投稿日 2025/01/16

Z 世代の就活意識調査に学ぶ、新規顧客獲得と既存顧客へのマーケティング

#マーケティング #就活 #コミュニケーション

お客さんとのコミュニケーションが難しいと感じていないでしょうか?

新規顧客の獲得が思うように進まない、既存顧客のリピートやロイヤルティが低下している…。そんな課題に直面している企業は少なくないでしょう。実は、その解決のヒントが意外なところにあります。

Z 世代の就活生を対象とした調査結果には、企業と顧客との間でマーケティングコミュニケーションにも示唆を与えてくれるものでした。

今回は、就活生への意識調査から得られるマーケティングの学びを、新規顧客の獲得と既存顧客の維持という視点で掘り下げていきます。

Z 世代の就活意識調査


SNS の分析を通した採用マーケティング支援を行う No Company が、就職活動中の学生に 「学生と企業とのコミュニケーション」 に関する調査を行いました (リリースはこちら) 。

主な調査結果


  • 学生の 62.9% が、就職活動中に企業からの連絡を 「面倒」 と感じたことがあると回答
  • 27.1% の学生が、企業からの連絡が嫌で選考を辞退したことがあると回答
  • 面倒に感じる連絡内容のトップは 「説明会や次回選考に進むことを促す連絡」 (24.1%) だった


約6割の学生が企業からの連絡を 「面倒」 と感じ、約3割の学生が企業からの連絡を理由に選考を辞退したことがあると回答しています。

特に 「説明会への参加や選考を催促する連絡」 や 「採用情報に関する一方的な通知」 が、学生にストレスを与えているようです。多くの学生は、企業の都合で頻繁に催促されることや、一方的な連絡を受け取ることに抵抗感を抱いていることが明らかになりました。

就活生が望むこと

学生が重視する情報源としては、説明会や採用 HP 、人事面談、学生同士の交流会などで、これらによって会社の実態や社風を理解することを学生は重視しています。

学生は就職活動において、企業との連絡をスピーディかつ簡潔に行うことを好んでいます。例えば LINE などの日常的に使うツールでの適度な連絡頻度でのコミュニケーションです。

連絡頻度については、選考が進んでいる企業からは頻繁に来ても連絡が歓迎されますが、エントリーを迷っている企業からは月に1回程度の連絡が好ましいという結果が調査からは出ています。

ちなみに内定承諾の決め手は、社長や人事、先輩社員との対面での会話でした。こうした機会により最終的に企業への信頼感が高まり、内定を承諾する決め手となっているようです。

なお、就活が終わった後の内定した後では、内定後のフォローアップや親身な対応が好感を持たれ、選考の進行に伴って必要な情報を適切に提供する企業が高評価を得ていました。

* * *

では、就活中の学生への就活意識調査から学べることを掘り下げていきます。

就職活動に関する調査は、企業と就活生とのコミュニケーションのあり方に注目し、学生が企業からの連絡に対してどのような反応を示すのかを明らかにしました。

この調査結果からは就活だけでなく、マーケティングにも活かせる示唆があります。そこで後半のパートでは、「新規顧客の獲得」 と 「既存顧客のリピート購入やロイヤルティ化」 の観点から、就活意識の調査結果をどのようにマーケティングに応用できるのかを見ていきましょう。

新規顧客の獲得への示唆


まずは、新しいお客さんを獲得することへの学びについてです。

結論から一言で言えば、「適切な距離感とシンプルなコミュニケーション」 への示唆があります。

就活中の学生への就活意識調査によれば、多くの学生が企業からの過度な連絡に対して 「面倒だ」 と感じ、場合によっては連絡頻度や内容によって選考を辞退することさえあるとのことでした。

この状況は、新規顧客へのアプローチにも当てはまります。新規のお客さんは、まだ商品やサービスに対する理解が浅いため、過剰なプロモーションやしつこい勧誘は逆効果です。

では、どのようなアプローチが効果的なの、具体的に見ていきます。

段階に応じた情報提供

就活の意識調査では、学生がエントリー前後で望む情報や連絡頻度が変化することが明らかになりました。これがマーケティングへ示唆しているのは、お客さんの購買検討段階に応じて、提供する情報の内容や接触頻度を最適化することの重要性です。

例えば、購買検討の初期段階では基本的な製品情報や企業情報を提供し、検討が進んだ段階で詳細な情報や個別相談の機会を提供するなど、段階に応じたコミュニケーション設計をつくることが効果的です。

実際、調査では採用説明会 (31.2%) や人事面談 (18.8%) が学生に好評でした。マーケティングにおいてもお客さんの意思決定プロセスに合わせた情報提供や、双方向でのコミュニケーションが重要であるということです。

顧客にとって使いやすい連絡手段の選択

調査では、就活中での企業担当者との連絡では、LINE のような学生にとって身近なツールが好まれていました。

マーケティングコミュニケーションも同様で、お客さんが普段から使っていているツール、よく見ているメディアを活用することがポイントです。

自社の顧客層が主に利用するコミュニケーションチャネルを把握し、自分たちも活用することで、お客さんにとってより自然な形でつながることができます。

必要最小限の情報提供

就活意識調査の結果には、学生が好む連絡の特徴に 「簡潔で必要最小限の内容」 が挙げられていました。

マーケティングコミュニケーションへのヒントになるのは、情報過多の現代において、お客さんが本当に必要としている情報を簡潔に提供することの重要性です。

不要な情報までお客さんに大量に送りつけるようにすることは決してやらず、的確な情報を適切なタイミングで提供することが、お客さんにとってストレスのない情報の受け取りになります。

