#マーケティング #営業 #本
営業において、どんなに時代が移り変わっても 「人を動かす本質」 はそう大きく変わりません。
今回は、1964年に出版されながら、今なお営業のバイブルと呼ばれる 「私はどうして販売外交に成功したか (F ベトガー, 土屋健, 猪谷千春) 」 という本をご紹介します。
著者の営業パーソンとしての失敗と成功のリアルな体験談から、営業という仕事の基本原則について、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
本書の概要
この本は、アメリカの保険会社の外交員としてトップクラスの成績を収めた自身の体験をもとに、営業で成功するための27の原則を解説したものです。
著者はアメリカ大リーグの元プロ野球選手であったフランク・ベトガーです。
初版は1964年と、60年以上も前の昔の本です。しかし営業への普遍的なテーマを扱っているため、現代の私たちが読んでも十分に活用できる内容になっています。
著者のベトガーは、プロ野球選手時代に 「のろま」 というレッテルを貼られて解雇された過去があります。一時は失意のどん底で自暴自棄の生活を送っていましたが、そこから立ち直った経験を活かし、営業の成功には 「ひたむきに行動する姿勢」 だという考えに至りました。
ベドガーは自分自身の体当たりの試行錯誤を余すところなく披露してくれます。営業に関わるあらゆる人が身につけるべき考え方や手法を27の項目から体系立てて具体的に示します。
本書全体の目次は27章にわたり、次のようなトピックが展開されます。
営業の基本原則
自分の仕事に情熱を持つ、できるだけ多くの人に会うといった営業での基本的な姿勢を学べる。
ベトガー自身が、わずか10週間でかつての10か月分を上回る成績を上げたというエピソードなどがあり、行動量がいかに大切かを実感できるコミュニケーション術
質問話法や聞き上手になるための秘訣、信頼を築くために大事なことが書かれている。普段の会話にも応用できる営業実務のテクニック
保険セールスパーソンとしての面会方法や顧客からの紹介獲得、契約までの手順など、営業の実務に役立つ具体策。時代の違いはあるものの、現在でも応用できる自己鍛錬と心構え
失敗を歓迎する姿勢や恐怖を克服する方法など、ハウツーではなく、人としての成長を伴う内容
これらのテーマが、著者の実体験を描きながら展開されます。
営業で大事なポイント
ではここからの後半のパートでは、私がこの本を読んで印象に残ったことをご紹介します。
熱意の重要性
本書で繰り返し述べられているのが 「熱意 (情熱) 」 についてです。
人は自分が思っている以上に、自分のやる気や熱意は周りの人たちに伝わるものです。本書では熱意が営業でも恐怖心や失敗を乗り越える原動力になると説きます。
仕事での営業成績が思わしくないときなど、やや根性論めいて聞こえるかもしれない 「仕事への熱意」 が効果を発揮するのです。
行動量が成果を左右する
情熱に加えて、もうひとつ本書で強調されているのは行動量です。
著者は長年にわたって営業活動において 「毎日4 ~ 5人に会う」 という行動目標を実践し続けました。
そんなに多くの人に会う時間はないと最初は思うかもしれません。しかし著者の体験談を読むと、まずは会う人のリスト化、毎日の行動予定の具体化、こまめな記録と振り返りといった方法を愚直に続けることが、急がば回れのように成果につながるルートだとわかります。
営業とは、最終的にはどれだけ多くの見込み客と会って話をするかで勝負が決まります。もちろん質の高いコミュニケーションは大切ですが、そもそも商談の量を増やさないのは、質以前の問題です。本書はそうした当たり前のことをあらためて認識させてくれます。
対人コミュニケーション
熱意と行動量の大切さに加えて、次に求められるのが見込み客や既存顧客とどう話すかです。
本書では、営業でのコミュニケーションのために、次のポイントを強調しています。
質問の力
できる限り相手に多く話してもらうことで、相手自身が自分の提案を受け入れやすくなる。
そのためには、あらかじめ要領を得た質問を用意し、相手の回答からニーズを引き出す。こちらが一方的に商品のことを話し続けるのではなく、相手に質問を投げかけ考えてもらい、相手が自然に 「たしかに必要かもしれない」 と思う方向へ自然と導く聞き上手になる
相づちやうなずきで相手を立てながら、相手に 「この人は自分の話を本当に聞いてくれている」 と感じてもらう。
人は自分のことを受け止めてくれる相手に対して好感を抱くもの。本書ではしゃべりすぎるセールスマンは失敗するとし、聞く力こそ営業の武器であると説く相手本位で話す
会話において 「あなたには、こういうメリットがあります」 のように、会話の主語を自分ではなく 「あなた (お客さんである相手) 」 に置き換える。伝わり方がぐっと変わる競合他社の悪口を言わない
競合他社の評価を下げるようなことは言わない。それよりも 「他社さんも良い商品を出していると聞きます」 や 「 (すでに導入している競合商品・サービスについて) それは良い選択だと思います」 と誠実に伝える。
相手との信頼関係が築かれたうえで初めて、提案が素直に受け取ってもらえ土壌ができる
誠実な営業からの信頼構築
本書を通じて印象的なのは、著者が常に 「顧客の利益」 を強く意識している姿勢です。
相手の利益を優先することのほうが、結果的にめぐりめぐって自分の利益にもなるという考え方です。これは、お客さんの成功を実現することを目指す 「カスタマーサクセス」 の概念と共通します。
うまく話そうとか、なんとか説得しようとするよりも、誠実な姿勢で 「お客さんの相手の役に立ちたい」 、「相手の状況をしっかりと理解して、そのうえで少しでも支援したい」 と思っているかどうかが重要です。
著者は強引な押し売りよりも、必要ならば競合商品を勧める態度さえ見せました。こうした真摯な姿勢がお客さんからの信用を獲得し、あなたのところに頼みたいと言ってもらえるような信頼になるわけです。
ビジネスのシーンでは、どうしても数字や短期成果に注目しがちです。しかし、最後にものをいうのは 「人間同士のつながり」 です。
熱意と誠意をもって多くの人に会い、その人にとって本当に必要なことを見極め、行動に移せるかどうか。著者フランク・ベトガーは、身をもって示してくれています。
本書で示される営業パーソン像は、誰もが理想とする姿です。熱意と行動量を高く持ちつつ、相手への思いやりや敬意を忘れない――。そんな営業を地道につづけることによって、長期的な信頼が得られるようになるのだと実感できます。
書籍 「私はどうして販売外交に成功したか」 は、半世紀以上前の名著ながら、今読んでも色あせない営業のエッセンスが書かれています。
まとめ
今回は 「私はどうして販売外交に成功したか (F ベトガー, 土屋健, 猪谷千春) 」 という本を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 1964年出版の 「私はどうして販売外交に成功したか」 は、元プロ野球選手のフランク・ベトガーが保険の営業の成功法則を実体験から解説した古典的名著
- 営業成功の鍵は 「熱意」 と 「行動量」 。情熱を持って仕事に取り組み、目標に向けた愚直な行動を続ける
- 質問と傾聴が営業の基本。相手本位のコミュニケーションを心がけ、相手に多く話してもらい、ニーズを引き出すことで提案が受け入れられやすくなる
- 信頼構築のために顧客の利益を最優先に考える。決して押し売りをせず、時には競合商品を勧めるくらいの誠実さが長期的な信頼醸成につながる
- 時代を超えて営業の本質は変わらない。数字や短期成果より 「人間同士のつながり」 を大切にする姿勢が成功をもたらす
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