Menu

JINS 「目が小さくならないメガネ」 。顧客価値の再定義し、存在意義の次元を高める

#マーケティング #顧客価値 #再定義

メガネをかけると目が小さく見えてしまう…。見た目を気にして、メガネを買ったり使うのをためらった経験はないでしょうか?

視力を矯正するためのメガネが、見た目への不安を引き起こしているかもしれません。そんな悩みに応えるため、JINS が開発した 「目が小さくならないメガネ」 は、視力矯正だけではなく、見た目にも配慮したメガネです。

このメガネはどのようにして生まれ、どんな価値を提供しているのでしょうか?そして、この事例からビジネスに活かせるヒントとは?

ぜひ一緒に紐解いていきましょう。

JINS 「目が小さくならないメガネ」 


出典: JINS

JINSの 「目が小さくならないメガネ」 が、発売後に計画比2.2倍の売上を記録しました (参考記事) 。

このメガネは、近視の視力矯正用レンズが原因で目が小さく見えるという消費者の悩みに応えるために開発されました。商品名の通り、目が小さく見えないことを特徴としています。

開発では 「錯視効果」 に着目し、フレームの太さを微調整することで、目が大きく見えるようにしました。

ただし、フレームを太くするとメガネが重くなってしまうので、軽量樹脂素材の使用やリムの裏面を薄くするなどの設計上の工夫が行われました。また、フィット感を高めるためにテンプル (耳にかける部分) の角度調整もされています。他には、レンズの厚みを目立たなくするために、レンズ幅を小さくし、横から見たときに厚みが目立たないようにリムの設計が工夫されています。

この商品には、目が小さく見えないことを目指した 「適正なフレームの太さ」 、「フレームの軽量化」 、「レンズの幅の調整とリム設計」 という3つの要素が組み込まれています。

学べること


では JINS の 「目が小さくならないメガネ」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

通常のメガネにはない新たな価値をお客さんに提供するメガネです。

これまでメガネとは、主に近視や遠視、乱視といった視力の問題を解決するためにメガネを使うと認識されてきました。

メガネをかけたときに他人からは目が小さく見えてしまうという、お客さんが潜在的に抱えていた悩みに応えた 「目が小さくならないメガネ」 は、視力矯正にとどまらない役割を果たします。 "見る" という基本的な機能に加え、"見られる" においても価値をもたらします。

メガネをかけたときの見た目への悩み

JINS の 「目が小さくならないメガネ」 が誕生した背景には、お客さんからの 「目が小さく見えないメガネはないか?」 という声がありました。

この悩みは、近視の視力矯正用レンズが持つ光学的特性、すなわちレンズの形状に起因するものでした。近視のレンズは中央部分が薄く、縁に向かって厚みが増すため、メガネをかけたときに目が収縮して小さく見えてしまいます。

この問題は、視力を矯正するために必要な機能であるがゆえに生じるものですが、一方でメガネをかける人の外見に対する自信や、自己表現に影響を与える要因にもなっていたわけです。

JINS の問題解決

JINS は、この見た目への問題を解決するために、既存のメガネの概念をあらためて捉えなおしました。視力矯正だけでなく、メガネをかけたときに 「どう見られるか」 という側面に焦点を当てたのです。

メガネをかけても目が小さく見えないという新たな価値を提案することで、メガネをかけたときの見え方や外見への悩みを解消し、より自信を持って人と接することができるようサポートします。

具体的には 「目が小さくならないメガネ」 は、メガネのフレームの太さや形状に工夫を凝らしています。目が大きく見えるように設計された太めのフレームは、見た目のバランスを崩さず、自然な顔の印象を保つことができます。

フレームをただ太くしただけでなく、軽量化やフィット感の向上といった細かなデザインにも配慮されています。フレームを軽量化するために、特別な樹脂素材を使い、リムの裏面を薄くすることで、メガネ自体の重さを軽減しました。また、フレームの角度を調整することによって、顔にしっかりフィットし、メガネがずれにくい設計になっています。

自己表現をサポートするメガネ

このように、JINS は視力矯正としてのメガネの基本的な要素とともに、「見られること」 についてもメガネの役割を生み出しました。

視力を矯正することはもちろん重要ですが、それに加えて、見た目に対する満足感や自分を表現する手段としてメガネを捉えることで、JINS はお客さんに新しい価値をもたらします。

メガネはただ視力を補正するための道具ではなく、自己表現の一部であり、自分らしさを強調するアイテムであるという姿勢を JINS は打ち出したわけです。

学びの汎用化

JINS の 「目が小さくならないメガネ」 の事例は、製品が持つ基本的な機能にとどまらず、より高い次元から定義した価値をお客さんに提供することの重要性を示しています。

視力矯正というメガネの通常の 「より良く見る」 役割に加え、「より良く見られる」 という便益もあることで、お客さんにとっての価値を広げました。

製品やサービスを、今までよりも高次元から価値を再定義することで、新たな顧客体験をつくり出し、ブランドへの信頼と共感を深めることができます。JINS の事例から、自社の商品やサービスを機能的価値の提供で終わらず、より広く深いところでの価値を見出し、お客さんに届けることの大切さを学べます。

まとめ


今回は JINS の 「目が小さくならないメガネ」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • JINSの 「目が小さくならないメガネ」 は、消費者の潜在的な悩みである 「メガネをかけると目が小さく見えてしまう」 という問題に着目。メガネの製品価値を再定義することで、新たな市場ニーズを掘り起こした

  • 視力矯正という 「見る」 に加えて、見た目に対する悩みを解消する 「見られる」 ことにも価値を提供するメガネ

  • 既存製品の存在意義を見直し、より高い次元での価値 (例: 自信を持って人と接することができる, 自己表現ができる) を提供することの重要性を示している


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。

ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!

最新記事

Podcast

多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信中。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。