#マーケティング #返報性の原理 #価値提案
ビジネスでお客さんの心を動かすには、相手の心理を深く理解することが欠かせません。
取り上げたい 「返報性の原理」 をうまく活用すれば、お客さんとの良い関係を築き、相手に商品を買ってもらうなどの行動を促す効果が期待できます。しかし、やり方を誤ると、逆効果になることも…。
今回は、返報性の原理を活用するための具体的な方法と、ポイントを考えます。
返報性の原理
人間関係やビジネスの場面でしばしば見られる 「相手にお返しをしたい」 という心理。この返報性の原理は、お客さんとの関係構築や商品の販売促進においても有効な手法です。
返報性の原理とは、人が何かしらの好意や贈り物を受けた際に 「お返しをしなければ」 と感じる心理的作用を指します。
では、身近な例で返報性の原理が使われているイメージ例を見てみましょう。
[食品] 限定メニューの試食会
あるレストランが、新しいメニューを開発した際に常連客を招待して試食会を実施しました。
試食会では 「次回の訪問時にデザートかドリンクの無料チケット」 もプレゼント。試食会に参加したお客さんは、新メニューをいち早く味わえただけではなく、感謝の気持ちから次回訪問を予約する人も少なくありません。
通常のスーパーマーケットでも試食品を用意している風景を見かけますが、レストランでの試食会は特別感を演出し、来店したお客さんを大切なゲストとして招待する点で他にはない体験をもたらします。試食会に招かれたお客さんは特別なお客として自分が選ばれた感覚を持て、その返報性の原理から次回の来店に前向きになることでしょう。
[美容・健康] パーソナライズサービス
とある化粧品のスキンケアブランドが、新規のお客さん向けに 「無料パーソナルカウンセリング」 と 「専用サンプルセット」 を配布しました。カウンセリングでは肌診断とパーソナルカラー診断を行い、一人ひとりの肌質に最適な製品や肌のケア方法を提案するという内容です。
このアプローチは、返報性の原理とパーソナライズの組み合わせです。
お客さんは自分のためだけに提供されたような感覚を抱き、ブランドへの愛着が強まるでしょう。個別のカウンセリングで売り込みをするのではなく、お客さんの悩みの解決を目指している点が、お客さんの満足度を高めます。サンプルの使用感が良ければ製品購入やリピートにつながることが期待できます。
[教育] 子ども向けワークショップ
学習塾が地域の子どもたちを対象に無料の工作ワークショップを開催しました。
ワークショップで作った作品を記念として持ち帰ることができるほか、次回の有料プログラムに特典付きで参加できる案内も入れました。
学習塾の通常の体験会とは異なり、教育とエンターテイメントを融合したイベントは、親子の心をつかみます。無料で得られる体験と作った作品が参加した親子にとって楽しかったという印象を持ってもらえ、返報性の原理で有料プログラムへの移行をスムーズにします。
返報性の原理を正しく活用するには
ここまでいくつか例を見てきたように、返報性の原理を活用する際には、ただ無料で何かを提供するだけではなく、お客さんに特別感や体験価値をいかに感じてもらうかが重要です。
ただし、返報性の原理をビジネスで活用する場合、単に 「お返しを期待する」 という心理を利用するだけでは、時として逆効果になります。お客さんに自然な形で 「お返しをしたい」 という感情を持ってもらうためには、以下のポイントをおさえて実践する必要があります。
純粋な好意を示す (見返りを求めすぎない)
返報性を過剰に狙うと相手からは押し売りと受け取られてしまい、返報性への強引さが逆効果になる場合があります。
無料サンプルを渡す際に 「絶対試してください!」 と念押しすると、相手は 「購入しなければならない」 という圧力や義務感を感じるでしょう。
提供するサービスや贈り物は、見返りを期待しない姿勢で行うことがポイントです。新規顧客に資料やサンプルを送る際、メッセージで 「お気軽に試してみてください」 と伝えると、相手は負担なく気軽に受け取れるため、自然な返報につながります。
行動の目的を相手に喜んでもらうことにフォーカスします。
相手に負担を感じさせない
高額な贈り物や過剰なサービスは、相手により大きな心理的負担を与える可能性があります。
例えば新しいお客さんに豪華すぎるギフトを送ると、相手が 「こんなにしてもらうと、何か大きなお返しをしなければ」 と過度なプレッシャーを感じるものです。あまりに手厚いサービスは、見返りを強く求められるのではという警戒心を生み出しかねません。
提供する価値や贈り物は、お客さんにとって手軽に返せる程度のバランス感で設定します。例えば、小さなギフトや簡単なサンプル商品などが適切でしょう。相手の背景や立場を考慮し、提供するものの適切な範囲を見極める必要があります。
持続的な関係を目指す
一度の贈り物や好意で終わると、お客さんが次の行動を起こさない可能性があります。
継続的に小さな好意を積み重ねる仕組みを作るといいでしょう。例えばサブスク型サービスでは、顧客の契約期間中に無料のアップグレードや特典を適宜提供し、常に 「特別扱いされている」 と感じてもらうわけです。
アフターフォローを大切にすることもポイントです。購入後に感謝のメールを送ったり、次回の特典を提案することによって、持続的な関係を構築できます。
双方向のコミュニケーションを促進する
一方的に商品をたとえ無料で提供しようとしても、お客さんにスルーされたり、ただ受け取るだけで次のアクションにつながらずに終わってしまう可能性があります。
お客さんが自発的に行動を起こせるような仕掛けを取り入れると効果的です。メッセージカードを添えた贈り物に 「感想を一言でもいいのでぜひあなたの声を教えてください」 と書き添えることで、お客さんとの対話を促すというアプローチです。
返報性の原理の限界を知っておく
一部の人は返報性を感じにくい場合があり、全てのお客さんに返報性の原理が通用するわけではありません。返報性に過度に依存すると、お客さんが不満を感じやすくなったり、マーケティング全体が不安定になってしまいます。
そこで、他の心理的メカニズム (希少性, 社会的証明など) と組み合わせた施策を展開するといいでしょう。具体的には、無料サンプルに期間限定の要素を加えることで、希少性が返報性を補完し、お客さんの具体的なアクションを促します。加えて、効果を定期的に測定し、対象顧客層や実施方法の最適化を行うことが有効です。
返報性の原理をマーケティングで活用するには、お客さんの心理を理解し、相手に喜んでもらうという姿勢で接することが重要です。押し付けではなく自然な形で提供することが、お客さんとの良好な関係構築につながります。
まとめ
今回は 「返報性の原理」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 返報性の原理とは、人間関係やビジネスの場面で見られる 「相手にお返しをしたい」 という心理。返報性とは、人が好意や贈り物を受けた際に 「お返しをしなければ」 と感じる心理的作用のことで、相手の行動を促進する効果がある
- 返報性の原理を活用する場合は、相手に負担を感じさせないよう、提供する贈り物や体験は手軽に返せる範囲で設定するといい
- 相手には純粋な好意を示すことが大事。見返りを期待せず、相手を喜ばせることをまずは優先し、相手からは自然な返報への行動を促せる
- 継続的な関係を築くために、好意を積み重ねる仕組みやアフターフォローを重視すると効果的。お客さんから特別感を持ってもらうことにより持続的な関係をつくれる
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