投稿日 2012/06/17

Why からはじまるゴールデンサークル: シンプルかつ応用度の高い思考アイデア


Why からはじまる 「ゴールデンサークル」 を解説します。

✓ この記事でわかること
  • ゴールデンサークルとは何?
  • なぜ Why からはじまる?
  • ゴールデンサークルの応用例を知りたい ( → Apple の戦略、ビジネスシーンで解説)

ビジョンや目的などの 「Why からはじめるゴールデンサークル」 について、TED での動画内容からゴールデンサークルについて、Apple の戦略や仕事で応用する方法と併せて解説しています。

ゴールデンサークルは、ビジネスのみならず、プライベートでも役に立つシンプルなフレームワークです。ぜひ、この記事を参考に、お仕事で活かしてみてください。

人は 「なぜ (why) 」 に動かさせる


今まで見た TED で間違いなくベスト5に入ると思っているのが、サイモン・シネックの 優れたリーダーはどうやって行動を促すか (How great leaders inspire action) です (リンク先は日本語字幕付き TED 動画です) 。

 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」 というアイデアは、タイトル通りリーダーシップにも使えます。それ以外にも幅広い応用ができる考え方です。

紹介されているアイデアを一言で言うと、人は 「何を (what) 」 ではなく 「なぜ (why) 」 に動かされるというものです。

 「なぜ」 というのは、自分の動機、ビジョンや理念です。自分が信じている why を語り共感が生まれれば、人々を惹きつけることができるという考え方です。


Why からはじまるゴールデンサークル


TED のプレゼンでは、「ゴールデンサークル」 というフレームが紹介されています。

ゴールデンサークルとは?


Why からはじまるゴールデンサークルは、3つの円でできています。中心から順番に why 、how 、what の3つの円です。


この図は、人は 「何を (What) 」 ではなく 「なぜ (Why) 」 に動かされることをシンプルに説明します。有用度は高いです。

TED でのプレゼンテーターのサイモンによると、普通の企業や人はゴールデンサークルの外側から内側に向けて考えると言います。What → How → Why の順番です。

しかし優れたリーダーは逆です。Why → How → What の順で考え、人々に伝えます。

Apple の 「Why から始まるストーリー」


プレゼンでは、why から始まるストーリの例として、アップルが取り上げられています。

もしアップルが iPhone や Mac を、外側の what から伝えると、次のような流れになります。

✓ もし What からだと…
  • 我々のコンピュータは素晴らしく、美しいデザインで簡単に使え、親しみやすい商品です (アップルが提供する what)
  • ひとつ買いませんか?

一方、why からストーリーを語り、Why → How → What の順番になると、次のようになります。

✓ Apple のゴールデンサークル
  • Why: 我々のすることは全て、世界を変えるという信念があります。アップルは違う考え方 (Think Different) に価値があると信じています
  • How: 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品です
  • What: こうして素晴らしいコンピュータができあがりました

はじめにアップルの why であるビジョンを伝えています。

人々はこれに共感するからこそ、アップルの商品を手に取ります。これが why からはじまるストーリーです。

なお、ゴールデンサークルについては、サイモン・シネック本人が書いた本に詳しく書かれています。


TED プレゼン動画


サイモン・シネックの TED でのプレゼン動画はこちらです。


動画を見る時間がないという方はテキストがおすすめです。プレゼン内容が文字で読めます。

参考: サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか|読む TED

3つの基準が全て当てはまる稀有なプレゼン


TED を見ていておもしろいと思う評価基準は3つあります。

✓ TED の評価基準
  • アイデアがすばらしい
  • 伝え方がうまい (プレゼンの仕方、パフォーマンス、情熱を持って語っている)
  • アイデアが自分にも役に立つ

2つめまでは、どの TED の動画も当てはまります。しかし、3つめの 「アイデアが自分にもすぐに役立つか」 は多くはありません。

今回ご紹介した 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」 というアイデアは、リーダーシップにも使え、それ以外にも幅広い応用ができます。仕事でもプライベートでも役に立つ考え方です。


