
このブログでは、読んだ本の書評を書いたり、エントリーの参考情報として本の内容を引用しています。ブログに訪問いただいた方に役に立つと思ってもらえる本を紹介しています。
今回のエントリーでは、2016年5月の1ヶ月で、クリックが多かった本をご紹介します (5冊) 。順番はクリック数の多かったものです。
究極の身体 (高岡英夫)
運動や体の本で、今まで読んだ中で最もおすすめの一冊です。人の身体構造や運動のメカニズムについて独自理論が、興味深く読めます。
本書の究極の身体の定義は 「人体の中で眠っている四足動物、あるいは魚類の構造までをも見事に利用しきって生まれる身体」 です。
人間の進化は、魚類 → 爬虫類 → 哺乳類 → 人間と経てきており、人間の身体には、魚類、爬虫類や哺乳類などの四足動物の構造を受け継いでいると著者の高岡英夫氏は言います。
究極の身体は 「魚類運動=脊椎を使った動作」 「四足動物の運動=脊椎の体幹主導動作+4本足主導の動作」 の両方を使えます。
著者の問題意識は、究極の身体を持っているにもかかわらず、現在の人類の多くはその身体資源を使いきれていないことです。究極の身体を実現するために印象的だったことは、
- 究極の身体に不可欠なことは重心の意識。そのために筋肉の脱力が必要
- 身体の中にセンター (軸) を構築する。センターは、身体の重力線とほぼ一致するところを通る身体意識
- 究極の身体の立ち方は、吊り人形のように頭部の糸で身体を吊り上げ、そこからゆっくり下ろして足を接地させたような立ち方 (緩重垂立) 。体重を支えるギリギリのところまで力を抜いたプラプラの状態
身体動作や運動構造に興味のある方は、おもしろく読める本です。
書評エントリー:書籍 「究極の身体」 がおもしろい
21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 (佐宗邦威)
本書で紹介されているデザイン思考は、デザイナーのやり方をビジネスパーソンのためにアレンジしたものです。デザイナーが 0 から 1 を創るために無意識に実践している考え方や仕事の進め方は、ビジネスパーソンが新たな価値を生み出すために参考になるのです。
この本の特徴は、著者のイリノイ工科大学デザインスクールで実際に行われた授業がもとになり、具体的に説明されていることです。図や写真も随所に挿まれていてイメージしやすいです。筆者が携わった事例以外にも、IDEO などの世界的なデザインファームの事例が紹介されています。
章ごとの最後に、デザイナーの常識とビジネスパーソンの常識が比較されています。対照的な考え方やものごとの進め方が見られ、興味深かったです。私自身の考え方はビジネスパーソンのほうに多く当てはまり、自分の発想に刺激を与えてくれる本でした。
手元に置いておき、時間が経過したらまた読みたい本です。
書評エントリー:書評: 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 (佐宗邦威)
ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建)
この本の内容紹介は、次のように書かれています。
戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある。
大きな成功を収め、その成功を持続している企業は、戦略が流れと動きを持った 「ストーリー」 として組み立てられているという点で共通している。
戦略とは、必要に迫られて、難しい顔をしながら仕方なくつらされるものではなく、誰かに話したくてたまらなくなるような、面白い 「お話」 をつくるということなのだ。
本書では、多くの事例をもとに 「ストーリー」 という視点から、究極の競争優位をもたらす論理を解明していく。
本書で書かれていたことで、思わず人に話したくなったのは、ある競争戦略フレームでした。SP と OC という戦略概念です。
- SP (Strategic Positioning): ポジショニングの戦略。他社と違うところに自社を位置づけること。SP は、何をやり / 何をやらないかという意思決定や活動の選択
- OC (Organization Capability): 組織能力による差別化。他社には簡単に真似できない組織や仕組みとしての強みのこと。表面的には真似することができても、実際の組織内での実行レベルでは中々真似できないもの。時間とともに常に進化していく
SP が他社と違ったことを 「やる」 に対して、OC は他社と違ったものを 「持つ」 ことです。SP は短期的な戦略的意思決定で、OC は中長期での競争優位性となるものです。
SP と OC のわかりやすい例えが、レストランです。
SP (やること) はどんなメニューを提供するかです。例えば日本食なのか中華なのかイタリアンか、さらには日本食でも高級 / 庶民的、あるいは伝統的な料理か新しい料理かの、他店との違い (ポジショニング) です。
一方の OC (持つこと) は、腕前のよい料理人やシェフを雇い、どんな厨房や、料理の注文 / 調理 / 提供する仕組みを持つか、あるいは仕入先やどんな素材を持っておくかです。
なぜ、あの会社は儲かるのか? - ビジネスモデル編 (山田英夫)
様々な企業のビジネスモデルが紹介され、興味深く読めます。
他の類似本と違い、単にビジネスモデルを紹介しているだけで終わりません。ビジネスモデルの事例紹介 → 仕組みの一般化 → 他業界にある同様のモデル紹介となっています。具体化 → 抽象化と縦に考え、抽象化 → (他の) 具体化と横展開されているのです。
同じビジネスモデルでも違う業界に適用されているので、そのモデルの本質的な仕組みを理解できます。書かれている内容がきっかけや刺激になり、そのビジネスモデルを自分の業界や、自分の仕事に活かせないかと考えてみると発想が広がるでしょう。
この本の関連エントリーです。本書で取り上げられていたビジネスモデルのうち、最も印象的だったコマツ建機の KOMTRAX (コムトラックス) について取り上げています。
KOMTRAX:コマツ建機の美しいビジネスモデル
脳には妙なクセがある (池谷裕二)
脳の最先端の研究結果がわかりやすく紹介されています。著者は脳研究者である池谷裕二氏です。
様々な脳の 「クセ」 が書かれています。
印象的だったのは、脳と身体の関係でした。 例えば、楽しいという気持ちと笑顔の関係です。楽しいから笑うという順番が一般的な理解です。
しかし、研究からわかってきたのは、笑顔をつくるから楽しいという逆の順番でした。
その研究によると、笑顔の表情をつくるとドーパミン系の神経活動が変化をするとのことでした。ドーパミンは快楽に関係した神経伝達物質なので、笑顔をつくることで楽しくなるのです。
笑顔の他にも、恐怖や嫌悪の表情をすることで、脳には実際に恐怖/嫌悪の感情が生まれるとのことでした。
顔の表情だけでなく、姿勢にも当てはまるようです。
本書にある実験が紹介されていました。姿勢が自己評価に与える影響を調べるため、背筋を伸ばした姿勢と背中を丸めた姿勢で、被験者に自己評価をしてもらったところ、姿勢を正したほうが自信を持てる結果が出たとのことでした。
身体行動が先で、それに伴う感情が形成される脳の働きは、興味深い話です。
本書では、他に以下のようなトピックが扱われています。
- 「行きつけの店」 にしか通わない理由
- 何事も始めたら 「半分」 は終わったもの?
- 脳はなぜか 「数値」 が苦手
- 「心の痛み」 も 「体の痛み」 も感じるのは同じ部位
- 歳をとると、より幸せを感じるようになる理由
- 「今日はツイテる!?」 は思い込みではなかった!
- 脳は 「自分をできるヤツ」 だと思い込んでいる