投稿日 2022/11/04

くすりの福太郎の売場づくりに学ぶ、「データだけマーケティング」 の限界と超える方法


今回のテーマはデータの限界をどうやって超えるかです。「データだけマーケティング」 の限界と超える方法という話です。

おもしろいと思ったドラッグストアの売場づくりから、マーケティングに学べることを掘り下げていきます。

✓ この記事でわかること
  • くすりの福太郎の売場づくり
  • 「データだけでは平均化し、差別化できない」 
  • 「データだけマーケティング」 の限界と、超える方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

くすりの福太郎の店頭販促


ご紹介したいのはドラッグストアの 「くすりの福太郎」 が展開している売場づくりです。

ツルハホールディングス (HD) 傘下のくすりの福太郎 (千葉県鎌ケ谷市) は、同社最大規模のドラッグストア 「薬局くすりの福太郎・千葉ニュータウン店」 (千葉県印西市) を開業した。

売り場面積は約1500平方メートル、商品数は約2万点にも上る。従来店舗より食品の点数を約4倍に増やし、スーパーやホームセンターなどの競合に対抗する。

まず目に飛び込んでくるのが、ユニークな大型の店頭販促 (POP) だ。浴室向けの掃除用品の棚の上に 「簡単!置くだけ - 浴室まるごと防カビ」 と、商品よりも大きいサイズの白抜き文字が躍る。駅前や都心部の狭小店 (きょうしょうてん) が多い、くすりの福太郎ではなかなかお目にかかれない光景だ。「大型店のため遠方からでも、商品に目が向くようにした」 と話すのは売り場担当の竹岡喜毅さんだ。

現場の洞察からの売場づくり


売場担当の方が店頭販促への着想を得ているのは現場です。

竹岡さんは毎日店頭に立つなかで、顧客を丁寧に観察。年齢層や家族構成、利用場面などを把握する。

POS (販売時点情報管理) データや会員カードの顧客情報も分析するが、「データはすでに置いている商品の販売実績。店頭に並んでいない商品を見いだすには、自分の目で売り場をみることが重要」 という。

同店の来店客は、東京方面へ通勤する家族層が多いという。効率よく買い物を済ませたいという需要を受けて、日用品や大衆薬のほかに唐揚げやたこ焼きなどの冷凍食品を拡充。さらに、子どもに人気の魚肉ソーセージや、仕事帰りに自分へのご褒美として購入する 「ハーゲンダッツ」 も特設売り場を設置した。

データだけでは差別化できない


注目したいのは POS データや会員データの分析だけではなく、現場を見ての洞察から販促などの施策につなげていることです。

逆に言えば、POS などのデータだけでは顧客ニーズや売れ筋の商品が 「なぜ売れているのかの顧客心理や購買行動」 は読みきれないということです。

先ほど引用した記事には 「POS データをみて商品を決めれば、平均的な売り場は作れるが、店舗過剰の時代には他社と差異化できず、埋もれてしまう」 というコメントがありました。


学べること


くすりの福太郎の売場づくりから学べるのはデータの限界と、その限界をどうやって超えていくかです。

データの限界


データは決して万能ではありません。

✓ データの限界
  • あくまで過去のこと (未来は予測しなければいけない) 
  • データ収集範囲は一部分にすぎない

後者の収集範囲について補足をすると、POS データを例で言えばなぜその商品をお客さんが買ったかはデータには入っていません。POS データからわかるのはいつ・どこで (どの店で) ・何個売れたかです。

会員情報と POS データが紐付いていれば 「誰が」 もわかります。しかしお客さんはどういう気持ちで買ったのかという顧客心理は POS データにはないわけです。また、POS データはお店で売っている商品の販売実績なので、お店で扱っていない商品のことはわかりません。

限界を超える方法


収集されたデータの外側、データという過去から未来を伺い知るためには、オフィスでただデータとにらめっこしているだけではデータの限界を超えられません。

大事なのは自ら現場に出てお客さんを観察したり、時には対話をすることです。

データを見ることは誰もがやっています。しかしデータだけでわからないことがあり、データを見ているだけでは他人や他社との差異化にはつながりません。マーケティングでも同様です。「データだけマーケティング」 には限界があるわけです。

データに加えて現場に足を運び観察から顧客心理を汲み取り、顧客行動とつなげてみる。こうした一見すると泥臭いアプローチだからこそ得られる洞察があります。

限界を超えるためにはこうした洞察が必要なのです。


まとめ


今回は 「くすりの福太郎」 の売場づくりを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ データの限界を超える方法
  • データは過去のことであり、収集範囲は一部分にすぎないという限界がある
  • 限界を超えるためには自ら現場に出てお客さんを観察し、対話をすることが大事
  • 現場での顧客心理と顧客行動の理解から洞察を得て、打ち手につなげよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。