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あるスタートアップを例に、「投資家が大切にする4つの問い」 の答えを考えました。私が思う魅力と期待について書いています。
エントリー内容です。
- 投資家が大切にする4つの問い
- 興味深いスタートアップ Datachain とは
- Datachain に当てはめる4つの問い
投資家が大切にする4つの問い
知人の投資家に聞いた、ベンチャーキャピタルなどの投資家が大切にする4つの問いは、以下です。
- 何が魅力か
- 懸念は何か
- なぜ今か
- 多くの人は信じていないが (あるいはまだ気づいていないが) 、あなただけが信じている大切なことは何か
4つの問いから、スタートアップなどの企業から魅力的な投資先を判断します。
以下では、私が興味深いと思った日本のあるスタートアップに4つの問いを当てはめてみます。スタートアップは Datachain です。
Datachain とは
Datachain は、ブロックチェーンを使った DMP により、データ流通プラットフォームの構築を目指すスタートアップです。掲げているミッションは、「世界中のデータをブロックチェーンによって安全に共有できるようにする」 です。
前提である問題意識は、データアクセス機会の格差です。GAFA と呼ばれる一部のグローバル大企業がデータを独占し、その他大勢の企業との差が広がっているのが2018年現在です。GAFA とは、Google・Apple・Facebook・Amazon です。
もちろん、GAFA などのグローバル企業は、ユーザーデータが資産になると判断し、過去から莫大な投資をしたからこそ、今のデータ独占の状況を築くことができました。しかし、その結果でもたらされたのは、データ保有およびアクセス (利用) の格差です。
Datachain はこの状況を、データ流通プラットフォームを構築し、データアクセス機会の平等を提供することによって解決することを目指します。
Datachain に当てはめる4つの問い
冒頭でご紹介した、投資家が大切にする4つの問いを Datachain に当てはめてみます。
- 何が魅力か
- 懸念は何か
- なぜ今か
- 多くの人は信じていないが (あるいはまだ気づいていないが) 、あなただけが信じている大切なことは何か
以下、それぞれについてご説明します (いずれも公開情報からの私の理解です) 。
1. 何が魅力か
ビジョンとミッション
Datachain が描くビジョンと、ビジョンを実現するために自分たちは何をするかのミッションへの魅力です。
- 私が思う Datachain が描くビジョン (理想とする世界観) は、データアクセスへの格差が解消され、価値のあるデータを利用できるようになることによって、世の中がより良くなっている世界
- Datachain の DMP があれば、自分たちだけでは手に入れなかったデータにアクセスし利用できる。新しい商品やサービスが提供され、社会に価値がもたらさせる世界
Datachain のミッションへの魅力は、以下です。
- ブロックチェーンという次世代インフラ技術を使い、安全性と信頼性を担保した DMP を構築し、データ流通プラットフォームをつくる
- プラットフォームの主体者は Datachain だが、データは独占せず、データ提供者のデータ公開条件に従って、データ利用者にアクセス権が付与される
私が思うミッションの意味することは、以下の通りです。
- 一部の大企業がデータを独占するデータの中央集権構造を、非中央の分散型構造に変える
- それにより、誰もがデータにアクセスできる機会を提供する (機会の平等化)
- データを持つ者と持たざる者の格差を解消する
DMP プラットフォーム構想の実現
DMP プラットフォームの構想は、新しいものではなく昔からありました。しかし、2018年現在では、Datachain が構想するような規模ではまだ実現していません。データ提供者とデータ利用者のそれぞれに、提供を促すインセンティブ、利用者にとっての使う価値をつくれていないからです。
Datachain は、ブロックチェーンとトークンエコノミーを形成し、提供者と利用者の双方で win-win を成立させることを目指しています。
DMP 利用領域のポテンシャル
Datachain は、まずはマーケティングの特に、ネット広告でのコミュケーション領域に最初の活路を見出そうとしています。
将来的にポテンシャルが大きいのは、医療、教育、行政、不動産などです。人々のデータや情報への感心が高いにもかかわらず、データ蓄積が十分ではなく、アクセス環境が整っていない領域です。アクセスに制約があるということは、サービスの提供者 (仲介者含む) と利用者において情報の非対称性があります。
こうした分野において、Datachain のデータ流通プラットフォームが使われ、データの格差を解消されることが期待できます。
2. 懸念は何か
Datachain が構想するビジョンやミッション、可能性に期待と魅力がある一方、ビジネスとして持続可能な事業になれるかの懸念もあります。
具体的には以下です。
- Datachain の DMP に、価値のあるデータが提供されるのか。データ提供者である企業にとって、データは自分たちの資産である。自らの意志で提供したくなるようなメリット (インセンティブ) を、Datachain は用意することができるか
- データ利用者にとって、Datachain のデータプラットフォームに、魅力的なデータが存在しているか。提供者からデータがもたらされても、利用者にとって魅力がなければプラットフォームは成立しない
- GDPR (一般データ保護規則) に象徴されるように、世界的に個人データの収集・扱い・提供の規制が強化される傾向がある。データ提供者がリスクを取ってまで提供しなくなる、または価値の低いデータしか提供されないのではないか
- 日本での仮想通貨への当局の規制が強まっている。関連してブロックチェーンへの規制も高まり、Datachain の基幹技術であるブロックチェーンおよびトークンの活用が制限され、ビジネスの環境が整わない、あるいは整うまでに時間がかかるのではないか
3. なぜ今か
3つめの問いは、投資家にとってはなぜこのタイミングが投資すべき時なのかを見極めるためです。
私自身は Datachain に資産の投資をするわけではありませんが、なぜ今、Datachain を魅力に思うのかです。
データ流通プラットフォームの実現
- Datachain のようなデータの流通プラットフォームの実現は、少なくとも日本ではまだ誰も実現していない。世界的に見ても、Datachain が掲げるビジョンのような成功事例はない
- 同じアイデアを持っている人は少なくないが、Datachain はまだ誰も実現していないことを、初めて成し遂げる可能性を持っている
ブロックチェーン技術への期待
- ブロックチェーン技術やトークンも含めて利用したビジネスの可能性が、2016年頃から現実的になってきている
- 2017年はブロックチェーンよりも暗号通貨 (仮想通貨) への関心が高まったが、今後はブロックチェーン利用の期待が高まっている
4. 多くの人は信じていないが (あるいはまだ気づいていないが) 、
あなただけが信じている大切なことは何か
この問いは、4つの中で私は最も興味深いと思う質問です。
Datachain に当てはめると、次の通りです。
データアクセスの格差
- 一部企業のデータ独占による、データを持つ者と持たざる者との格差は、人々が十分に認識していないが深刻である
- データアクセスと利用の格差をなくすことは、社会の発展へのボトルネックを解消する
データニーズのマッチング
- データ流通プラットフォームでお互いのニーズにマッチしたデータが流通することによって、もっとデータは有効に活用される (逆に言えば、2018年現在は埋もれたり有効に活用されているとは言えない)
- ビジネスに適切に使われれば、社会はより良くなる
- データが使われない、需要と供給がマッチングしないことによる機会損失は皆が思っている以上に大きい
最後に
今回は、投資家が大切にする4つの問いを Datachain に当てはめて考えました。4つの問いは、以下です。
- 何が魅力か
- 懸念は何か
- なぜ今か
- 多くの人は信じていないが (あるいはまだ気づいていないが) 、あなただけが信じている大切なことは何か