#マーケティング #マーケティングリサーチ #調査設計
マーケティングリサーチ、あなたの会社ではどのように実施していますか?
「とりあえずアンケートを取ってみよう」 「去年と同じ項目で調査しよう」 。でも、本当にそれで適切なマーケティングリサーチになるでしょうか?
少なくない企業で、リサーチ結果が十分に活用されていない、あるいは現場のニーズとズレているという課題があります。その原因は、マーケティングリサーチを始める前の準備不足です。
効果的なリサーチには、「リサーチのためのリサーチ」 という重要なステップが必要です。そこで今回は、ビジネスに貢献するマーケティングリサーチを実現するための 「リサーチのためのリサーチ」 を解説します。
リサーチのためのリサーチ
マーケティングリサーチは単なるデータ収集でとどまらず、本来はビジネスでの問題解決や意思決定を支えるために行われます。しかし、リサーチの目的があいまいないまま調査が進められると、必要な情報を得られないリサーチになります。
そこで、リサーチを実施する前に 「リサーチのためのリサーチ」 を行うことで、何が本当に求められているのかを明確にすることができます。
リサーチのためのリサーチを実施することは、リサーチの目的を定め、無駄な調査を省き、効果的で的確なマーケティングリサーチを行うために重要なステップです。
たとえば、飲料メーカーにおいてマーケティングリサーチを担当する部署または人が 「お茶の新製品を出したい」 という依頼を受けたとします。
一般的には 「消費者にどんなお茶が好まれているか」 を調査する方向に進むでしょう。しかし良いリサーチにするためには、ここで一度立ち止まり、調査の背景や目的を掘り下げることが大事です。
具体的には 「どんなお茶を出せば良いのか分からない」 という依頼の背景には、「なぜ既存のお茶の商品では不十分なのか」 や 「他社商品と何が異なるべきなのか」 といった、より深いビジネス課題が潜んでいるかもしれません。
調査依頼者の本当の意図を探ることによって、リサーチを企画し設計する段階で、あるべき方向性が明確になります。
「リサーチのためのリサーチ」 の具体的な方法
では、リサーチのためのリサーチを実践する具体的な方法を見ていきましょう。
依頼者の意図を理解する
最初に、調査の依頼者に 「どんな情報があれば良いと思っているのか」 「今何がわからないのか」 を確認します。
例えば、先ほどの例に挙げた 「お茶の新製品に関するリサーチをして欲しい」 という依頼を受けた場合、その背景にある課題、悩みを明らかにしていきます。
具体的には 「世の中にどのようなお茶が売られているのか」 、「人気なお茶は何か」 、「お茶を好んで飲む人の特徴は何か」 、「どういうシチュエーションでお茶は飲まれるのか」、「お茶を普段あまり飲まない人はどんな人たちか」 、「その人たちはお茶ではなく何を飲んでいるのか」 と、さまざまな視点で質問を重ねます。
情報の利用者と活用イメージを確認する
リサーチはどの部門や役職の人に向けたものか、またリサーチ結果がどのように活用されるかを事前に想定することも重要です。
例えば、100ページのリサーチレポートは誰が何のためにどのように活用されているかをあらかじめヒアリングすることで、本当に100ページのボリュームが必要なのかが見えてきます。
実は現場では半分程度の50ベージくらいしか参照されず、管理職以上が見ていたのは10ページ程度ということが判明することも少なくありません。リサーチの過不足という観点では、過剰のほうが不足より多いというのが実際のところでしょう。
マーケティングリサーチの利用者と活用イメージが明確になれば、リサーチ結果のアウトプットにも適切な反映ができます。
リサーチを活用するのが現場担当者であれば、詳細部分をレポートの本編に入れてもいいですが、部門長向けであればわかりやすい要点をまず提示し、詳細は Appendix に落とすといった、利用者と活用シーンに沿ったレポートの作成と共有ができます。
リサーチの目的を明確にする
マーケティングリサーチの手段をいきなり考える前に、リサーチの前提にあたるビジネスで解決したい問題、対処すべき課題を再確認します。
例えば 「コンセプトテストを実施する」 という手段が先行してしまうと、テストをすること自体が目的化してしまいます。
前提となるビジネス課題に立ち返り、その課題に貢献するマーケティングリサーチとはどうあるべきかという観点でリサーチが本当に必要かを問い直し、ビジネス課題 (リサーチの背景) 、リサーチ目的、目的に沿った調査課題、課題への仮説と落とし込みます。
情報収集の優先順位をつける
リサーチ課題の焦点を絞るために、収集すべき情報の優先順位をつけます。
例えば新製品のリサーチであれば 「想定顧客が何を重視しているか」 「購入理由は何か」 「実は欲しいと思っていたのに結局は買わなかった阻害要因は何か」 など、ビジネスに直結する質問を選定します。
リサーチ項目は、制約をかけないといくらでも増えていくものです。必要以上に肥大化したリサーチは、形骸化しやすいです。リサーチの目的に見合った情報収集となるように注意します。
