#マーケティング #顧客接点 #価値創出
デジタルが普及する現代において、企業はどのようにしてお客さんとの関係を深めていくといいのでしょうか?
ご紹介したいスギ薬局の取り組みは、自社アプリを活用し顧客理解を深め、効率化と新たな価値創出を実現しています。
今回は、スギ薬局の事例をもとに、デジタル化による顧客接点の強化、価値実現の具体的な方法を探ります。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
スギ薬局のアプリ
スギ薬局は 「スギ薬局アプリ」 「スギサポ walk」 「スギスマホでお薬」 の3つのアプリを提供しています。
アプリによってスギ薬局が見据えているのはトータルヘルスケアの実現です。
セルフケアでの健康維持、医療・服薬、介護・生活支援の各ステージで、お客さんと長期的につながることを目指しています。
3つのアプリの役割と特徴
スギ薬局アプリ、スギサポ walk、スギスマホでお薬のそれぞれの特徴を見てみましょう。
✓ スギ薬局アプリ
- ポイントカード機能、クーポン、暮らしに役立つコンテンツを配信
- 1,300万ダウンロードを達成し、会員プログラムの基盤となっている
✓ スギサポ walk
- 歩数に応じてマイルが貯まり、ポイントに交換できる歩数計アプリ
✓ スギスマホでお薬
- かかりつけの薬局や近くのスギ薬局に事前に処方箋の写真を送ることで、短い待ち時間でスムーズに薬を受け取れる
- 困りごとをチャットで薬剤師に相談できたり、服薬指導を受けられる機能もある
リニューアルによる顧客体験の向上
実は、スギ薬局は2023年にアプリをリニューアルしています。リニューアルのコンセプトは 「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」 でした。
アプリ開発の方針になったのは顧客視点で設計することです。
店舗現場の声を反映し、負担を軽減することに重視しました。また、技術革新を追求するのではなく、アプリユーザーに本当に必要な機能を重視しています。そして、使いやすさと普段使いへの定着を目指したデザインを採用しました。
リニューアルにより、クーポン機能やポイントプログラムの利便性をさらに向上。スギチャンネルでの販促情報だけでなく、健康と暮らしに役立つ情報も配信しています。また、お客さんの利用履歴にもとづいたパーソナライズされたクーポンも配信するようになりました。
トータルヘルスケア戦略とデジタル推進
スギ薬局は顧客接点を充実させる戦略の中心に DX (デジタルトランスフォーメーション) を置いています。
DX 推進により、以下を実現しました。
- ID 統合: アプリ間の会員データを統合し、購買・健康データを一元管理
- データ活用: ユーザーデータを分析し、ニーズの把握やサービス改善に活用
- ポイントプログラム: 景品交換に加え、レジ支払いなどにも利用可能に
DX で実現すべきこと
デジタル化が進む環境において、企業とお客さんの接点をどのようにつくり、深めるかは重要な課題です。
スギ薬局の事例から得られる教訓は、アプリを活用した顧客接点のデジタル化がもたらす効果と、それを活かすための考え方です。
[顧客理解の深化] データを通じて顧客を知る
アプリは、お客さんとのやりとりをデジタル化し、その利用データを収集することによって、より深い顧客理解を可能にします。
今回の事例では、スギ薬局がアプリから購買データや健康関連データを統合し、ユーザーの行動や心理を把握していることが特徴的です。
データ収集により、お客さんがどんな商品に興味を持ち、どのタイミングでアクションを起こすのかを分析できます。
購買履歴にとどままらず、運動習慣や健康相談といったデータを集めることで、生活全体における消費者の課題やニーズを把握することが可能です。顧客像を具体化し、適切なタイミングで適切な情報や提案をすることができます。
デジタルツールを活用することによって、単なる 「売り手と買い手」 の関係から 「生活のパートナー」 という立場へ進化することが期待できます。企業は、データを収集するだけでなく、その活用に注力し、「お客さんにとって意味のある価値」 を返すことが重要です。
[プロセスの効率化] 企業とユーザー双方の負担軽減
アプリを活用することは、企業とお客さんの双方におけるプロセスの効率化を促進します。今回の事例では、処方箋送付アプリ 「スギスマホでお薬」 による薬の受け取りプロセスの短縮が好例です。
企業側の効率化としては、 店舗スタッフが必要な対応を事前に把握できることで、現場の負担が軽減されます。一方のユーザー側の効率化は、長い待ち時間を解消し、スムーズにサービスの利用を可能にします。
マーケティング活動においても、顧客データを統合することにより一律の施策ではなく個別最適化が実現できます。
効率化はコスト削減にとどまらず、お客さんにとって 「スムーズで気持ちのよい体験」 をもたらします。企業が効率化のメリットをお客さんにも還元することが大事です。
[新しい価値の創出] 効率化が生み出す価値とつながり
プロセスの効率化によって生まれる余剰時間やリソースを、企業は新たな価値創出に充てることができます。
スギ薬局の事例では、例えば、店舗での待ち時間削減により、お客さんの生活の中に他のアクティビティを追加する余地が生まれます。効率化によって生まれた時間を 「スギチャンネル」 などのコンテンツ配信に使い、お客さんとの関係を深める取り組みが見られます。
また、付加価値の提供にもつながります。コンテンツ配信や健康サポート機能による顧客価値です。ただ便利になるだけでなく、「生活の質が向上した」 と感じてもらうという情緒的な価値も生み出すでしょう。
効率化によって生まれた時間などのリソースをどう活用するかが大事です。お客さんが 「この企業やサービスと長く付き合いたい」 と思えるような価値をもたらすことが、デジタル化の真の成果です。
エンドユーザーへの価値提供までを目指す
デジタル化は社内効率化だけでなく、最終的にはお客さんへの価値提供を最大化する手段として活用すべきです。
今回のスギ薬局の事例でも、アプリによって顧客データを集めるだけにとどまりません。お客さんの来店頻度やアプリの利用履歴に合わせて、来店間隔が開いた人に向けての特別クーポンの配信など、データから深めた顧客理解をもとに一人ひとりの文脈に合ったパーソナライズされた体験を提供します。
デジタルツールの導入は目的ではなく、手段に過ぎません。顧客接点のデジタル化によって、お客さんの生活がどのように良くなるのかを具体的に描き、実現していくことが成功のカギを握ります。
これらの教訓をもとに、企業は顧客接点を見直し、デジタル化からより豊かな体験を消費者やお客さんに提供する仕組みづくりを目指すことが大事です。アプリというツールは、売り手と買い手との長期的なつながりを実現する役割を果たします。
まとめ
今回は、スギ薬局の自社アプリを取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- デジタル化は、顧客接点を増やし、顧客関係を強化し深める。スギ薬局の事例では、アプリによって顧客データを収集し、顧客理解を実現している
- アプリの活用は、企業と顧客双方でのプロセスの効率化を図る。企業側では作業負担を軽減し、顧客側でも効率化により快適なサービス体験となる。効率化により生まれた余剰リソースは、新たな価値創出に利用する
- デジタル化は手段であり、目的は顧客価値の最大化。企業は顧客にとっての一人ひとりの顧客文脈に合わせた価値向上を具体的に描き、実現し、長期的な関係性を構築する
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