投稿日 2022/10/06

中村屋の中華まんが個包装リニューアル。「お客さんの使い方」 でヒット商品をつくる方法


今回は、お客さんの使い方を理解することで、商品開発やマーケティングのヒントになるという話です。

おもしろいと思った中華まんのリニューアルを取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 中村屋の中華まんがリニューアルして人気に
  • リニューアルのヒントは、消費者の使い方と面倒さ
  • お客さんの使い方を理解して、商品開発やマーケティングに活かす方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

中村屋の中華まん


出典: @Press

リニューアルをして売上が好調とのことです。

昨年リニューアルした中村屋の 「中華まん」 が好評だ。

主に小売店などで販売されている商品で、蒸し器を使わなくても電子レンジで温めるだけでふっくらとした仕上がりになる。調理の手間が少ないことから、子育て世代を中心に人気を博している。4 ~ 6月の売上高は計画の3倍と好調に推移している。

リニューアルの背景


中村屋が中華まんを個包装にしたリニューアルの背景を見てみましょう。

リニューアルのきっかけは中華まんの消費者調査からだった。

 「中華まんを食べる際、仕上がりをふっくらさせるためにラップで包んでから電子レンジで温める人が多く、手間になっていたことが分かった。一つずつ個包装にしてそのまま温められるようにすればより食べやすくなるのではと考えた」 

こう話すのは菓子・中華まんマーケティング部課長の石川景子さん。中にはよりふっくらした中華まんを求めて、少し水をかけてから包んでいる人もいたようだ。「中華まんを朝ご飯に食べる人も多い。手間をなるべく省く必要があると感じた」 と石川さんは話す。

そこで商品のリニューアルの際に中華まんを一つずつ個包装にした。袋に穴を開けるといった行程を挟まずにそのまま商品をレンジに入れられるよう、パッケージに微細な穴を開けた。そのまま商品を電子レンジに入れて温めても破裂する心配がない。

利用用途の広がり


中華まんを1つ1つ個包装にしたことで、中華まんを食べるシーンが増えたとのことです。

個包装で持ち歩きがしやすくなったという消費者からの声も多いという。今までは朝食や間食など自宅での需要がメインだったが、お弁当の代わりやキャンプなどでの活用も見込む。

 「個包装化は手間を省くだけでなく、衛生的にも良い。結果として用途がさらに広がった」 (石川さん) 

想定していなかった利用シーンが拡大したというのは興味深いです。

逆に言えば、これまでは本来はもっと中華まんを食べてもらえたのに、個包装にしていなかったために機会損失が起こっていたということです。


学べること


では、中村屋の中華まんの事例から学べることを整理してみましょう。

ヒントは 「お客さんの使い方」 にあり


中華まんを個包装にするという着想を得たのは、消費者の中華まんの食べ方からでした。

中華まんを食べる際、仕上がりをふっくらさせるためにラップで包んでから電子レンジで温める人が多いことに気づいたわけです。ラップをせずに温めてもいいのですが、ラップで包むことでよりおいしくなると消費者は感じています。しかし一方で、ラップで包むことには面倒さが発生していました。

中村屋は、それなら最初からラップで包まれた状態にしてしまおうという発想をしました。1つ1つ中華まんを包むという手間を消費者ではなく、作り手が負担したわけです。

顧客視点での商品開発やマーケティング


お客さんの利用シーンには商品やサービスをより良くできるヒントがあります。

どのようなヒントかと言うと、

✓ 商品開発やマーケティングへのヒント
  • 使う時のきっかけは何か
  • どんな文脈や背景があるか
  • 使っている時のやり方、その時の気持ちなどの心理状態
  • 作り手の想定通りの使い方か、意外な使い方をしているか
  • 使うことでどんな価値を得ているか
  • 使用中や後に不便や面倒を起こしてしまっていないか

こうした問いかけからお客さんの実際の使い方を知ることで、お客さんについての理解が深まります。

商品やサービスの仕様やスペック、機能の理解だけではなく、もう一歩踏み込んで 「お客さんの使い方」 にも詳しくなることが大事です。いわば 「お客さんの使い方のプロ」 を目指すわけです。

使い方を理解することで、お客さんの視点で自社商品やサービスがどう見えているかを知ることができます。ここに、商品開発やマーケティングのヒントがあるのです。


まとめ


今回は中村屋の中華まんを取り上げ、学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ お客さんの使い方を理解する重要性
  • 商品やサービスの仕様や機能の理解だけではなく、「お客さんの使い方」 にも詳しくなることが大事
  • 使い方を理解することで、お客さんの視点で自社商品やサービスがどう見えているかが見え、お客さんの理解が深まる
  • お客さんの利用シーンから、商品やサービスをより良くするヒントを見つけよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。