#マーケティング #古事記と日本書紀 #歴史
多くの人にとって、日本の神話が書かれた 「古事記」 や 「日本書紀」 は、遠い昔の空想の物語に過ぎないかもしれません。しかし、神話の中に書かれた内容は、今でも私たちの生活やビジネスに深く影響を与えています。
では、古事記や日本書紀を学ぶことで、何が得られるのでしょうか?そして、神話がどのようにして現代のビジネスに活かせるのでしょうか?
今回は、神話が現代のビジネスにいかに役立たせることができるを考察します。
日本の神話
古事記と日本書紀は、日本の神話や古代史を記した貴重な歴史文献です。
古事記
古事記は、第40代・天武天皇が作ることを命じて編纂されました。712年に完成し、第43代・元明天皇に献上されました。
古事記は3つの巻 (まき) に分かれていて、最初は天地 (空と地面) が生まれるところから始まります。その後、日本の国がどのようにできたか、初代天皇である神武天皇から第33代推古天皇までの系譜が記されています。
古事記の中には、天照大神 (アマテラスオオミカミ) という太陽の神様や、素戔嗚尊 (スサノオ) という海の神様など、多くの神々の物語が登場します。神話を通して、日本の古代の人々がどのように世界を見ていたかを知ることができます。
日本書紀
日本書紀は、古事記より8年後の720年に完成した歴史書です。第44代・元正天皇に献上されました。
日本書紀は、古事記と同じく第40代・天武天皇が編纂を命じました。舎人親王 (とねりしんのう) を中心とした学者たちによって編纂された日本書紀は、日本の歴史を中国などの外国に対して示すことを目的としていました。
日本書紀は、30巻からなり、古事記よりも多くの神話や歴史の出来事が書かれています。日本書紀は、日本だけでなく中国や朝鮮半島との関係についても詳しく述べられています。当時の日本がどのように他の国と交流していたかをわかります。
古事記と日本書紀が作られた狙い
古事記は日本の神話や最初の天皇についての物語が中心で、日本書紀はそれをもっと詳しく、正式な歴史書としてまとめたものです。
古事記も日本書紀も、天皇家の祖先と神話が結びついています。天照大神が天皇の祖先であることが強調され、天皇は神の子孫であり、初代天皇である神武天皇から始まる天皇の系譜が記されています。
古事記と日本書紀はいずれも天皇の正統性を示す意図があります。大和朝廷が自らの支配や皇位継承の方法 (例: まだ幼い孫に継がせる) を正当化し、国内外での権威性を高め、日本国内の統一を図るために編纂されたと考えられます。
想定する読み手の違い
古事記と日本書紀は、想定する読者に違いがあります。これをマーケティングっぽく言えば、ターゲット顧客が明確に異なります。古事記は国内向け、日本書紀は海外 (主に中国) 向けです。
古事記は日本語の口承を漢字で表現されています。漢字を使って日本語の音を表す 「万葉仮名」 が使われており、読みやすさや物語性を重視しています。
一方の日本書紀は、漢文体で書かれています。中国の歴史書の形式に倣ったもので、現代で言えば、自国語ではなく英語のような国際語が使われた外交文書だということです。日本書紀は政治的・外交的に利用するために編纂されたとされ、当時の国際社会において日本の地位を示そうとしています。
古事記と日本書紀の2つが存在するというのは、マーケティングの観点で言えば、ターゲット顧客 (who) が異なるので、伝えたいメッセージ (what) は同じでも、コンテンツと伝え方 (how) は分けるということです。
このように捉えれば、古事記と日本書紀は目的に合ったマーケティング的にも適切なアプローチをとっています。
神話を学ぶ意義
国の神話には、書かれた当時のその国の文化、信仰、価値観、人々の生活習慣や風習などが含まれています。
では、現代において神話、特に自国である日本の古事記と日本書紀をあらためて学ぶことの意義はどこにあるのでしょうか?
