#マーケティング #志は高く視野は広く #目線は低く
マーケティング活動において、目標を大きく掲げたり、広い視野で新たな仕事に取り組むことは重要ですが、最後に求められるのは生活者やお客さんに寄り添う姿勢です。
では、「志を高く、視野を広く」 、それでいて 「目線は低く」 という一見相反することをどのように両立させ、実践していけばよいのでしょうか?
具体的な事例を交えながら、ビジネスでの理想的な心構えについて考察していきます。
志を高く、視野を広く、目線は低く
仕事に向き合うとき、私が大切にしている姿勢は 「志を高く、視野を広く、目線は低く」 です。
志を高く
「志を高く」 とは、大きな目標を掲げて、自分自身の成長や社会への貢献につなげたいという考え方です。
自分や自社のことだけではなく、しっかりとお客さんに貢献し、世の中にも少しでも役に立てることを忘れないことを大事にしたいと思っています。そのために、自らが何をできるかを考え、行動に移すことを心がけたいです。
視野を広く
「視野を広く」 は、多角的な視点で物事を捉え、周囲の変化やチャンスを見逃さないことです。
例えば、異なる業界から学び、自分の分野に新たな視点を取り入れることが当たります。異なるバックグラウンドを持つ人々との交流や、他国の市場やトレンドを研究することで、新しいアイデアを得ることもできます。
目線を低く
そして 「目線を低く」 とは、生活者やお客さんの立場を理解し、共感する姿勢を意味します。
例えば、商品を企画するとき、実際に生活者の声を聞き、どんな問題を解決したいのかを理解することが重要です。
飲料メーカーが、複数回の消費者インタビューとホームユーステストを実施し 「家で簡単にカフェのような体験をしたい」 というニーズを見つけ、手軽に淹れられる高品質なコーヒーを開発するというふうにです。
インタビューの中では、具体的にどのようなシチュエーションで飲みたいのか、使いやすさについての意見を集めました。調査からの洞察としてシンプルな操作でコーヒーを淹れられるデザインに改良されます。
ローデータの扱い
また、目線を低くするとは、データ分析におけるローデータ (生データ) を重視する姿勢にも通じます。
具体的には、データ分析のプロセスの中では 「プリ分析」 というステップを設け、ローデータをしっかり確認することで、これから分析に入るデータの特徴や性格を把握しておきます。他にも、アンケートデータでは実際の対象者の回答内容にざっと目を通すことによって、アンケート回答への肌感覚を持つことができます。
ローデータを尊重し、丁寧に扱うことで 「目線は低く」 を体現できます。
目線は低くすることの意味
お客さんの状況やニーズに耳を傾け、小さな声に向き合ったり、ローデータの理解を深めておくことにより、初めて本当の意味での価値提供が可能になります。
志が高く、視野が広くても、それを実現する具体的な手段が生活者やお客さんに寄り添うものでなければ、真に選ばれる存在にはなれません。
例えば、ある日用品メーカーが、お客さんからの 「パッケージが開けにくい」 という小さな声をもとに、開けやすいパッケージに改良し、それによって顧客満足度は向上するでしょう。
企業はお客さんに寄り添い続けることで、信頼を築くことにつながります。だからこそ、 「目線を低く」 という姿勢が大切なのです。
Think big, start small
ここまで見てきた 「志を高く、視野を広く、目線は低く」 は、 「Think big, start small」 という考え方にも通じます。
Think big, start small とは?
