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今回は、マーケティングリサーチで、定性調査についてです。
エントリー内容です。
- 定性調査のポイント
- いかにストーリーを引き出せるか
- 有意義なインタビュー調査にするためのポイント
定性調査のポイント
定性調査は、少人数の調査対象者に対して、より深く知りたいことに迫ります。
例えば、2~6人程度のグループインタビューや、1人の人へのデプスインタビュー、感情を絵やイラストで示してもらう投影法、自宅に訪問し調査対象者の普段の行動を観察する調査です。
定性調査でやることをまとめると、次の通りです。
- 事実:調査対象者の発言・表情や仕草・行動、調査対象物であれば動作や状況を事実として観察する
- 理解:調査対象者の発言や行動の背後にある気持ち、価値観を掘り下げ、対象者を深く理解する
- 解釈:得られた情報が自分たち (調査実施側) にとって何を意味するのか、プロダクトやブランドにとっての文脈で解釈する
- 結論:得られた解釈やインサイトから、自分たちは何をすればよいかに結論を出す
前半と後半で、視点が逆転します。
4つのうち、1と2の 「事実」 と 「理解」 は調査対象者が主語です。それに対して、3と4の 「解釈」 と 「結論」 は主語が調査実施者側となります。
最初に調査対象者を深く理解し、その次に、自分たちにとって何を意味するのかを見い出します。
いかにストーリーを引き出せるか
定性調査を実りある調査にするためには、調査対象者の発言や仕草などの表面的なことだけではなく、その背後にある気持ちや価値観までを深く掘り下げられるかが重要です。
インタビュー調査をしていると、調査対象者とのやりとりに、転換点が見られることがあります。調査対象者は、こちらからの質問に単に答えるだけではなく、自分のことをストーリーで語ってくれるようになります。「質問 - 応答」 から 「質問 - ストーリー」 になるのです。
私の経験上、対象者自身の言葉でストーリーを引き出せると、その人のことが深く理解できるようになります。
対象者は、始めはインタビューの対応が事務的・機械的だったものが、インタビュアーと信頼形成ができ、インタビューや質問の意図を理解し、協力してくれる態勢が見られるようになります。こちらからの質問に、自分ごと化して話してくれます。
有意義なインタビュー調査にするためのポイント
インタビューから調査対象者自身のストーリーまで引き出すためには、どのような工夫ができるでしょうか。
ここからは、私が思う、有意義なインタビュー調査にするためのポイントを解説します。
過去にインタビュー調査を企画したり実施した経験から、ポイントは以下です。5つのうち、最初の2つはインタビュー実施前、残り3つはインタビュー中に気をつけたいことです。
- 「問い」 を明確にする
- 問いに対する 「仮説」 を持つ
- ただし仮説にとらわれすぎない
- 「引っかかり」 を大切にする
- インタビューガイドにこだわりすぎない
以下、それぞれについてご説明します。
1. 「問い」 を明確にする
問いとは、調査から何を明らかにするかのリサーチ課題です。
具体的には、誰のために何を知る必要があるのかです。問いに答えることによって調査目的を達成し、問題を解決するためにどう役立つかです。
問いを明確にし、問いをインタビュー対象者への質問に落とし込みます。問いをそのまま質問にできることもあれば、インタビュー対象者の立場から、質問をわかりやすく噛み砕いた表現にするなどの配慮が必要です。
2. 問いに対する 「仮説」 を持つ
インタビューを実施する前の準備段階で、問いに対する自分なりの答えを仮説として持っておきます。
問いだけではなく、問いと仮説をセットで持つことまでを事前準備でやっておけば、インタビューやその後の分析、調査のまとめをする時に活きてきます。
以上が、インタビュー前に気をつけるポイントです。
3. ただし仮説にとらわれすぎない
ここからは、インタビュー中に私が大切にしていることです。
一つ前に仮説を持っておくことを書きました。一方で、仮説にとらわれすぎないことも大事です。
仮説とは、問いに対する仮の答えにすぎません。仮説と思い込みは紙一重です。仮説に縛られすぎると、素直な目で調査対象者の発言や振る舞いを見ることができなくなります。
インタビュー前に、仮説によって自分が問いに対してどうポジションを取るかを明確にしますが、インタビュー中は積極的に自分の仮説を壊そうとする姿勢で臨みます。
4. 「引っかかり」 を大切にする
インタビューで調査対象者が言うこと、ちょっとした仕草や表情に、何か引っかかりを覚える時があります。インタビューでは引っかかりを見逃さないよう、そして、取りこぼさないように気をつけます。
引っかかりは、例えば以下のような理由からです。
- 対象者の言っていることが矛盾している (事前アンケート内容や前後の発言に対して)
- 仮説や自分の思っていることと違う
- その場ではすぐになぜ引っかかったかわからないが、直観的に引っかかる
特に注意したいのは3つ目です。発言を聞いた時にはわずかな違和感でしかなく、なぜそう感じたのかが自分でも説明がつかないようなことです。
しかし経験上、それをメモしておき、インタビューの最後にもう一度質問するなど、インタビュー内で掘り下げておいたことが、調査からの重要な発見・示唆や結論につながることがあります。
5. インタビューガイドにこだわりすぎない
先ほど書いたように、インタビュー調査で、対象者から質問の応答だけではなく、いかにその人自身の言葉でストーリーを語ってもらえるかが、対象者の深い理解につながります。
インタビュー調査では、事前に整理した 「問い」 を質問にし、インタビューガイドで調査の台本を作っておきます。
ただし、インタビュー中は、ガイドはあくまで補助的なものとし、必ずしもガイド通りに進めなくてもよいです。杓子定規にガイドに沿うよりも、インタビューガイドに無理にこだわらなくてよいのです。
例えば、対象者からストーリーを引き出せ始めたり、自分が引っかかったことを掘り下げるために、あえてガイドから外れてインタビューをするなどです。
インタビューガイドとは、調査を円滑に進め、事前の 「問い」 に答えるためのツールであり、手段にすぎません。
ガイド通りに聞くことが目的になってしまい、調査目的を達成しないのは本末転倒です。あくまで、問いに対するより深い情報や答えを得ることを目的にすべきです。
まとめ
今回のエントリーは、定性調査のインタビュー調査について書きました。内容をまとめると以下の通りです。
定性調査でやること
- 事実:調査対象者の発言・表情やしぐさ・行動、調査対象物であれば状況を事実として観察する
- 理解:調査対象者の発言や行動の背後にある気持ち、価値観を掘り下げ、対象者を深く理解する
- 解釈:得られた情報が自分たち (調査実施側) にとって何を意味するのか、プロダクトやブランドにとっての文脈で解釈する
- 結論:得られた解釈やインサイトから、自分たちは何をすればよいかに結論を出す
有意義なインタビュー調査をするためのポイント
- 「問い」 を明確にする
- 問いに対する 「仮説」 を持つ
- ただし仮説にとらわれすぎない
- 「引っかかり」 を大切にする
- インタビューガイドにこだわりすぎない