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このブログでは、訪問いただいた方に役に立つと思ってもらえるような本を紹介しています。読んだ本の書評を書いたり、エントリーの参考情報として本の内容を引用しています。
今回のエントリーでは、2017年6月の1ヶ月でクリックが多かった本をご紹介します (5冊) 。クリック数の多かった順番で並んでいます。
WHY から始めよ! - インスパイア型リーダーはここが違う (サイモン・シネック)
TED で 優れたリーダーはどうやって行動を促すか をプレゼンしたサイモン・シネックの著書です。
本書で紹介されているアイデアを一言で表現すると、「人が動かされるのは、何を (What) ではなく、なぜ (Why) である」 です。「なぜ」 は、自分の動機やビジョン、理念です。自分が信じていることを語り、共感が生まれれば人々を惹きつけることができるという考え方です。
本書ではゴールデンサークルというフレームが紹介されています。中心から Why, How, What の三重の円です。
ポイントはこの順番です。著者は、一般的にはゴールデンサークルの外側から内側に向けて考えると言います。What → How → Why の順番です。しかし優れたリーダーは逆で、Why → How → Whatの順で伝えます。
本の中で、具体例として Apple が取り上げられています。iPhone や Mac を what からではなく、why から始まるメッセージがあったと著者のサイモンは説明します。Apple の why は 「世界を変えること」 であり、「Think different に価値がある」 です。
関連のエントリーはこちらです。
Why からはじまるゴールデンサークル:シンプルかつ応用度の高い思考アイデア
How Google Works - 私たちの働き方とマネジメント (エリック・シュミット / ジョナサン・ローゼンバーグ / アラン・イーグル / ラリー・ペイジ)
グーグルの組織論や人という観点から、グーグルがどのようにマネジメントをしているかが紹介されています。この本の内容を簡単に言うと、グーグルが求める人材である 「スマート・クリエイティブ」 をいかに大切にしているか、彼ら彼女らが持つ能力を最大限に発揮するためにどういう環境や仕組みをつくり上げてきたのかです。
グーグルの企業文化、採用を非常に重視していること、人事や組織のあり方、スマートクリエティブに自由と権限を与え、絶え間ないイノベーションをいかに実現するかが書かれています。
印象的だったのは以下でした。
- リーダーシップ:グーグルが求めるリーダーシップは、自らの職務あるいは組織でリーダーシップを発揮した経験のほか、正式なリーダーに任命されていなくてもチームの成功に貢献しているか。正式なリーダーという立場ではなくても、リーダーシップを持って行動できるかどうか
- ラーニングアニマル:スマート・クリエイティブになるために必要なのは、常に新しいことを貪欲に学ぶこと。特に失敗をした時に、そこから何を学ぶか。単に何か学んで終わりではなく、学んだことを 「次」 に活かすことが大切。「学ぶ → 学習内容を活かして成果を出す → 学ぶ → … 」 、というサイクルを回し続ける
- プロジェクト管理:グーグルでの経験則から導かれたプロジェクト管理手法は、リソースを 「70対20対10」 に振り分けること。70をコアビジネス、20を成長プロジェクト、10を新規プロジェクト
グーグルについて、特にマネジメントやカルチャーのことをよく理解できる一冊です。
問題解決ドリル - 世界一シンプルな思考トレーニング (坂田直樹)
この本の特徴は、ビジネスにおいて、どう顧客と向き合えばよいか、自分たちは何をすればよいかが、多くの事例を通してわかりやすく書かれていることです。
本書で一貫して使われているフレームワークはシンプルです。
- 企業の強み・思い
- 生活者の本音
- 2つの重なりに問題解決を見出す
本書の表紙のベン図にあるように、自分たち企業の 「強み」 と生活者の 「本音」 が重なりをどう捉えるかがポイントです。
本書にプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが観客動員のためにどのような戦略をとったかが書かれていました。マーケティングでの顧客視点で考えさせられる内容でしたので、エントリーで書いています。
常識外れの楽天イーグルスの観客動員戦略は、顧客視点では理にかなっていた
日本人には教えなかった外国人トップの 「すごい仕事術」 (フランソワ・デュボワ)
この本は対談本です。デュポワ氏が外国人トップとして日本の企業を率いる社長それぞれに行なった、1対1のインタビューを基に書かれています。
インタビュー相手は、カルロス・ゴーン氏 (日産 CEO) 、リシャール・コラス氏 (シャネル社長) 、マリア・メルセデス・M・コラーレス氏 (スターバックス・コーヒージャパン代表取締役 CEO) など5人でした (肩書はインタビュー当時のものです) 。
デュポワ氏は、5人へのインタビューで共通して、キャリアについての定義を聞くところから始めます。日本ではキャリアという言葉は、仕事や学歴に限定され、狭い捉え方をしているという問題意識からです。
5人それぞれへの対談で興味深かったのは、人生を振り返ると点と点がつながっていること、誰に対して何に対しても好奇心を持ちオープンマインドでいること、チャレンジの大切さ、失敗をキャリアにどう活かすかでした。
あえて指摘すると、本のタイトルについてです。
タイトルにある 「すごい仕事術」 が、著者の問題意識である 「日本ではキャリアは仕事や学歴に限定されて捉えられている」 と相容れません。「キャリアは人生そのもの」 とせっかく良いことが対談で深く語られているのに、タイトルが正しく表現できていません。
関連のエントリーはこちらです。
キャリアとは仕事や学歴だけにあらず。キャリア = 道 = 人生そのもの
脳には妙なクセがある (池谷裕二)
脳の最先端の研究結果がわかりやすく紹介されています。著者は脳研究者である池谷裕二氏です。様々な脳の 「クセ」 が書かれています。
印象的だったのは、脳と身体の関係でした。
例えば、楽しいという気持ちと笑顔の関係です。楽しい → 笑うという順番が一般的な理解です。しかし、研究からわかってきたのは、笑顔をつくる → 楽しいと感じるという逆の順番でした。
その研究によると、笑顔の表情をつくるとドーパミン系の神経活動が変化をすることがわかりました。ドーパミンは快楽に関係した神経伝達物質なので、笑顔をつくると楽しくなるようです。
顔の表情だけでなく、姿勢にも当てはまるようです。本書にある実験が紹介されていました。姿勢が自己評価に与える影響を調べたものです。背筋を伸ばした姿勢と背中を丸めた姿勢で、被験者に自己評価をしてもらいました。姿勢を正したほうが自信を持てる結果が出たとのことでした。
身体行動が先で、それに伴う感情が形成されるという脳の働きは、興味深い話です。
本書では、他に以下のようなトピックが扱われています。
- 「行きつけの店」 にしか通わない理由
- 何事も始めたら 「半分」 は終わったもの?
- 脳はなぜか 「数値」 が苦手
- 「心の痛み」 も 「体の痛み」 も感じるのは同じ部位
- 歳をとると、より幸せを感じるようになる理由
- 「今日はツイてる」 は思い込みではなかった
- 脳は 「自分をできるヤツ」 だと思い込んでいる