
今回は、AI ワークショップを取り上げます。AI は Appreciative Inquiry の略です。
- AI ワークショップとは?
- 具体的な進め方
こんな疑問に答える内容でブログを書きました。
この記事でわかること
この記事でわかるのは、AI ワークショップについてです。
ご紹介したいのは、未来を描いて、そこから逆算して問題解決やより良いものにするためのワークショップの方法です。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。
AI ワークショップとは
今回まずご紹介したい本は、米国人エグゼクティブから学んだポジティブ・リーダーシップ - やる気を引き出す AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー) です。
仕事で、AI ワークショップのファシリテーションをしたことがあり、その時に参考にした本です。
ここで言う AI は人工知能ではなく、Appreciative Inquiry (アプリシエイティブ インクワイアリー) の略です。
Appreciative の意味は 「価値を認める」 、Inquiry は 「問いかけ」 です。Appreciative Inquiry を直訳すると、「価値を認めるための問いかけ」 となります。
私が初めて AI をワークショップ形式で参加して感じたのは、うまく使うと効果が大きいやり方だということです。一般的な問題解決のアプローチとは発想が異なり、一度体験しただけで、自分がファシリテートするワークショップの幅が大きく拡がりました。
AI の特徴
では、AI について詳しくご説明していきます。
Appreciative Inquiry (AI) の特徴をまとめると、次のようになります。
AI の特徴
- ポジティブ。良い点や強みに目を向ける
- メンバー各自の強み・成功要因を基点にする
- 実現できそうな理想の姿 (未来) を皆で描く
- 理想から、何をやるか、具体的な実行プランに落とし込む
- 落とす過程で、解決すべき問題を設定する
一般的な問題解決アプローチとの違い
AI がユニークなのは、一般的な問題解決のやり方と発想そのものが違うことです。
通常、問題解決をするためには、次のプロセスを踏みます。
一般的な問題解決アプローチ
- 現状把握と原因分析
- 問題設定
- 課題設定 (解決するためにやる方針)
- 具体的な実行プラン作成
まずは問題を設定し、問題を基点に何をやるかを考えていきます。
問題とは現時点でできていないことです。別の言い方をすると、自分の否定から入るやり方です。
この問題解決アプローチは、論理的には正しい方法です。
しかし、人は感情を持つ生き物なので、否定やネガティブから入るやり方だと、どうしてもやらされ感や義務感が残ってしまいます。前向きになりにくく、創造的な解決策につながりにくいのではないでしょうか。
AI での問題の扱い方
それに対して、AI のアプローチは 「ポジティブ」 「理想の未来を先に描く」 というのが特徴です。
ここでのポイントは、AI では問題を見ないわけではなく放置するのでもなく、問題設定の方法と順番です。問題の扱いを理想実現の障害と見るわけです。
そして、順番は先に未来を描き、未来を実現するために何をするかの中で問題に目を向けます。
AI のステップ (具体例で解説)
では、AI の方法を具体的にご説明していきます。
AI は、4つの D を含む次のプロセスで進めます。
AI のプロセス
- テーマを決める
- Discover (発見)
- Dream (理想)
- Design (設計)
- Destiny (実行)
ここからは、テーマを 「ある会社のバックオフィスの理想像をつくる」 を例に、ご説明します。
[AI プロセス 1] テーマ設定
テーマ設定はポジティブな表現をします。
例えば、バックオフィスの例では先ほどのように 「理想像をつくる」 や 「未来のバックオフィス」 という表現です。
これを、「なぜバックオフィスは会社内で機能していないのか」 「これ以上離職率を上げないためにはどうすればいいか」 のような、テーマを見ただけでネガティブな印象を受けるような設定にはしません。
繰り返しになりますが、AI の特徴の1つはポジティブです。
[AI プロセス 2] Discover (発見)
4つの D の1つ目です。
AI の基点になるのは、メンバー個々人です。Discover では、以下をやります。
Discover (発見)
- テーマに関することで、自分がうまくいったこと、強みを見つける (言語化)
- 個人の内省と、メンバー同士の対話と質問で良いところを引き出す
例にしているテーマ 「ある会社のバックオフィスの理想像をつくる」 では、次のような問いを掘り下げて、強みや成功要因を見い出します。
Discover の問い (例)
- 今までで自分が組織にうまくかかわれたことは? (例: 勝てた経験)
- 自分が工夫したこと・努力したことは?
- そこから言える自分の強みは?
