#マーケティング #継続利用 #リズム設計
自社開発のユーザー向けアプリ、ダウンロードされた後にお客さんにしっかりと使い続けてもらえているでしょうか?
アプリをダウンロードしてもらうことは重要ですが、実はそれ以上に難しいのは、ユーザーに習慣的にアプリを使い続けてもらうことです。せっかく開発したアプリも、継続的に利用されなければ意味がありません。
今回は、日本コカ・コーラの 「Coke ON」 のアプリが、どのようにユーザーの継続利用を促進し、習慣化してもらえるための工夫を施したのか、その秘訣に迫ります。
この事例から、あなたのビジネスにも応用できるヒントをぜひ一緒に見ていきましょう。
日本コカ・コーラの公式アプリ Coke ON
日本コカ・コーラの公式アプリ 「Coke ON」 は、自動販売機でのドリンク購入によって、お客さんとの長期的な関係をつくるために進化させたツールです。
2024年8月時点で5600万件のダウンロードを達成しています。自販機を介して顧客データを蓄積し、パーソナライズされたマーケティングが可能となりました (参考記事) 。
ユーザーメリット向上を目指すアプリ
Coke ON の主な特徴は、スタンプが貯まるリワードシステムです。
自動販売機でのドリンク購入ごとにスタンプが貯まり、15個で1本のドリンクが無料になります。さらに、日常の活動を取り込んだ 「Coke ON ウォーク」 や 「ミニゲーム」 、キャンペーンなどでスタンプを集められる仕組みも提供し、ユーザーの楽しみを増やしています。
利便性とユニークな体験の提供
また、Coke ON にはキャッシュレス決済機能 「Coke ON Pay」 が実装され、現金を使わずにスムーズに自販機で飲み物を購入できるようにしました。さらに、2019年に導入された 「Coke ON カメラ」 により、自販機以外で購入した製品でもスタンプを貯められるようになっています。
これらの機能は、ドリンクを購入するだけにとどまらず、ユニークで楽しい購買体験を提供することで、Coke ON を一般的なアプリ以上の存在にしています。
ユーザー習慣化の秘訣
Coke ON アプリは、自販機で飲み物を買って飲むという行為を、新しい顧客体験 (CX) に進化させました。
背後にあるのは、お客さんの行動データを活用したパーソナライズや、より良い顧客体験ができることによる習慣化の強化です。そこで、後半のパートでは、Coke ON アプリがどのようにして 「CX 改善」 と 「リズム設計」 を取り入れ、ユーザーの習慣化を実現してきたのかを掘り下げていきます。
顧客体験 (CX) の改善による習慣化
Coke ON アプリの成功要因のひとつは、顧客体験を改善するための多彩な施策です。
自販機と連携したアプリは、購入ごとにスタンプを貯め、無料ドリンクを提供するシンプルなリワードシステムからスタートしました。しかし、これだけでは長期的なアプリ利用に行き着くのは難しいと判断したコカ・コーラは、次のような CX 強化策を取り入れました。
成功体験の提供
Coke ON ではアプリのダウンロード直後に、早いタイミングで "成功体験" を提供することを重視しています。
具体的には、ウェルカムスタンプや毎週特定の曜日 (月曜日) にスタンプが2倍になるプログラムを導入することで、ユーザーがアプリをダウンロードしてすぐにメリットを感じるように設計しました。
こうした小さなうれしい体験やお得感の積み重ねが、アプリ利用の定着を促進します。
日常の体験をゲーム化
Coke ON は、歩数に応じてスタンプを獲得できる 「Coke ON ウォーク」 や、友人や仲間と協力して100本のドリンクを購入する 「チームチャレンジ」 など、ユーザーが自発的に楽しめるゲーム的な体験を用意しています。
ユーザーは日常の中でアプリを活用するきっかけや機会を自然に見出し、アプリの継続利用を促しています。
サービスリズムの設計
Coke ON がうまいと思うのは、ユーザーが自然にアプリを開きたくなる 「サービスリズムの設計」 にあります。
リズムをつくる設計では、ユーザーの生活習慣や行動パターンを細かく分析し、得られた洞察にもとづいて施策を講じています。
その中でも特に効果的だったのは、「月曜日の朝はスタンプ2倍」 という仕掛けです。
これは平日に比べて週末にアプリの利用が減少し、そのままアプリを使わなくなり月曜以降に離反してしまうというユーザーのパターン傾向を見出しての、問題解決を図る打ち手です。生活習慣の関係でたとえ週末に自販機を使わなくても、週明けの月曜日に再び利用を促すためのリズムを作り出すことで、継続的な利用をサポートしました。
定期的な情報提供
Coke ON では毎週火曜日に商品やキャンペーンに関するニュースを更新し、1週間の中で定期的にアプリを開く理由を用意しています。無理なくアプリを使い続けてもらえる環境を整え、アプリを使うリズムを利用者の中に定着させることを狙ってのことです。
また 「Coke ON ウォーク」 で1週間の歩数目標を達成するとスタンプが貯まる仕組みは、自販機で飲料を買う時以外のシーンでの日常的な行動 (歩いて移動すること) にアプリを紐づけることで、ユーザーが色々なシチュエーションで自然とアプリを開く習慣をつくります。
汎用化した得られる教訓
Coke ON のアプリの事例から学べる汎用的な教訓は、お客さんにメリットを提供する体験を、お客さんの生活やビジネスの一部に自然に取り込むことが、習慣化と利用定着のポイントだという点です。
アプリやサービスは、ユーザーを獲得した後にいかに利用を定着させられるかが課題となります。その際、以下のポイントが重要です。
- 小さな成功体験を積み重ねる: アプリ導入のはじめのタイミングで、なるべく早くユーザーにとってのメリットを感じてもらう。特典やお得感のあるうれしい体験を提供することで、初期離反を防ぐ
- ユーザーのリズムに合わせる: お客さんの生活リズムやビジネスのリズムに合わせたサービス設計が大事。Coke ON のように、データにもとづいて週ごとや日ごとに利用を促す施策を設計し、ユーザーに無理なくアプリを利用してもらうリズムをつくると効果的
- 自然な利用きっかけの提供: ユーザーが自発的に使いたくなるような理由や機会を提供し続けることが、長期的な利用定着につながる。一時的なインセンティブ (利用動機) ではなく、ユーザーが無理やり感を感じることのないよう、アプリ利用が自然な習慣となる体験を設計する
このように、ユーザーの習慣化を支えるためには、ユーザーが 「使いたくなる」 という動機を生活シーンの中に埋め込み、強制的にではなく自然にサービスを使用できる設計がポイントです。これが、ユーザー獲得後の利用定着を成功させる秘訣と言えるでしょう。
まとめ
今回は Coke ON のアプリを取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- Coke ON アプリは、顧客体験 (CX) の改善によりユーザーの習慣化を実現。小さな成功体験を積み重ね、アプリの初期離反を防ぎ、長期的な利用を促進している
- 具体的には、① 早いタイミングでのユーザー体験 (ウェルカムスタンプ) 、② 日常体験のゲーム化 (チームチャレンジ) 、③ サービスリズムの設計 (週明けの月曜のスタンプ2倍キャンペーン) 、④ 定期的な情報提供などの多彩な施策を導入し、使いはじめてすぐにアプリのメリットを感じる仕組みになっている
- ユーザーの習慣化には、「小さな成功体験の積み重ね」 「ユーザーの生活リズムへの適応」 「自然な利用機会の提供」 がポイント
- 使いたくなる動機をユーザーの日常生活の中に自然に埋め込むといい。強制的ではなく、ユーザーが自然にサービスを使いたくなる環境を整える
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