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欲しい ほしい ホシイ - ヒトの本能から広告を読み解くと という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容
- ヒトの本能から広告を読み解く
- ターゲットのインサイトは変わり続ける
本書の内容
内容紹介から引用します。
プレステの全盛期をつくったことでも知られるクリエイティブディレクター小霜和也による初の著作。ヒトのホンノウや心のメカニズムを手がかりに、消費者の 「ほしくなってしまう理由」 「買いたいと思ってしまうワケ」 を解き明かした実践的広告マーケティングの新しい教科書。
広告はおもしろい。が、商品は売れない?それはホンノウに逆らっているから。消費者の 「ほしくなってしまう理由」 「買いたいと思ってしまうワケ」 を解き明かす。
ヒトの本能から広告を読み解く
この本で貫かれているのは、広告表現は理性だけではなく、ヒトの本能や無意識の働きも見据えて考えるべきであるという考え方です。
著者の問題意識
冒頭で著者の小霜和也氏は次のような問題意識を書いています。
いままで、大手広告代理店や様々なクリエイター、マーケッターが広告について様々な理論や意見を唱えてきましたが、僕はどれを聞いたり読んだりしても、「半分」 ぐらいしか正しいと思えませんでした。
なぜならば、どれも全て、理性という、人間の心の半分にしかスポットライトを当てていないからです。
インパクトはあれど購買には至らない、どころか正しく記憶すらされない、力のない広告表現の山が築かれている大きな理由がここにあると僕は確信しています。
理性だけを見る表現は、極端に言えば、「ああすればこうしてくれるだろう」 といった、粗雑な期待の上で企画されています。
「言ったことは理解されるだろう」 。
「見せたものは覚えてくれるだろう」 。
「インパクトがあれば動いてくれるだろう」 。
(中略)
広告というものを、心のメカニズムという視点からも把握していくことで、マーケティングやメディアプラン、効果測定などとの連携効果がもっと出て来ると言いたいのです。
(引用:欲しい ほしい ホシイ - ヒトの本能から広告を読み解くと)
この本では、認知、記憶、購買、言葉やコミュニケーション、マーケティングについて、ヒトの本能がそもそもどうなっているかに立ち返って書かれています。
ヒトがまだ十分な言葉を持たず、サバンナで豹などの天敵に囲まれた生活を送っていた頃の本能や、その時の環境で得た無意識の反応から紹介されています。
人は行動してから決めている (無意識の役割)
本書で印象的だったのは、人が商品を買う動機の9割は、その人の意思によるものではない、と書かれていたことです。9割は無意識によるものです。
関連して興味深かったのは、人は何かを決めてから行動するのではなく、行動してから決めるという指摘です。購買行動に当てはめると、最初に無意識による情動で 「買いたい」 と反応し、その次に意識が 「買いたい理由」 をつくって買っている、という順番です。
著者の考え方でおもしろいと思ったのは、意識や意思は 「無意識へのラベル貼り」 でした。無意識が 「この動物には近づくな」 と命じ、後から 「危険」 というラベルを貼っているという考え方です。購買行動もこれと同じです。
ここからの広告への示唆は、広告の役割は2つあるということです。
- 無意識の情動に訴えかけて 「買いたい」 ドーパミンを分泌させる
- 「買わないほうがいい」 という気持ちを抑える
商品やブランドのポジションによって、どちらになるか変わります。
No. 1 のブランドであれば前者の無意識への刷り込みを狙います (例: なんかいい感じというイメージを伝える) 。
トップブランドでなければ後者です。差別化ポイントを理性的に訴求していくべきというアプローチです (例: こちらのほうが低カロリー、こちらのほうが無香料) 。
ターゲットのインサイトは変わり続ける
ヒトは常に違う自分を求めているという本能があり、そこからの示唆としてターゲットのインサイトも1つではなく複数あり、変わり続ける、という考え方も興味深かったです。
流行を追いかけたいと思う自分がいて、一方で個性を追求したいという自分もいます。商品やサービスのターゲット顧客を見る時に、その人たちのインサイトはこうと決めるのは危ういです。
ターゲットインサイトというものは、狩猟採集時代のヒトの本能と、現代の理性との接触点に浮かび上がってくるものだということです。
だからマーケティング・広告コミュニケーション戦略を立案する人たちには、太古から大きな人類文明の流れと、いまいまの事象の両方を押さえていくことをお奨めしたい。
より立体的多面的に生活者のインサイトをつかんでいけるからです。
(引用:欲しい ほしい ホシイ - ヒトの本能から広告を読み解くと)
「人」 と 「ヒト」 の使い分け
本書を読み進めていくうちに、著者は 「人」 と 「ヒト」 の文字をあえて使い分けていることに気づきます。
消費者や生活者として書かれているときは漢字の 「人」 が使われています。人間の本能や無意識のことを語る文脈では 「ヒト」 と表現されます。
本書の副題は 「ヒトの本能から広告を読み解くと」 です。あえて続きを言うなら、「ヒト」 の本能に立ち戻って読み解き、「人」 を動かす広告は何かを考えるというのが本書の趣旨です。