「Think big, start small」 とは、大きな構想を描きながらも、まずは小さな一歩から始めるというアプローチです。
例えば、Amazon は初めはオンライン書店としてスタートし、その後、徐々に商品カテゴリーを拡大し、今や世界最大の EC プラットフォームに成長しました。大きなビジョンを持ちつつ、それを実現するための具体的な行動は小さく始めることによって、長期的な目標と短期的な成果の両方を追求できます。
あるベンチャー企業が、環境問題の解決という大きなことを目指していたとしても、最初は特定の地域や問題に焦点を当て、その領域に特化してプロダクトやサービスを展開することで、徐々により大きなインパクトを目指していけるでしょう。
小さく始める狙い
小さく始める意図は、早期に失敗を経験し、そこから学ぶことで次に活かすことです。
例えば、新しい製品を開発する際にまずプロトタイプを作成し、少人数のユーザーに試してもらうことで、早い段階でのフィードバックを得て改良を重ねることが可能です。大きな構想を持ちながらも、初期段階で勝ち筋を見極め、必要な調整を行うことにより、最終的には描いたビジョンに近づいていくというアプローチです。
小さな成功体験を積み重ねることによって、チーム全体のモチベーションを維持し、より大きな目標に向けてのステップを確実に進めることができます。
アクセルを踏むタイミング
小さく始めることは、どのタイミングでどの要素にアクセルを踏むかを見極めるためでもあります。
新しいサービスがユーザーに受け入れられたと確信したタイミングで、一気に予算投入を増やし、成長を加速させるといった具合です。大きなビジョンを持っていても、それを実現するための最初の一歩は慎重に踏み出し、成功の兆しを見つけた時にアクセルを一気に踏むことがポイントです。
例えば、Netflix はまずは DVD の郵送レンタルから始め、ストリーミングサービスに転換したタイミングで大きく投資を行い、一気に成長を加速させました。
「Think big, start small」 は、適切な時期に成長のスピードを上げるための戦略とも言えます。
慢心を防ぐ
「志を高く、視野を広く、目線は低く」 という姿勢は、驕りや慢心を防ぐための重要な指針でもあります。
目線を低くすることで驕りを防ぐ
例えば、ある大手家電メーカーが成功を収めた後、その成功体験に固執してしまったがゆえに、新しいスマート家電のトレンドやお客さんの変化に対応できなくなってしまったとします。
しかし、目線を低く保つことで、現場の声に耳を傾け、お客さんのニーズの変化を敏感に感じ取り、対応する商品やサービスの改善につなげられます。
また、ソフトウェア企業が、ユーザーからのフィードバックをもとに、使いやすさやインターフェースを改善し、幅広いユーザー層のニーズに応えることでプロダクトの支持を広げた事例もそれに当たります。他には、家具メーカーが現場の職人からの提案を取り入れ、組み立てやすさを改善することで、顧客にとっての手間を削減し、顧客満足度を向上させることもできるでしょう。
生活者やお客さんの立場になる
志が高く、広い視野を持つことは良いですが、もしそこに驕りが加わると、生活者やお客さんの視点を見失います。
自分たちが描く大きなビジョンに固執するあまり、お客さんが何を求めているのか、どんな問題に直面しているのかを軽視してしまっては本末転倒です。目線を低くを意識することによって、お客さんに寄り添い続け、本当のニーズを見逃さないようになれます。
「志を高く、視野を広く、目線は低く」 という姿勢は、Think big, start small の実践とともに、驕りや慢心に陥ることなく、生活者やお客さんの立場になれる指針となります。
まとめ
今回は、「志を高く、視野を広く、目線は低く」 という考え方をご紹介しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 志を高く、視野を広く、目線を低く。この3つの姿勢はマーケティング活動においても目指したい姿勢
- 志を高く持つことで大きなビジョンを描き、社会貢献を意識する。視野を広く保つことにより、多様な視点から市場や環境を理解する。そして目線を低くすることによって、生活者のニーズを捉え共感する
- Think big, start small という考え方に通じる。大きなビジョンを持ちつつも、小さなステップから始めることにより、リスクを最小限にして確実に成果を積み重ねる
- 目線を低くすることで驕りや慢心を防ぎ、生活者や顧客の視点を持ち続けることができる。過去の成功体験に固執することなく、お客さんの声を聞き続け、変化するニーズに柔軟に対応する
- マーケターとしての役割はお客さんの本当のニーズを深く理解し、それに応えること
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