以前のエントリー記事で、「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という本の書評を書いていました。
「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?
「MAKERS」のオーディオブック版が8月23日より配信開始とのことで、このエントリー読んでいただいた株式会社オトバンク様からいただきました(いわゆる献本のような形です)。同社はオーディオブックなどの音声コンテンツを配信するFeBe(フィービー)を運営しています。
オーディオブックとは、本を耳から聴くものです。例えば、以下のサンプル音声を聞いてみるとイメージしやすいと思います。どちらも、クリックすると再生ページに飛び再生が自動で始まります。
■オーディオブックを聴いてみた
オーディオブックをちゃんと聞いたのは今回が初めてでした。まず思ったのは、同じ本でも文字を目で読むのと音で耳から入れるのでは、感覚として全く違うことでした。脳の異なる場所が刺激される感じで、新鮮な体験です。
記憶への残り方も目と耳では同じ内容でも違うように思いました。今回はMAKERSというビジネス書でオーディオブックを経験させていただきましたが、小説だともっと違った体験になるように思います。
その一方で、オーディオブックは自分には合わないなとも感じました。合わないというのは私自身が本に求めるニーズを満たしてくれないという意味です。簡単に書いておくと、
思うに、紙や電子書籍の目で読む本と、オーディオブックでは読者層が異なってくるのではないかなと。目で読むのも音で聴くのも両方好む重なるユーザーは存在はすると思いますが、読書のヘビー層はオーディオブックとは相性があまりよくないのかもしれません(少なくとも私がそうでした)。
それよりも、あまり読書をしない人であったり、読みたくても読書をする時間が取れない人が、隙間時間や何かをしながら聴くというイメージがあります(家事とか)。通勤中に聴くのもありかもしれません。満員電車で本を手にできない状況でも再生ボタンさえ押せれば聴くことができそうです。
■FeBeを見てみると
ここからはFeBeを見ての所感です。FeBeはオーディオブックなどの音声コンテンツを配信するサービスサイトです。
正直な感想として、もったいないと思いました。オーディオブックなどの音声コンテンツがあるのに、仕組みとして使いやすいようには思えなかったからです。
オーディオブックの価格設定も気になりました。基本的には紙の本と同じ値段です。日替わりの値下げや、有料会員になると安く購入できる仕組みもあるようですが、それを考慮しても割高感があります。例えば、今回のMAKERSオーディオ版は1995円。紙と同じというのは高い印象です。
価格に対する個人的な感覚としては、紙の本>電子書籍>オーディオブックの順番。この理由を考えてみると、コンテンツ内容は同じですが、目に見えるリアリティみたいなものがあるほど、価格の価値としては高く感じてしまうからだと思います。
紙の本に比べると電子書籍はモノとしてのリアリティは下がりますが、電子書籍デバイスの中に画面内で存在はしています。ぎりぎりモノとして認識できるレベル。
オーディオブックは電子ファイル化された音声なので、電子書籍に比べてさらに実態としての存在感が低く感じるんですよね。だから実態感が、紙の本>電子書籍>オーディオブックとなり、価格許容度もこの順番になってしまう。AmazonではKindle版が同じ紙の本より安いことが多いので、紙の本>電子書籍が普通になっている一方で、「オーディオブック=紙の本」がなおさら高いように感じてしまいます。
オーディオブックについては、まずは認知を広げ、ユーザーを増やせるかどうかだと思うので、潜在ニーズのある層でも価格がボトルネックとなってしまうのではないか。戦略的な値付けも大胆にやってみてもいいかもと思いました。
色々と書いてしまいましたが、オーディオブックはコンテンツとしては紙の本や電子書籍とはまた違って、故に紙/電子書籍では応えられなかったニーズを満たせる可能性があると思います。
詳細の数字は割愛しますが、海外に比べて日本でのオーディオブック市場は小さいようなので、これからの国内でのオーディオブック市場の拡大はどこまでいくのか。今回いただいたMAKERSを機に関心領域の1つとなりそうです。
「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?
