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インサイト という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容。インサイトとは何か
- インサイトを見い出すための考え方と方法
- インサイトの活用法
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
本書はインサイトを見つけ出し、マーケティング活動に活用する方法を解説する。
人は論理的に頭で考えて商品を買うのではなく、直感や感情に従って買う。消費者分析を徹底し、客観的なデータで裏づけた商品を開発しても、それが売れるとは限らない。
むしろ、数字では表せないような奥底にある気持ちや感情を探り出すことが必要。感受性と直感を研ぎ澄まし、ゲーム感覚でインサイトを見つけ出すべきと説明する。
ケーススタディーでは高級アイスクリーム市場を作り上げたハーゲンダッツ、替え刃式カミソリで 60% のシェアを握るシックを取り上げる。両社が発見したインサイトと、それに基づいたマーケティング戦略の概要を示す。
インサイトとは何か
本書ではインサイトとは、「消費者に行動を起こさせる "心のホットボタン" 」 と表現します。ここを押されると、消費者は態度を変容し、思わず行動を起こし、時には習慣すらも変えるものです。
インサイトは、顕在化したニーズとは異なります。普段は、消費者自身も意識することなく気づいていないような本音です。
ただし、消費者の全ての本音がインサイトとは限りません。インサイトは、ブランディング・マーケティング・コミュニケーションなどのアクション (施策) につながるものに限られます。自分たちのビジネスに役に立つかどうかです。
インサイトの前提にある考え方
インサイトを見い出し、活用することには、ある前提があります。
「人は必ずしも論理的に頭で考え、商品やサービスを買っているわけではない」 、というものです。インサイトの前提にある考え方は、人は直感や気持ち・感情で商品を選び買っていることです。
商品やサービスの売り手である企業の立場では、消費者やターゲットユーザーは合理的に行動することが前提になり、マーケティング戦略や施策がつくられます。しかし、現実に人の行動は必ずしもそうではないという考え方です。
本書で読んで思ったことがあります。一人の消費者として自分自身の日々の買いものを振り返った時に、何かを買ったのはその場では論理的な理由は必ずしもなく、後からその理由を付けていることです。商品を手に取ろうとした瞬間、買おうと思ってカゴに入れた時は、直感や気持ちで選んでいることです。
インサイトを見い出すための考え方と方法
ここからは、どうやってインサイトを見い出すかを考えます。
インサイトを見い出すための態度
インサイトを見い出す際に大切な姿勢は、「頭で論理的に消費者を理解しようとしないこと」 です。感受性や直感を大事にします。
本書では、ふにゃふにゃした気持ち、人をおもしろがる好奇心を大切にすると書かれています。
思ったのは、なぜ感受性や直感を重視するかは、先ほどのインサイトへの前提に関係があるということです。
インサイトを扱う前提は、人は気持ちや直感で行動することです。他人である消費者の感情や思い入れを深く理解し、時には共感をするためには、こちら側の自分たちも直観的に、感受性で受け止めることが求められるのです。
「一人」 を深く理解することから
インサイトは、大量の人を定量的分析して得るよりも、一人の個人について、言動や振る舞い、行動の奥にある気持ちや価値観を深く理解することによって見い出します。
アンケートなどの定量調査からインサイトを見い出すのが難しいのは、アンケートでは聞かれた質問に対して答える内容は、顕在化した意識や考え・意見だからです。聞かれて答えるのは、本人がその場で言葉や文字にできる範囲です。
インサイトは、普段は本人も意識していない、できていないような無意識の領域にある心理です。
定量的なアプローチではなく、インタビューや行動観察という定性調査によって、消費者のインサイトを抽出します。
注意が必要だと思うのは、インタビューなどの定性調査をすれば、調査対象者がインサイトそのものを語ってくれるわけではないことです。インサイトを見い出すのは、あくまで調査実施側、自分たちだということです。
私の経験では、インタビューで対象者が語ったことがきっかけになり、他の情報と統合し、色々と考え抜いてようやくインサイトだと思えることが目の前に現れました。
有効なインサイトかを見極めるポイント
インサイトと思えるようなものが抽出できた時に、それが本当に有効なインサイトかどうかを見極めるポイントがあります。本書で紹介されていたのは以下です。
- 新しい発見か
- ブランドや商品・サービスと整合性があるか
- 発想が広がるか
- アクション (マーケティング施策など) につながるか
- 何より、おもしろいと思えるか。ワクワクするか
本書では5つめの 「おもしろいと思えるか」 が、一番の判断基準だと言います。
インサイトは自分だけで使うものではなく、関係する様々な部署と連携し、実際にビジネスアクションにつなげるためにあります。インサイトは、関係者が 「消費者はこんなふうに思っているのか」 と驚き、「おもしろい、やってみよう」 とワクワクするものでないといけないのです。
インサイトの活用法
本書で興味深かったのは、インサイトを見い出した後にどのように活用するかに役に立つフレームワークでした。
以下のように、3つで構成されます。
- インサイト
- プロポジション (提案)
- 知覚ゴール
上から順番に、次のように連動します。
- インサイト:どのような、普段は隠れている行動を起こすきっかけになる気持ちを捉えるか
- 提案:インサイトを満たすような提案をブランドや商品・サービスから提示する
- 知覚ゴール:結果、ブランドに対してどんな知覚がつくられるとよいのか。知覚とは、消費者から見て、頭の中でできるブランド品質や連想
基点はインサイトです。製品や企業側ではなく、あくまで相手である生活者側からです。そして、「インサイト ↔ 提案 ↔ 知覚ゴール」 という3つに一貫性があり、かつ具体性があるかです。
「消費者インサイトは何か」 という意識
本書から印象に残っている箇所を引用します。日常生活で、消費者インサイトを見い出すためのマインドチェンジについてです。
私の経験では、インサイトの考え方を取り入れたことで、以前とはずいぶんと変わった。漠然と 「消費者を理解すべき」 と考えていた頃よりも、はっきりと 「インサイトは何か」 と意識するようになってからのほうが、成功する確率は格段にアップした。
同じことを考えているようでも、その違いは大きい。曖昧さがなくなり、本当にこの消費者の気持ちが、購買に結び付くホット・ボタンなのかどうか、ということをはっきりと確認できるようになったからだ。
そして、発見したインサイトから、画期的なプロポジションやマーケティング活動案が生まれるかどうかを見極めるようになったからである。
(引用:インサイト)
意識として 「消費者を理解すべき」 では、具体的ではありません。
一方、「消費者インサイトは何か」 という意識を持てば、一歩踏み込んだ思考ができます。何かきっかけがあれば人を動かすような隠れた心理は何か、このヒット商品は消費者のどんな感情に共感を得ているのかを考えることができます。
最後に
本書は、消費者インサイトとは何かをわかりやすく説明しています。
具体的なビジネスケースに、ハーゲンダッツや男性ひげ剃りのシックを扱っているので、身近なブランドでインサイトを理解することができます。
平易に書かれていますが、内容は消費者インサイトについて本質的です。消費者インサイトを学ぶ入門書としておすすめです。