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1155回目のブログ更新です。
今回は、企業の経営理念を構成する1つである 「価値基準 (shared value) 」 についてです。そもそも価値基準とは何か、どうやってつくるか、どのように組織に浸透させるかを考えます。
このエントリーで読んでいただきたい内容は、以下です。
- 価値基準とは何か
- なぜ価値基準が大切なのか
- 価値基準のつくり方と浸透方法
価値基準とは何か
価値基準とは、組織で大切にしたいと皆が思う共有・共感された価値観です。
例えば、メルカリは3つの価値基準を持っています (2019年2月現在。参考: メルカリ) 。
- Be bold (大胆であれ)
- All for one (全ては成功のために)
- Be professional (プロフェッショナルであれ)
価値基準は、ものごとの判断基準になります。特に論理では決めきれない難しい決断を迫られた時に、判断の拠り所になります。
また、価値基準は組織で何か大きなことを成し遂げるために持ちます。使命感として掲げることを実現するためです。
なぜ価値基準が大切なのか
価値基準は判断の拠り所になります。価値基準が組織で共有され浸透していれば、時には直感に近いような瞬時の暗黙知の判断を、仕組みとして組織として再現できます。
もともとは価値基準は、個々人が大切にする価値観が組織で共有されできあがったものです。具体的には、企業の創業者や経営陣が大事にする考え方や価値観があり、組織のメンバーに浸透していった・浸透させた結果が価値基準です。
経営判断だけに限らず日々の業務においても、意思決定は価値観によって左右されるものです。組織全体で価値基準として共有できていれば、皆が意思決定をブレずに行なうことができます。
つまり、価値基準があることによって、以下の2つによって組織が強くなります。
- 暗黙知 → 形式知へ
- 属人的 → 再現可能な仕組みに
価値観を組織で形式知化し、再現可能な仕組みを価値基準として持っていることによって、以下が期待できます。
- 判断のスピードが早くなる
- 意思決定の質も上がる
- 打ち手 (アクション) の数が増える
価値基準を社内だけに留めず社外にも発信すれば、人が集まる際のフィルターの役割も果たします。例えば、採用基準として機能します。
価値基準のつくり方と浸透方法
ここからは、価値基準をどのようにつくるか、どう組織のメンバーに浸透させるかを考えます。
価値基準のつくり方
以前に、ある会社が価値基準を見直すにあたって、コンサルティングをやったことがありました。
経営陣からの議論に始まり、価値基準を浸透させていくことが全社員を巻き込んだプロジェクトになりました。
仕事での経験も踏まえ、価値基準のつくり方のプロセスを自分なりに一般化すると、以下になります。
- 組織の個々人が、自分が皆で大切にしたいと思う価値観を内省し言語化する
- アウトプットされた各自の価値観を組織で共有する。対話により相互理解を図る
- 内省と対話を繰り返し、共通する価値観をより高次なものに昇華させる
- 数が多い場合は絞っていく。共有された価値感を価値基準として合意形成をする
- 価値基準と補足説明の言語化とワーディングに徹底してこだわる。組織の皆が腹落ちする文言に落とし込む
価値基準をつくる起点をトップダウンから、あるいはボトムアップからのいずれも、策定プロセスでの発散と収束、個人とメンバーでの内省と対話、腹落ちする合意形成が必要になります。
価値基準の浸透方法
次に、つくった価値基準の浸透方法についてご説明します。
価値基準はつくって終わりではありません。重要なのは、ただ飾っておくだけではなく、いかに組織に浸透させ、価値基準が体現され、日々の共通言語になっていることです。当たり前のように、意識されなくても自然と刷り込まれるほどの文化にできるかです。
私の業務経験から、価値基準の浸透方法は以下の方法があります。
- トップが語り続ける。言うだけではなく自身の振る舞いや行動で示す
- 現場のメンバーも浸透プロセスに参加し自分ごと化する機会をつくる。価値基準の体現行動を相互に共有する
- 日々の会話や意思決定に使う。習慣化されれば価値基準が組織の文化として根付いていく
- 仕組みにする。例えば、人事や採用評価に反映する。望ましいと思われる体現者を表彰する
- 触れる機会を増やす。例えば、価値基準が明記されたグッズをつくったり、会社の会議室名を価値基準にする
まとめ
今回は、経営や組織の理念を構成する1つである価値基準を考えました。
最後に、今回のまとめです。
- 価値基準は組織で大切にしたいと皆が思う価値観。判断の拠り所になり、組織で何か大きなことを成し遂げるためにあるもの
- なぜ価値基準が大切なのかは、判断のスピードと質が上がる、アクションが増える、採用などの評価・フィルターにもなる。これらは、価値観として組織で形式知化し、再現可能な仕組みとして持てることによる
- 価値基準のつくり方は、策定プロセスでの発散と収束、個人とメンバーでの内省と対話、腹落ちする合意形成が大事。重要なのは、価値基準をただ飾っておくだけではなく浸透され、日々の共通言語になり文化になること