を打つ


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。