2013/02/10

書籍「究極の身体」がおもしろい

学生の時にハマっていたのがカポエイラでした。ブラジルで生まれた、格闘技とダンスの両方の要素を持ってるカポエィラ。こんな感じという動画があるので、興味のある方はぜひ。


Best Capoeira Brazil (Extended Version)|YouTube

カポエイラがきっかけで考えるようになったのが、身体の構造だったり動かし方。始めはどうすればうまくなるのかを考えていたのが、次第に身体構造そのものに関心が移っていきました。で、当時の結論として身体をいかにうまく動かすか/コントロールするかのポイントは、①肩甲骨と股関節を柔らかくし可動域を高めること、②自分の身体の「重心」と「軸」を意識すること。これは今も変わらずの考え方で、あらゆるスポーツや身体運動に共通するものと思っています。

学生時代は今よりも時間もあったこともあり、身体動作系の本はそれなりに読んだりもしていました。得た知識は大学の研究になんら関係はありませんでしたが、純粋に趣味というか好奇心が満たされる感じで楽しかった思い出です。

■人間の身体が持つ「魚類構造」と「四足動物構造」

最近、ふとまた身体系の本が読みたくなり手に取ったのが「究極の身体」。なかなかおもしろかったです。身体構造や運動のメカニズムについて独自理論が展開され、わかりやすく書かれていました。新しい発見もいくつかあり好奇心が刺激される内容だったんですよね。

まずは本のタイトルでもある「究極の身体」の定義について。本書では、「人体の中で眠っている四足動物、あるいは魚類の構造までをも見事に利用しきることで生まれる身体」としています。

いきなり四足動物とか魚類構造とか出てきて、??だと思います。この考え方は、人間の進化プロセスから展開されているものです。脊椎動物の進化は魚類⇒爬虫類⇒哺乳類⇒人間、と経てきており、人間の身体には魚類や四足動物(爬虫類・哺乳類)の構造が残っているそう。しかし、普通の人には意識されておらず、魚類や四足動物の身体の使い方がされていない。これは著者からするとせっかく持っている身体の潜在的な仕組みを有効活用できていない。故に、レギュラーの身体に対して究極の身体は、「人体の中で眠っている魚類・四足動物の構造をも利用しきることで生まれる身体」なのです。

著者が強調しているのは、「人間の身体運動の原点は魚類にある」というもの。一例として、生まれてまだ間もない人間の赤ちゃんのハイハイの動きと、魚の泳ぎ方の仕組みには共通点が見られると書かれていました。上から見ると同じ仕組みで動いているのがわかる、と。

魚類運動=脊椎を使った動作、四足動物の運動=脊椎の体幹主導動作+4本足主導の動作、の両方を使えるのが本来の人間の身体構造で、それを実現できるのが究極の身体なのです。

■これまでの認識:二足歩行進化の代償として人間は身体能力が退化した

究極の身体の背景にある著者の考え方は、魚類や四足動物の両方を受け継いだ人類は進化論上究極の身体構造を持っていること。これ、今ままでの自分の考えとは異なる捉え方なんですよね。これまでの自分の認識は、人間は進化とともに身体能力は退化したと考えていました。

ヒトの身体構造の特徴の1つが二足歩行です。四本足で動く他の哺乳類や爬虫類と比べて大きな違い。自分の身体を四本足で支え動くのに対して、半分の二本にしたおかげでヒトは両腕の自由を手に入れた。

このメリットは計り知れません。採集や狩猟による食料の確保・住処をつくり・衣服により体温を一定範囲に保てるという衣食住へのメリット、火をおこす、道具の発明、文字も書けるようになり、・・、狩猟社会という他の動物とあまり変わらない社会形態から、農耕文化が起こり、産業革命による工業化、情報化革命と、他のどんな動物も成し得なかった高度な文明に発達したのですから。

一方で、二足歩行のデメリットもあります。四本の脚で自重を支えていたのが二本になったことで不安定な身体構造になりました。ちょっとした段差や何もない所で転んでケガをするとか、人間くらいのもの。歩行や走行の動作スピード、持久力、パワー、等々は他の動物に比べて見劣りする人間。文明の発達の影で失われたのが身体能力。二足歩行進化による必然だと思っていました。以上がこれまでの自分の認識。

でも、高岡氏は言います。魚類や四足動物の両方を受け継いだ人類は進化論上は究極の身体構造を持っている、と。ただし、究極の身体を持っているにもかかわらず、現在の人類の多くはその身体資源を使いきれていないそうです。

★  ★  ★

本書には、「魚類構造」と「四足動物構造」の話以外にもポイントはいくつも書かれています。
  • 身体の各パーツを分解し、達人はそれぞれ個別に動かし分けているという身体分化
  • 重心とセンター(軸)。センターとは、身体の重力線とほぼ一致するところを通る身体意識。センター意識が構築されると潜在的に、常時重力線の意識が存在することになる
  • 筋肉ではなく骨で立つ
  • 出足に体重をかけるのはつま先ではなく踵から。踵で踏み出す感覚。このほうが無駄な動き(体重移動)は少ない
  • 究極の身体に不可欠なのは重心を意識すること。そのために脱力が必要。脱力を立つという動作例でいうと、立つためのギリギリの筋出力で立つこと
  • 究極の立ち方は吊り人形のように頭部の糸を持って吊り上げ、そこからゆっくり下ろして足を接地させたような立ち方(緩重垂立)。体重を支えるギリギリのところまで力を抜いたプラプラの状態
等々。理論としてはどれもおもしろいものばかりですが、究極の身体を手に入れるためにはハードルが多く、しかも高いというのが率直な感想でもあります。

まずはできるところから取り入れてみようと思っています。重力と重心・軸を意識すること、脱力、踵からの体重移動、腕は肩甲骨から動かす意識、脚は股関節や脊椎とつながる大腰筋(インナーマッスルの1つ)から踏み出すことを意識する、など。

身体動作とか身体のメカニズム・構造に興味のある方は、おもしろいオススメの本です。


究極の身体 (講談社プラスアルファ文庫)
高岡 英夫
講談社
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多田 翼 (書いた人)