問いは、自分ひとりでの内省とメンバー同士の対話の両方に使います。
Discover では、ポジティブな姿勢で自分や相手の良いところに目を向けます。ダメ出しではなく 「イイね出し」 です。
[AI プロセス 3] Dream (理想)
ここで、一気に皆で目指したい理想の姿にジャンプします。
Dream は、理想的なありたい姿で、実現できそうなことです。
理想と実現の両方が大事です。理想ばかりになり、現実的にはできそうにない Dream を描くと、この後のプロセスである実行に落とし込めなくなります。
Dream では、以下をやります。
Dream (理想)
- 成功要因と強みから、実現できそうな理想の姿を皆で描く
- 理想は一言 (ドリームステートメント) と、一枚の絵 (イラストやコラージュ) にする
ポイントは、自分たちの良いところ・強みを認識してから、さらによくするために、テーマについて理想を描くとどうなるかを考えることです。基点はメンバーそれぞれの良いところと強みです。
バックオフィスの例では、問いかけは以下のようなことから理想を描きます。
Dream の問い (例)
- ワクワクする組織はどんなイメージ? (実現できそうな範囲で)
- 自分たちの良い点・強みを活かせる組織は?
- 理想のイメージを何か他のものにたとえると?
- 10才の子どもにも説明するにはどうすればいい?
Dream のアウトプットは、メタファーや、言葉だけではなく絵を使うと良いです。ワークショップの時間が十分にあれば、即興の演劇で表現するのもよいです。
私が参加した過去の AI ワークショップではメタファーを、ディズニーランド、昔話の 「大きなカブ」 、古き良き村、生態系などがありました。
[AI プロセス 4] Design (設計)
ここからは、Dream として実現したい理想像を、現実に落とし込んでいきます。
理想の姿という夢を叶えるためにどうするかです。
Design (設計)
- 理想の姿をどうすれば実現できるかを考える
- 議論では Dream の一枚の絵やメタファーをそのまま使う
- この時点で初めて理想実現の障害 (解決する問題) に目を向ける
先ほどの、AI と通常の問題解決アプローチの違いでご説明したように、問題設定は Dream の後の Design で初めて扱います。AI のマインドセットはポジティブであり、問題に向き合うのは先に理想・未来を描いてからです。
Design での問いの例は、以下です (バックオフィスの例) 。
Design の問い (例)
- 絵の中のものを、自分たちの役割に当てはめるとどうなる?
- 絵のような理想の組織になるためには、どこを取り組めばいい?
- これから障害になりそうな問題は何?
[AI プロセス 5] Destiny (実行)
Destiny の訳は運命です。Dream で描いた夢を運命に変えるために、具体的に何を実行するかです。
Destiny では個々人と組織の具体的な実行プランをつくります。
Destiny (実行)
- 個人、チームや組織でやることを具体的に決める
- 描いた理想の絵 (Dream) につながるかを意識する
- 明日からやることを各自が宣言する (自らの言葉でコミット)
Destiny の問いの例です。
Destiny の問い (例)
- Design (設計) で決めた中で、自分がやりたいことは何?
- それは Dream の絵にどうつながる?
- 明日から何をやる?期日はいつまで?
まとめ
今回は、Appreciative Inquiry (AI) という未来を見据えるワークショップを取り上げました。
ご紹介した本 米国人エグゼクティブから学んだポジティブ・リーダーシップ - やる気を引き出す AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー) や、ネットにも AI を解説する記事もありますので、機会があればぜひ AI ワークショップをやってみるのをおすすめします。
私が初めて AI をやった時に感じたチームの一体感は、今でも忘れられない体験です。
最後に今回の記事のまとめです。
ご紹介した AI は、Appreciative Inquiry (アプリシエイティブ インクワイアリー) の略。
Appreciative の意味は 「価値を認める」 、Inquiry は 「問いかけ」 です。Appreciative Inquiry を直訳すると、「価値を認めるための問いかけ」 。
AI の特徴
- ポジティブ。良い点や強みに目を向ける
- メンバー各自の強み・成功要因を基点にする
- 実現できそうな理想の姿 (未来) を皆で描く
- 理想から、何をやるか、具体的な実行プランに落とし込む
- 落とす過程で、解決すべき問題を設定する
AI のプロセス
- テーマを決める
- Discover (発見)
- Dream (理想)
- Design (設計)
- Destiny (実行)
米国人エグゼクティブから学んだポジティブ・リーダーシップ - やる気を引き出す AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー) (渡辺誠 )