Why からはじまるゴールデンサークルの応用


ゴールデンサークルのアイデアは、考えを整理する時にも使えます。日常でも使える道具です。

ここでは、ゴールデンサークルの応用例を2つご紹介します。

[応用例 1] クロネコヤマトの競争戦略


以前のエントリーで、ヤマト運輸がクロネコヤマトという宅配便ビジネスに参入した際の戦略を取り上げました。


ここ最近では最も多いアクセス数のエントリーでした。クロネコヤマトの Why → How → What 、特に why と how について書きました。

具体的には、次の通りです。

✓ クロネコヤマトのゴールデンサークル
  • Why:なぜヤマトは個人向け宅配市場に参入したのかの2つの理由
  • How:参入するためのクロネコヤマトの競争戦略
  • What:クロネコヤマトの宅急便という便利なサービス

[応用例 2] 仕事で why からはじめる


ゴールデンサークルの考え方は、仕事でも役に立っています。

仕事の応用 1: 依頼された仕事


例えば、上司から仕事を頼まれた場合です。大抵の場合は上司からは what だけを言われるのではないでしょうか。「これをやってほしい」 という指示です。

もちろん what だけの依頼内容から仕事を進められますが、一緒に why を考えると違ってきます。

Why である 「なぜやるのか」 を考えると、依頼内容の背景や目的、その仕事はどんな価値があるのか、仕事の前後関係の全体像を把握できます。何より、why が見えるとモチベーションに影響します。

また、依頼された時にその仕事をどう進めるか (how) も同時に考えます。

実施に着手する前に how を意識すれば、この情報やデータが必要で、他のチームに依頼しないといけないなど、具体的にやるべきことを洗い出すことができます。

仕事の応用 2: 会議


会議でもゴールデンサークルの考え方は使えます。会議の準備に会議設計する時に、議題 (what) だけではなく、会議目的 (why) や会議の進め方 (how) を考えておくのです。

これは自分が会議オーナーの時も、出席者として参加する場合も、両方であらかじめ考えておくといいとです。Why や how が明確になっていないと、会議の成果が期待通りのものになりません。

仕事の応用 3: お客からの情報収集


お客さんやクライアントに話を聞く場合も what だけではなく、how と why も併せて深掘りすると貴重な情報が得られます。

なお、インタビューや質問で注意したいのは、 (ゴールデンサークルの順番と逆ですが) いきなり why から聞くと相手が過剰に身構えることもあることです。

あえて what (何を) 、how (どのように) を先に聞いていき、最終的には why まで落とし込める、その人の動機や目的、やろうとしていること、ビジョンなどが見えてきます。これは日常の会話でも使えるテクニックです。


まとめ


今回は、Why からはじまるゴールデンサークルについて解説しました。

いかがでしたか?ぜひ、お仕事など、ゴールデンサークルを使ってみてください。

最後にまとめです。

Why からはじまるゴールデンサークル
  • 人は 「何を (what) 」 ではなく 「なぜ (why) 」 に動かされる
  • Why とは、自分の動機やビジョン
  • 自分が信じている Why を語り共感が生まれれば、人々を惹きつけることができる
  • Why からはじまるゴールデンサークルは、3つの円でできている。中心から順番に why 、how 、what の3つの円。優れたリーダーは、Why → How → What の順で考え、人々に伝える

Apple のゴールデンサークル
  • Why: 我々のすることは全て、世界を変えるという信念がある。アップルは違う考え方 (Think Different) に価値があると信じている
  • How: 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品
  • What: こうして素晴らしいデバイスができあがった


最後に


Why からはじめ、Why → How → What と考えるのがゴールデンサークルです。

仕事でもプライベートでも why から始めるゴールデンサークルは重宝しています。リーダーだけのアイデアにしておくのはもったいないアイデアです。


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。