ご紹介したい本は、シェア <共有> からビジネスを生みだす新戦略 です。
この本に書かれているのは、消費システムが変わる歴史的なターニングポイントに私たちはいることです。この記事では、「シェア」 という本を読んで考えたことを書いています。
3つのコラボ消費
本書では、共有 (シェア) される消費システムを 「コラボ消費」 という、コラボレーションとコンサンプションから作られた言葉で表現しています。
コラボ消費には大きく3つのカテゴリーがあるとします。
✓ 3つのコラボ消費
- プロダクト = サービス・システム (PSS)
- 再分配市場
- コラボ的ライフスタイル

我慢から便利へ
コラボ消費は特筆すべき概念ではないように思えるかもしれません。
日本語特有の 「もったいない」 という言葉があり、近所へのおすそ分け、兄弟や姉妹間でのお下がりなど、昔から普通に見られるものでした。あるいは DVD レンタルや書籍・ゲームなどの中古、またはフリマなど、不特定多数の人との間でも行われています。
すでに私たちの身の回りに存在しているコラボ消費ですが、ただし本書を読んで気付かされたのは、レンタルや中古品の利用は従来はどちらかというと 「消費の主流ではなかった」 という点です。
中古ではなく新品を買う、レンタルではなく自分の物として所有することがこれまでは 「主流」 と見なされ、中古品を利用することはどこか 「かっこよくない」 というイメージを抱いていなかったでしょうか。レンタルや中古品を我慢して利用してきたように思います。
しかし、本書を読んであらためて思ったのは、こうした潮流に変化が起こっていることです。
中古品であっても、満足度の高い購買ができます。例えば、個人的な話ですが Amazon で昔の本を探していると、新品は取り扱っていなくても中古品なら買えることがあります。
実際に中古の本を買うと、自分の欲しい本が手に入り読へるという満足感が得られます。レンタルの場合も同じで、ずっと所有しているよりも必要な時だけ利用するほうがむしろ便利です。
「間違った場所」 から 「正しい場所」 へ
本書で印象的だったのは、「世の中にいらないものはなく、使えるものが、ただ間違った場所にあるだけ」 という指摘です。
ある物はもう自分には必要がないけれど、他の誰かにとっては欲しいものだという意味です。別の表現をすれば、ある物に対して供給と需要がうまくマッチングしていない状況を指しています。
ここにネット、特に人と人のつながりが無数につくられる SNS が介することで、需要と供給のマッチングがこれまで以上に起こってきます。上記の文脈で言い換えれば、使える物が正しい場所に移るということです。
インターネットの本質は 「ネットワーク上の双方向性」 と 「個の情報発信」 です。この本質をを持つネットが、人々の物に対する 「いらない」 と 「欲しい」 を結びます。その結果で起こるのが、「所有するより必要な時だけ利用し、その分だけお金を払えばいいのではないか」 です。物の所有よりも共有にメリットを感じるようになるわけです。
この本を読んで調べてみて、おもしろいと思ったシェアビジネスを挙げておきますね。
✓ シェアビジネスの例 (アメリカ)
- 世界最大のカーシェアリングサービス Zipcar (ジップカー)
- 近所の人と貸し借りをサービス化した Neighborgoods (ネイバーグッズ)
- お下がりを共有するサービス ThredUP (スレッドアップ)
✓ シェアビジネスの例 (日本)
- 使っていない時だけ自分の車を貸し出すカーシェアリング CaFoRe (カフォレ)
- Twitter を通じてモノをあげたりもらったりできる Livlis (リブリス)
これからの 「評判」
共有という考え方がもっと一般的になり、人々がよりシェアをするようになるとどうなるのでしょうか?
「シェア」 という本に書かれていておもしろいと思ったのは、「評判の口座」 です。
何かをシェアするためには自分1人ではできなく、シェアをする相手が必要になります。シェアは相手とのお互いの信用のもとで成り立っています。
ということは他人からの信用や評価・評判がある人ほど、ますますシェアすることができるようになります。こうしてでき上がっていくのが 「評判の口座」 です。信用の上に成り立っているシェアに参加できるかどうかを判断するカギになるでしょう。
評判はお金にも似ています。物々交換の時代で人々の間で取り引きがしやすいようにとできあがったのが、お金です。それまでは個々人の相対的な評価 (価値) で物々交換がされていたのが、お金により物やサービスの価値が定量的に判断できるようになりました。
同じことが、信頼や評判でも起こるのかもしれません。相手のことが信頼できるかどうか、あるいはどの程度信頼できるかどうかは、人それぞれで判断されています。これは、物々交換の時と同じ構図です。
もし評判の口座、つまりどれだけ信頼できるかが定量的に判断できる仕組みが生まれるなら、シェアされる世界では評判はお金のような存在になるのかもしれません。
最後に
去年の後半くらいからよく目にする言葉に、「断捨離」 があります。
断捨離は、もともとはヨガの 「断業」 「捨行」 「離行」 という考え方に由来し、意味は不要なモノを断ち、そして捨てることでモノへの執着から離れ、身軽で快適な生活を手に入れようというものです。
断捨離ブームからも、無駄なものを所有をしない暮らし方は少しずつ広がっていることがわかります。