
お笑いコンビのパックンマックンのパックンによる、コミュニケーション術について書かれた本が、ツカむ!話術 です。
お笑いタレントの書いた本なので、軽い本かと思っていました。しかし内容は論理的で、かつわかりやすい本でした。
本書のテーマ
この本のテーマは、コミュニケーションや人と話す時に説得力のある伝え方をするにはどうするかです。
普段の会話、会議、プレゼン、スピーチなどなど、様々なコミュニケーションについて書かれています。
日常で色々な話を聞いたりしますが、そのほとんどは 「話術」 を意識することなく、コミュニケーションは成立します。日常のコミュニケーションでも、奥には理論があることが本書を読むとわかります。
この本は 「なるほど」 と思わせてくれる内容が多かったです。
本書を読んでいくと、わかりやすい話とそうではないもの、伝わる伝わらないの違いは何が要因だったのかがわかります。
説得力を3つの要素でとらえる
興味深かったのは、コミュニケーションにおける説得の要素は3つあるというものでした。エトス、パトス、ロゴスです。
- エトス:人格による説得要素。話している人を信用しようという気にさせるような表現を指す。人格が優れている、品格がある、人柄がよい、センスが良い、面白そう、価値観が自分と一緒などの、その人自身の信頼性
- パトス:感情に働きかける説得要素。共感、怒り、喜び、所属愛/愛国心など、聞いている人に特定の感情を抱かせるような表現
- ロゴス:知性に働きかける説得要素。その人の言うことが頭で考えて理解し、納得できること。話に論理性がある、理論的である表現
この3つをもう少し噛み砕くと、説得力があるのは以下の3つを満たしていることです。
- 信頼のできる人物が話している (エトス)
- 話の内容に共感できたり感情移入できる (パトス)
- 話の論理や言葉がわかりやすい (ロゴス)
最も重要なのはエトス (人としての信頼)
さらに、この3つは同等の力を持っているわけではありません。順番は以下です。
エトス > パトス > ロゴス
信頼 > 共感 > 論理/言葉
つまり、いくら言葉巧みに話されても、話に共感できなかったり、その人自体が信用できない人であれば、人は動かないということです。逆に言うと、信頼している人の話は、多少の論理性がなくても、信用してしまいがちということです。
エトス・パトス・ロゴス度の例
話す人によって相手が動くかや説得されるかどうかが変わるのは、例えば、クライアントを説得するために、ここぞという時は自分の上司である部長に同行してもらうことが当てはまります。
話す内容自体は部長も自分も変わらなくても、むしろ技術的な詳細や自分のほうが知っているとしても、説得力があるのは部長です。これは、部長と自分の社会的地位の差から生まれるものです。本書で言うエトス度 (信頼度) が違うのです。
同じ例で言うと、エトス度の高い部長が、さらに、クライアントが抱える課題や悩みに寄り添うような、相手の感情も汲み取った話し方 (パトス) をすればさらに効果があるでしょう。エトスとパトスの両方で高い説得方法です。
3つの要素を意識する
コミュニケーションをして相手を動かすために、自分は今、エトス (信頼) 、パトス (共感) 、ロゴス (論理) のうち、何を使っているのかです。意識するのと漠然とコミュニケーションをするのでは、相手への伝わり方は違ってくるしょう。
ちなみにこの本の帯には、 「東京工業大学で大人気の白熱講義、ついに書籍化!」 「名門大卒芸人パックンが教えるハーバード流トーク術!!」 とあります。ここでもうまくエトスが使われています。