投稿日 2022/11/23

ギークプラスの物流請負サービス。よくよく見ると 「わかりみ」 な戦略

出典: PR TIMES

今回のテーマは戦略です。

おもしろいと思ったロボットメーカーの新サービスを取り上げ、戦略に学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • ギークプラスの物流請負サービス
  • ロボットメーカーがなぜサービスを請け負うのか?
  • 本丸への布石
  • 奥行きのあるストーリーを持たせよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ギークプラスの物流請負サービス


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

中国系ロボットメーカー日本法人のギークプラス (東京・渋谷) は、電子商取引 (EC) 事業者向けにロボットを使った物流サービスを始める。相模原市に物流拠点を設け、ロボット80台を導入した。荷物の預かりから出荷まで一括して請け負う。

物流現場でロボット活用の取り組みを進め、市場拡大につなげる。

サービスの中身


ギークプラスの物流請負サービスはどのようなものかを、記事から見てみましょう。

ギークプラスは 「棚搬送 (たなはんそう) 型」 と呼ばれるロボットの国内最大手。

家庭向けの自動掃除機のような形状をしたロボットが、出荷する荷物がある棚の下に潜り込み、棚を持ち上げて作業員の元まで運ぶ。作業員は必要な荷物を集めるために倉庫内を歩き回る必要がなく、人が作業を行う場合と比較して3 ~ 5倍の荷物をさばくことができる。

これにより、EC 事業者側は、注文を受けてから発送するまでの時間を短くできる。出荷スピードが上がれば顧客満足度が向上し、売り上げを伸ばす効果も期待できる。セール時などの繁忙期に一時的に荷物を預けるといった利用も可能で、急激な物流の増加にも対応しやすくなる。人件費削減などにもつながる。
出典: PR TIMES

ギークプラスの狙い


ロボットメーカーであるギークプラスがなぜ物流サービスを請け負うのか、それも物流拠点を設けてまで取り組む狙いはどこにあるのでしょうか?

結論から一言で表現すれば、物流請負サービスはお客さんに物流ロボットを導入してもらう 「布石」 です。自社の物流向けロボットを買ってもらうための仕掛けです。

先ほどの引用した記事では、引用箇所とは別のところでギークプラス社長の 「小規模事業者でもロボットを気軽に試せる場として開設した。活用する企業の幅を広げたい」 というコメントがありました。

新しく始める物流請負サービスは、物流向けロボットを試す機会の場として提供しているわけです。

小規模事業者でも試せる


ギークプラスの物流請負サービスは、小規模な事業者でも利用できるようにハードルを下げています。

先ほどの日経の記事によれば、

  • 配送料を含めて出荷1件300円から取り扱う。EC 事業者は最短1日、荷物1点からサービスを利用できる
  • 初期費用がかからない作業数量に応じた月額料金でロボットを貸し出すサービスも開始

また、物流請負サービスにおいてどれくらいの作業量だったかをサービス利用者に報告もするとのことです。物流ロボットを使ったことによる作業効率、例えば1時間あたりの作業数量を示しています。

報告の意図は、中小規模の事業者はロボットの購入費用がまかなえず導入に踏み切れないケースが多いという背景があり、意思決定につながるロボット導入の効果を実感してもらうことです。

まとめると、小規模事業者でも以下のことで、ロボット導入をするハードルを下げているのです。

  • 小規模でも使いやすいサービス価格
  • 初期費用のかからない物流ロボットの貸し出し
  • ロボット導入の効果を報告


学べること


では、ギークプラスの物流請負サービスから学べることを掘り下げていきましょう。

一言で言えば、学びは 「商品やサービス提供に奥行きのあるストーリーを持たせよう」 です。

 「奥行きのある」 と表現したのは、一見すると 「?」 と疑問に思えても、奥には合理的なストーリーがあるという意図です。

これをギークプラスの事例に当てはめて見ていきます。

一見すると 「なぜ?」 な打ち手


ロボットメーカーであるギークプラスが物流拠点を新設してまで物流請負サービスをやるのは、一見すると 「なぜ?」 となります。

もちろんどちらも物流に関するビジネスですが、ロボットを開発し製造する能力と、サービスを提供する能力は似て非なるものです。

布石にしてストーリーを描こう


しかし全体像をより広く捉え、物流請負サービスはその先のロボット導入の 「布石」 と見れば、理に適っています。物流請負サービスでは大きく儲からなくてもいいという判断や設計にできます。

小規模事業者でもサービスを利用しやすくするために出荷1個を300円から受けるのも、ここだけを切り取れば手間だけがかかるように見えます。しかし、伏線としてならストーリーがつながるなら、筋のいい 「わかりみ」 な戦略になります

打ち手や戦略を 「点」 として捉えずに、「線」 でつなげて描くことが大事です。


まとめ


今回は、ロボットメーカーのギークプラスが新しく始めた物流請負サービスを取り上げ、戦略に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 奥行きのあるストーリーを持たせる
  • 一見すると 「なぜ?」 な打ち手でも、全体を見て理に適っていれば筋のいい 「わかりみ」 な戦略になる
  • 全体像を広く取り 「点」 ではなく 「線」 でつなげて奥行きのあるストーリーを描いてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。