#マーケティング #バンドル #顧客価値
新規事業や新しいサービス開発において、既存の要素を組み合わせて新たな価値を生み出す 「バンドル (組み合わせ) 」 が有効なアプローチのひとつです。
ただし、やみくもに組み合わせればいいわけではなく、お客さんの潜在的なニーズや困りごとを理解し、解決する形でバンドルを実現することが重要です。
今回は、ユニークな新しい EC サービス 「Respo (リスポ) 」 の事例から、効果的なバンドル戦略のポイントと、新規顧客層の開拓ついて掘り下げます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
積み立て払い Respo
値段の高い高額な商品やサービスを買うとき、クレジットカードで分割払いやリボ払いを選ぶと利息が付きます。一括払いができればいいですが、一括での支払いは財布や家計に大きな負担がかかると思い躊躇することもあるかもしれません。
そこで登場したのが、新しい EC サービスの 「Respo (リスポ) 」 です。Respo の仕組みとサービス特徴について見ていきましょう。
積み立てと分割払いの融合する 「積み立て払い」
Respo は、積み立て貯金と分割払いをひとつに融合させた新しい EC サービスです。
欲しいと思った商品の金額分だけあらかじめ積み立てることによって、積み立てが終わった段階で高額商品であっても分割払いやリボ払いではなく、一括払いのように買えることができます。
あらかじめ積み立てるだけなので借金をする必要がなく、欲しい商品を買う未来のために貯金をするようなイメージです。
Respo のユーザーは購入したい商品を選び、毎月設定した積立額をチャージするように支払います。積み立てた合計金額が商品価格に達すると、メーカーから商品が自宅に配送されるという仕組みです。
家計をやり繰りしながら、自分の意志で毎月積み立てていくのはなかなか難しいかもしれませんが、積み立てと購入とがワンストップで完結する Respo なら、仕組みで解決できます。
購入時のキャッシュバック
Respo のもうひとつの特徴は、全額支払い完了後に購入価格の 10 ~ 20% がキャッシュバックされることです。これ、結構大きいですよね。
キャッシュバックされたお金は、商品購入後に受け取ります。事実上、買った商品が1, 2割安く買えるわけです。例えば、12万円の掃除機の場合、Respo を利用して買うと実質は約9万6000円とお得に購入できることになります。
ちなみにキャッシュバックの原資はメーカーが広告費として負担しています。Respo を通すことで新規顧客を得られると見込んだメーカーが、キャッシュバック分を広告のように位置づけているわけです。
ブランド単位での積み立て
Respo は、商品単位だけではなくブランドという粒度での積み立てにも対応しています。
個別の商品ではなく特定のブランドに積み立てをしておき、あらかじめ設定された一定金額になればブランドの商品を自由に選べるという仕組みです。
そのブランドに愛着があり、商品をブランドで統一したいと思う人にとっては計画的に積み立てをして、さらにキャッシュバックで割安に買えるという使い方も用意されています。
バンドルから創出する新しい顧客価値
では、Respo の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
Respo は 「積み立て」 と 「購入」 を結びつけ、「積み立て払い」 という新しい仕組みをつくりました。一般化して捉えると、今までにあった異なる要素を結びつけ、新たな顧客体験と顧客価値を生み出すという 「バンドル」 を実現したということです。
バンドルの視点から、Respo からどのような学びが得られるのかを考えてみましょう。
別々の要素を統合し異なるニーズを同時に満たす
値段のする高額商品を買う際に一度では支払えない場合は、利息が余分にかかっても分割払いをすることが通常でした。一方の Respo は、少しずつお金を払うというアプローチを分割払いではなく、積み立てという方法を採用しました。
Respo のユーザーは欲しい商品が見つかれば少しずつお金を支払う積み立てをまず行い、その商品の金額に達すれば買えるというリスクの少ない購入ができます。
この積み立て方式は、計画的にお金を貯めることを重視したい人に向いており、一方で分割払いは、すぐに商品を手に入れたいが一括支払いが難しい人が使います。
この2つのニーズは相反するものに見えますが、Respo は 「計画的にお金を無理なく管理でき、欲しいと思った高額商品を安心して買える」 という新しい選択肢を提供しています。
例えば、将来の引越しを見据えた家具や家電の購入では、今すぐに商品を手に入れる必要はなく引越し後でよければ、今から引越しまでの間に Respo を利用するという使い方ができます。
Respo は、こうした 「今すぐには必要ないが、将来的に必要な高額商品」 に対する購買ニーズを満たし、支払いの負担を積立方式で軽減することで、ユーザーにとって便利でお得なサービスとなっています。
購買体験の一元化による利便性向上
Respo は 「積み立て」 と 「購入」 の2つの仕組みをバンドルし、「積み立て払い」 という新しい買い物の選択肢を提供しています。
Respo は、積み立てプロセスと購入プロセスをワンストップで用意しているので、ユーザーは必要なお金をためるのと商品の購買を別々に管理する必要がなくなります。ユーザーは心理的ストレスを受けることなく、買い物プロセスをスムーズに進めることができます。
例えば、子どもがまだ手のかかる年齢で忙しい共働きの家庭では、Respo は自動的に毎月の積み立てと購入が一体化されていることにより、欲しい商品を決めればあとは積み立てで勝手にお金がたまっていくのでほったらかしにできます。
また、学生や新社会人など、支出を慎重に管理したい人にとっても、シンプルで分かりやすい Respo の積立購入の仕組みは使いやすいサービスです。
Respo は支払いかかる利息の負担をなくし、一度の大きな出費を必要としない計画的な購入を可能にしました。Respo ユーザーは自分のペースで無理なく高額商品を手に入れることができ、かつキャッシュバックももらえるので、安心感とお得感の両方を伴った買い物になります。
新しい顧客層の開拓
分割払いには、利息が発生するため借金のようなイメージがつきまとい、一定数の人に心理的抵抗が存在しているはずです。
こうした分割払いへ抵抗感があることで、高額商品を買いたいのに諦めるという、売り手にとっての機会損失が発生していたことでしょう。Respo は積み立て形式での支払い方法を導入することによって、このような心理的な抵抗を持つ人たちに対して、新しい購買手段をもたらします。
例えば、30代の夫婦など、将来のライフイベントに備えて計画的に購入を考えている人は、借金を避けたいという思いが強ければ、Respo を利用することにより安心して近い将来の買い物の準備に入れます。
異なる要素を組み合わせることで、これまでの購買手段ではリーチできなかった新しい顧客層を開拓できます。
まとめ
今回は、"積み立て払い" で高額商品もお得に買える EC サービス 「Respo」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- Respo は 「積み立て」 と 「購入」 を組み合わせ、購入プロセスを一元化。ワンストップで提供することで購買体験の利便性を向上させた
- Respo の事例から学べるのは 「バンドル (組み合わせ) 」 による新しい顧客価値の創出
- ターゲットとする注力顧客の潜在的な不安や抵抗感を理解し、それまでは別々に存在していた要素をバンドルし新しい選択肢を提供した。Respo はこれまでリーチできなかった顧客層の開拓から市場拡大を実現する
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。
ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!