既存顧客のリピート購入やロイヤルティ化


では次に、既存のお客さんへのコミュニケーションについても示唆を考えてみましょう。

ここでのポイントは、親身なフォローとタイミングです。

就活中の学生への就活意識の調査からは、企業とのやり取りが快適であったと感じた学生は、内定を承諾する際に、企業の人事担当者や先輩社員との対面の機会を好意的に受け入れていることがわかりました。

マーケティングにおいても、既存顧客との関係性においては信頼性がある程度で築かれているであろうことからも、連絡の頻度や内容が新しいお客さんに対するコミュニケーションとは少し異なるアプローチになります。

ポイントをいくつか順に見ていきましょう。

定期的な対面機会の創出

オンラインコミュニケーションが主流となる中、対面でのコミュニケーションの価値を再認識することが必要です。

既存顧客に対して、定期的なリアルでの対面機会 (例: 顧客向けイベントや個別相談会など) を設けることで、より深い信頼関係を構築することができます。

Z 世代への就活意識調査では、学生同士の交流会 (18.2%) や社員や社風が分かる動画 (17.6%) が支持を得ており、これらのアプローチはマーケティングでの既存顧客との関係強化にも応用できるでしょう。

不安や疑問への丁寧な対応

調査では 「丁寧で親身な対応」 が学生から高く評価されていました。

これが示すのは、アフターサービスの充実や、お客さんからのフィードバックに真摯に対応することが大事であるということです。お客さんの声に耳を傾け、迅速かつ丁寧に対応することで、顧客満足度を高め、ロイヤルティを向上させることができるでしょう。

顧客の都合や状況への配慮

就活の意識調査では、学生の 78% が1社との連絡期間が半年未満という結果でした。ここからのマーケティングへの示唆は、お客さんにはそれぞれのペースや状況があり、同じではないことです。

企業からお客さんへの押し付けがましい販促ではなく、相手の立場に立った親身なアプローチが長期的な関係構築には不可欠です。お客さんの置かれた状況を理解し、顧客文脈に合わせたコミュニケーションを心がけることが大切です。

就活でも、調査では 「学校生活に配慮して、こちらの都合に合わせた頻度で連絡をくれた企業」 が高く評価されていました。ビジネスにおいても、お客さんの生活リズムやビジネスサイクル、相手の優先事項を尊重することの大切さを物語っています。

顧客コミュニケーションを最適化するポイント


Z 世代の就活生の行動や意識から得られる教訓は、コミュニケーションの頻度と内容は、お客さんの心理や状況に合わせて配慮するべきであるということです。

就職活動において、学生はエントリー前の段階では慎重になっていて、企業側からのあまり多くの連絡を望んでいません。ですが、一旦選考プロセスが進むと、週1回程度の頻繁な連絡であっても好意的に受け止めてくれるようになります。

ビジネスでも同じです。お客さんへも購買ステージや関心度合いに応じて、適切なコミュニケーションにしていくことが重要です。

新規顧客に対しては、購入前のタイミングで頻繁に接触すると不快感を与える可能性がありますが、既存顧客には、適切なサポートを提供し続けることが信頼の維持につながります。

もう少し教訓の解像度を上げると、次のようなマーケティングコミュニケーションのポイントが示唆として得られます。

  • 顧客の意思決定プロセスを理解し、各段階に適した情報を提供する
  • 顧客の状況や都合を理解し、それに配慮したコミュニケーションを心がける
  • 顧客が使いやすいコミュニケーションチャネルを選択する
  • 新規顧客に対しては、シンプルで具体的なメリットを伝える一方、無理に購入を促すことなく、顧客自身が判断できる時間をつくる
  • 既存顧客には、購入後のサポートやパーソナライズされた提案によって、再度の購買意欲を高める。また、顧客のフィードバックを取り入れた改善や新しい提案も有効


これらの要素を自社のマーケティングに取り入れることで、新規顧客の獲得と既存顧客の維持・ロイヤルティ向上の両方において、効果的にマーケティング活動を進めることができるでしょう。

まとめ


今回は、Z 世代への就活意識の調査から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • Z 世代の就活意識調査から、マーケティングに活かせる示唆が得られる

  • 新規顧客獲得では、お客さんの購買段階に応じた情報提供と適切なコミュニケーションチャネルの選択がポイント。過剰な接触は逆効果であり、シンプルで必要最小限の情報提供が効果的

  • 既存顧客のリピート化やロイヤルティ化では、親身なフォローとタイミングが重要。定期的な対面機会の創出、不安や疑問への丁寧な対応を行う

  • 顧客コミュニケーションの最適化には、お客さんの心理や状況に応じた配慮が大切。お客さんの意思決定プロセスを理解し、各段階に適した情報提供と柔軟なコミュニケーションを展開する


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。