「MAKERS」のオーディオブック版が8月23日より配信開始とのことで、このエントリー読んでいただいた株式会社オトバンク様からいただきました(いわゆる献本のような形です)。同社はオーディオブックなどの音声コンテンツを配信するFeBe(フィービー)を運営しています。
オーディオブックとは、本を耳から聴くものです。例えば、以下のサンプル音声を聞いてみるとイメージしやすいと思います。どちらも、クリックすると再生ページに飛び再生が自動で始まります。
■オーディオブックを聴いてみた
オーディオブックをちゃんと聞いたのは今回が初めてでした。まず思ったのは、同じ本でも文字を目で読むのと音で耳から入れるのでは、感覚として全く違うことでした。脳の異なる場所が刺激される感じで、新鮮な体験です。
記憶への残り方も目と耳では同じ内容でも違うように思いました。今回はMAKERSというビジネス書でオーディオブックを経験させていただきましたが、小説だともっと違った体験になるように思います。
その一方で、オーディオブックは自分には合わないなとも感じました。合わないというのは私自身が本に求めるニーズを満たしてくれないという意味です。簡単に書いておくと、
- インプットの速さが耳と目では、目のほうが早い。速読と速聴では速読のほうが効率がよい(速聴のトレーニングをすれば変わるかもしれませんが)。オーディオブックにもFeBeには2倍速コンテンツが用意されていますが、それでも目で文字を読むほうが早い。本をパラパラとページをめくってざっと全体観をつかむのもオーディオブックではできない
- メモが取りにくい。本であればメモを取る時にはただ次のページに進まず立ち止まれますが、オーディオブックの場合は気になったフェーズを聴いてメモを取るためにはデバイスを一時停止する必要があり、この作業が面倒に思いました
- 付箋や電子書籍のハイライトができないので、後からオーディオブックを聞き返したい箇所にダイレクトに行くのが困難。よって、再読(再聴)で必要な箇所だけ聴くことや、読後のまとめがやりづらい。【8/26追記】FeBeのオーディオブック再生用アプリ“KikuPlayer”では付箋機能がある
思うに、紙や電子書籍の目で読む本と、オーディオブックでは読者層が異なってくるのではないかなと。目で読むのも音で聴くのも両方好む重なるユーザーは存在はすると思いますが、読書のヘビー層はオーディオブックとは相性があまりよくないのかもしれません(少なくとも私がそうでした)。
それよりも、あまり読書をしない人であったり、読みたくても読書をする時間が取れない人が、隙間時間や何かをしながら聴くというイメージがあります(家事とか)。通勤中に聴くのもありかもしれません。満員電車で本を手にできない状況でも再生ボタンさえ押せれば聴くことができそうです。
■FeBeを見てみると
ここからはFeBeを見ての所感です。FeBeはオーディオブックなどの音声コンテンツを配信するサービスサイトです。
正直な感想として、もったいないと思いました。オーディオブックなどの音声コンテンツがあるのに、仕組みとして使いやすいようには思えなかったからです。
- 購入(音声ファイルダウンロード)できるのがデスクトップPCのFeBeサイトのみ(?)。iPad/iPodやAndroidスマホでもやってみましたが、うまくダウンロードできませんでした
- Mobileでのダウンロードページには「iPhoneやiPodをご利用の方は、ストリーミング再生となり、音声の保存はできません」。この方法は使いやすいとは言えない・・
- iPhoneに音声ファイルを入れる場合は、デスクトップでダウンロード→iTunesへインポート→iPhoneと同期という流れ。厳しい言い方をすればこのやり方は5年くらい古い印象です。初期のiPodとiTunesを同期させて音楽を取り込んでいた時代のやり方。
専用アプリで購入/ダウンロード、ファイル保存、再生、を全てMobile内で完結させる仕組みを用意すべきと思いました。聴くまでのハードルをなるべく下げないと。【8/26追記】FeBeのオーディオブック再生用アプリ“KikuPlayer”では、付箋機能やリピート再生、倍速再生などの利用が可能。スマホからのダウンロード再生もアプリより行うことができる - 理想を言えば、Amazonのページには同じ本が紙でもKindle版(電子書籍)のどちらも買えるので、そこにオーディオブックが買えるとよいと思いました。オーディオブックはKindleアプリから聞ける仕組みに
オーディオブックの価格設定も気になりました。基本的には紙の本と同じ値段です。日替わりの値下げや、有料会員になると安く購入できる仕組みもあるようですが、それを考慮しても割高感があります。例えば、今回のMAKERSオーディオ版は1995円。紙と同じというのは高い印象です。
価格に対する個人的な感覚としては、紙の本>電子書籍>オーディオブックの順番。この理由を考えてみると、コンテンツ内容は同じですが、目に見えるリアリティみたいなものがあるほど、価格の価値としては高く感じてしまうからだと思います。
紙の本に比べると電子書籍はモノとしてのリアリティは下がりますが、電子書籍デバイスの中に画面内で存在はしています。ぎりぎりモノとして認識できるレベル。
オーディオブックは電子ファイル化された音声なので、電子書籍に比べてさらに実態としての存在感が低く感じるんですよね。だから実態感が、紙の本>電子書籍>オーディオブックとなり、価格許容度もこの順番になってしまう。AmazonではKindle版が同じ紙の本より安いことが多いので、紙の本>電子書籍が普通になっている一方で、「オーディオブック=紙の本」がなおさら高いように感じてしまいます。
オーディオブックについては、まずは認知を広げ、ユーザーを増やせるかどうかだと思うので、潜在ニーズのある層でも価格がボトルネックとなってしまうのではないか。戦略的な値付けも大胆にやってみてもいいかもと思いました。
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色々と書いてしまいましたが、オーディオブックはコンテンツとしては紙の本や電子書籍とはまた違って、故に紙/電子書籍では応えられなかったニーズを満たせる可能性があると思います。
詳細の数字は割愛しますが、海外に比べて日本でのオーディオブック市場は小さいようなので、これからの国内でのオーディオブック市場の拡大はどこまでいくのか。今回いただいたMAKERSを機に関心領域の1つとなりそうです。