文化や価値観の理解
神話は、その国や地域の文化、信仰、価値観を色濃く反映しています。神話を学ぶことで、現代の文化や社会の成り立ちを理解する手がかりになります。
物語を通じて、善悪の区別、愛情、友情、勇気、使命感、責任感、畏怖の対象といった、何を大切にしているかの価値観を知ることができます。
道徳や倫理的な教訓
日本の古事記や日本書紀にかぎらず、多くの神話には道徳的な教訓や倫理的なメッセージが含まれています。
現代社会においても、これらの教訓は人々の行動や価値観を形成する土台のようになっています。価値観や人間関係のあり方について、普遍的な視点を提供してくれます。
歴史的視点の獲得
神話は、その国や地域の歴史的出来事を背景に持っています。
神話を通じて過去に起こったこと、人々が何を考えたのかを知ることで、現代の社会や政治の動向を理解するための示唆が得られます。大局的な歴史的視点から現在の状況を考察するときの参考になります。
アイデンティティの形成
神話の役割は、その国や民族のアイデンティティの形成に影響を及ぼしてます。
現在において神話を学ぶことで、自分自身のルーツやアイデンティティに対する理解を深めることができます。
想像力と創造力へのインスピレーション
神話は、神々や英雄たちの冒険や奇跡を描いており、豊かな想像力を養う学習教材にもなります。
芸術や文学の分野では、神話からインスピレーションを得た作品が数多く存在しています。神話のストーリーに触れることで、現代における創造活動や問題解決の際に、新しい視点や発想を得ることができます。
神話を学ぶ意義のビジネスへの当てはめ
神話とはその国の原点にあたります。ビジネスに当てはめれば会社の創業時の話、今の主力商品が開発された当時の知られざるエピソードだということです。
神話が国の文化や信仰、価値観、人々の生活習慣を映し出すように、企業においても創業時のエピソードや製品開発のストーリーは、会社の文化やビジョン、価値観を体現しているといえます。
この観点から、神話を学んで得られる効能や意義を、ビジネスになぞらえて考えてみましょう。
企業文化の理解と継承
神話が国や地域の文化の根っこを形づくるように、企業の創業時のストーリーや製品開発の歴史は、その企業文化に反映されるものです。
創業当時を知らない従業員がこれらのエピソードを学ぶことで、企業の原点や創業者の思い、会社が大切にしてきた価値観を学べます。従業員一人ひとりが企業のミッションやビジョンに共感し、日常の業務においても次第に経営理念が体現された行動をとるようになるでしょう。このようにして、企業文化が継承されていきます。
会社への愛着心の向上
企業の創業エピソードや製品開発の歴史を紐解くことで、組織内のコミュニケーションが活性化します。
社内での共通認識が生まれ、異なる部門や世代間のコミュニケーションを円滑にする役割を果たします。また、企業の歴史や伝統を理解することで、従業員同士の共感や連帯感が生まれ、組織全体の士気向上につながります。
経営や事業判断のよりどころ
神話が人々の価値観や信念に影響を与えるように、企業の創業時や製品開発時の経験も、経営判断における指針となります。
過去に成功した判断や失敗から得た教訓を知ることで、今現在の経営や事業の判断に活かせます。
長期的視点の獲得
神話が世代を超えて語り継がれるように、企業の創業時や今の主力商品の誕生のエピソードも、企業の歴史として長期的な視点を持つことを促します。
ビジネスの世界では、短期的な成果を追求することが求められがちですが、過去の歴史を学ぶことで、長期的な視野に立った事業や仕事に取り組む重要性を再認識できます。
アイデアへの着想
会社の過去の成功体験や挑戦の歴史から、今のビジネス課題に対する解決策や新たなアイデアのヒントになるかもしれません。
創業当時の困難を乗り越えた話や、ヒット商品が生まれた背景を知ることで、現在のビジネス課題に立ち向かう際の参考になるとともに、原点回帰をすることで、新たなアイデアを生み出す着想になります。
ブランドストーリーの強化
ビジネスにおいて、ブランドは商品やサービスがお客さんとの感情的なつながりを築く役割を果たします。
神話が人々に長く語り継がれるように、会社の創業や商品の歴史も、ブランドストーリーとして社内だけではなく外部のお客さんにも伝えることで、深い感情的な共感を呼び起こします。
会社に固有のストーリーや歴史はブランドの独自性をつくり、競合他社との違いをつくる源泉となります。
以上のように、神話を学ぶことと同様に、企業の創業エピソードや商品・サービスの歴史を知ることは、企業文化の理解、アイデア着想、ブランドストーリーの強化など、ビジネスにおいても多くの恩恵があります。
まとめ
今回は神話 (特に古事記と日本書紀) を取り上げ、ビジネスへの示唆を考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 文化や価値観の理解
- 道徳や倫理的な教訓の洞察
- 歴史的視点の獲得
- アイデンティティの形成
- 想像力と創造力へのインスピレーション
✓ 神話を学ぶ意義のビジネスへの当てはめ
- 企業文化の理解と継承
- 会社への愛着心の向上
- 経営や事業への判断指針の構築
- 長期的視点の獲得
- アイデアへの着想
- ブランドストーリーの強化
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