「リサーチのためのリサーチ」 を行うメリット
ここまで見てきた 「リサーチのためのリサーチ」 には、マーケティングリサーチの価値と活用度を格段に向上させるメリットがあります。
目的に沿ったリサーチを設計できる
マーケティングリサーチを始める前に、リサーチの目的と得たい情報を明確にすることで、実際に収集すべきデータの広さ (範囲) と深さ (掘り下げ度合い) が見えてきます。
例えば、あるサービスの新規開発にあたって 「注力ターゲット顧客は何を重視しているのか」 を把握することが主なリサーチ目的になるのであれば、漠然とした顧客調査ではなく、特定のニーズや好みの情報をとることがリサーチの役割になります。
無駄を省き、リソースを効果的に配分できる
リサーチのためのリサーチを行えば、余分なリサーチ工程や不要なデータ収集をなくすことができます。
例えば、実は形骸化しているリサーチレポートが存在する場合、それが実際に何に使われているかを確認することは、内容の整理やコスト削減につながります。マーケティングリサーチからのどの情報が本当に活用されているのかを把握することにより、次のマーケティングリサーチは最適化され、限られた予算や時間を効果的に使えます。
活用されるマーケティングリサーチにできる
リサーチのためのリサーチを行うことで、関係者が求めている情報やマーケティングリサーチ結果の利用方法を事前に把握できます。
例えば、営業部門が顧客データを重視し、製品開発部門が競合分析を重視している場合、それぞれのニーズに対応した情報を提供することによって、マーケティングリサーチの結果がより多くの場面で活用されます。
リサーチ結果の受け手を意識して調査設計をすることで、マーケティングリサーチがビジネスの実務に直結し、会社全体での活用度が高まるのです。
また、マーケティングリサーチの目的と方向性が、「市場の反応を知ること」 ではなく 「特定のターゲット層の購買要因を理解にすること」 まで定まっていると、経営層や事業部門が意思決定を行う際、リサーチデータが確かな根拠として機能しやすくなります。その結果、マーケティングリサーチを行うことへの社内からの信頼性も向上するでしょう。
社内の理解と協力が得られやすくなる
調査の意図を関係者と事前にすり合わせ、何を期待しているかを理解することにより、マーケティングリサーチ活動への協力体制が整います。
データを使用する部署やチームがあらかじめわかっていれば、マーケティングリサーチの進捗や内容への社内からの関心を集め、リサーチの結果が活用されやすくなります。
加えて、マーケティングリサーチの結果がどう活用されるかの理解が広がることで、各部門でのリサーチに対する期待も高まり、部門横断での連携がより強化されます。
形骸化したリサーチの再価値化
定期的に行っているマーケティングリサーチが形骸化している場合、リサーチのためのリサーチによって見直しの機会が生まれます。
例えば、年に一度の市場分析レポートが実際にどのように使われているかを調べられれば、不要な項目を削除し重点項目に絞ることができます。
重要な会議で頻繁に使われる特定の情報があるなら、その部分をよりわかりやすく、早く提供する方法を検討することで、マーケティングリサーチがより価値のあるものに生まれ変わります。
より良いリサーチ文化の醸成
リサーチのためのリサーチを行うことで、調査やデータ活用のプロセスに対する社内の理解が深まり、マーケティングリサーチの実施と活用に対する社内文化が根付くきっかけにもなります。
調査の本質を理解し、組織全体でリサーチ目的と課題を共有することがマーケティングリサーチへの信頼性を高め、効果的なリサーチをする意識の高い文化を育みます。
まとめ
今回はマーケティングリサーチについて、成果を出すために 「リサーチのためのリサーチ」 というアプローチを考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- マーケティングリサーチの目的が曖昧なまま調査が進められると、必要な情報を得られないリサーチになる
- そこで、マーケティングリサーチを実施する前に 「リサーチのためのリサーチ」 を行うことで、何が本当に求められているのかを明確にできる
- リサーチのためのリサーチを実施することは、マーケティングリサーチの目的を定め、無駄な調査を省き、効果的で的確なリサーチを行うために重要なこと
✓ 「リサーチのためのリサーチ」 の具体的な方法
- 依頼者の意図を理解する
- 情報の利用者と活用イメージを確認する
- マーケティングリサーチの目的を明確にする
- 情報収集の優先順位をつける
✓ 「リサーチのためのリサーチ」 を行うメリット
- 目的に沿ったマーケティングリサーチに設計できる
- 無駄を省き、リソースを効果的に配分できる
- 活用されるリサーチにできる
- 社内の理解と協力が得られやすくなる
- 形骸化したリサーチの再価値化
- より良いリサーチ文化の醸成
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