
今回は、提案や企画を通す方法をマーケティングの視点で掘り下げる記事です。
- 常識と芸術の間にあるマーケティングコミュニケーションとは?
- アイデアを受け入れてもらうための 「カリフォルニアロール」 とは?
- カリフォルニアロールに学ぶ、プレゼンや企画書のつくり方
こんな疑問に答える内容を書きました。
この記事でわかること
この記事でわかるのは、提案や企画、アイデアをどうすれば人に受け入れてもらえるかです。
広告コピーやマーケティングに学ぶ、新しいことを通す方法をご紹介します。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。
優れた広告コピーとは
最初にご紹介したい本は、広告コピーってこう書くんだ!読本 です。
この本で印象的だったのは、「優れた広告コピー」 とは何かです。
書かれているのは、「優れた広告コピーは "常識" と "芸術" の間にある」 です。
これは、どういう意味でしょうか?
常識と芸術の間
ここで言う 「常識」 とは、聞いても当たり前と思うことです。「芸術」 とは聞いてもわからないことです。
常識と芸術の間にある優れた広告コピーとは、見たり聞いたりした時に、「それは当たり前」 でもなく、「何を言っているのかわからない」 でもなく、ちょうどその中間だというわけです。
広告コピーを見た時に、「そういえばそうだね」 と思えるものです。
常識と芸術の間にある
- それは当たり前 = 常識
- そういえばそうだね = 広告コピー
- わからない = 芸術
広告コピーの役割は、それを見た時に相手に気づきを与えます。言われて初めて、普段は意識の下に眠っているものが呼び起こされます。
誰でも知っている 「そりゃそうだ = 常識」 という当たり前すぎても、「そんなのわかんない = 芸術」 でも、優れた広告コピーにはなれません。
この話は、マーケティングコミュニケーションとして、一般化することができます。
マーケティングコミュニケーション
優れた広告コピーの考え方は、マーケティングコミュニケーション全般に当てはまります。
コミュニケーションで説明をしすぎると言われた側は驚きがなくなります (そりゃそうだ = 常識) 。
一方で、抽象的すぎる内容や説明が足りていないと関心や興味が生まれず、理解されません (そんなのわかんない = 芸術) 。
ここから学べるのは、コミュニケーション相手である顧客がすでに知っている 「既知のこと」 に、どれだけ相手にとって 「新規の情報」 を加えるかです。
既知ばかりでは常識になり、新規情報のみでは芸術になってしまいます。
では、既知と新規のバランスはどれくらいがいいのでしょうか?
1つ参考になると思った話が、新しいアイデアを信用してもらうための 「カリフォルニアロール」 です。
アイデアを受け入れてもらう 「カリフォルニアロール」
カリフォルニアロールの話は、書籍 TRUST - 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか に書かれていたことです。
この本には、アイデアを信頼してもらえるためには次の3つが有効だとあります。
アイデアへの信頼に有効なこと
- カリフォルニアロール (それは何か)
- メリット
- インフルエンサー
1つ目のカリフォルニアロールは、何でしょうか?
日本の寿司とカリフォルニアロール
カリフォルニアロールは、アメリカでお寿司が受け入れられるために、大きな役割を果たしたことからの比喩です。
寿司がアメリカにもたらされた当初、アメリカ人にとっては食べたいと思えるものではありませんでした。しかし、アメリカで一般に食べられるキュウリやカニ、アボガドを組み合わせた 「カリフォルニアロール」 にすることにより、アメリカ人には馴染みのある食べ物になったのです。
既知のことでハードルを下げる
カリフォルニアロールが比喩として意味するのは、新しいアイデアを受け入れてもらうためには、いかに既知のことを使って理解してもらうかです。
アイデアが新しいほど、そのアイデアを初めて見たり聞く人にとっては、アイデアが何を意味するのかがわかりません。
そこで、受け手がすでに知っていること、合意できていることを組み合わせて、理解へのハードルを下げます。ここには心理的な抵抗感を小さくする効果もあります。
もし実際に既知を取り入れることが難しくても、説明の中にたとえ (アナロジー) で既存のことを使うとよいです。例えば、「これは印刷業界のウーバーです」 というようにです。
なお、アイデアへの信頼に有効な2つ目と3つ目の 「メリット」 と 「インフルエンサー」 については、別の記事に書いています。ぜひこちらも読んでみてください。
カリフォルニアロールの役割
話を戻します。
当初のアメリカ人にとって、日本のそのままの寿司は、今回の記事でいう 「芸術」 でした。馴染みのない食べものすぎて、彼ら・彼女らにとっては全くの新規のものだったわけです。
そこでカリフォルニアロールです。
既知であるアボガド等を使った寿司をつくり、「そんなのわかんない (= 芸術) 」 ではなく、「言われてみればおいしそう」 にしました。芸術でもなく常識でもなく、芸術と常識の間です。
では、ここまでの話である、カリフォルニアロールや、最初にご紹介した優れた広告コピーから、どんなことが学べるでしょうか?
優れたコピーとカリフォルニアロールに学べること
広告コピー、マーケティングコミュニケーション、新しいアイデア、お寿司を抽象化すると、コンテンツと捉えることができます。
相手にとって馴染みがない、新しいコンテンツを受け入れてもらうためには、既知のことをベースに本当に伝えたい新規の内容を加えるといいです。
既知ばかりでは目新しさがなく、新規ばかりでは理解されにくいです。
既知と新規のバランスは、感覚的にですが、少なくとも 5 : 5 、既知のほうが多い 6 : 4 くらいでもいいと私は考えます。
既知と新規を使う考え方は、プレゼンや提案・企画書をつくる時など、ビジネスにも広く応用できます。ぜひ、普段のお仕事での参考にしてみてください。
まとめ
今回は、新しいアイデアやコンテンツを信頼してもらい、受け入れてもらう方法をご紹介しました。
最後に今回の記事のまとめです。
優れた広告コピーは 「常識」 と 「芸術」 の間にある。
見た時に 「それは当たり前 (= 常識) 」 でもなく、「何を言っているのかわからない (= 芸術) 」 でもなく、ちょうどその中間。「そういえばそうだね」 と思え、相手に気づきを与えるもの。
マーケティングコミュニケーションとして一般化すると、コミュニケーション相手である顧客がすでに知っている 「既知のこと」 に、どれだけ相手にとって 「新規の情報」 を加えるか。既知ばかりでは常識になり、新規情報のみでは芸術になってしまう。
新しいアイデアを受け入れてもらうために、既知のことを使って理解してもらう。既知のことをベースに、本当に伝えたい新規の内容を加えるといい。
持論は、既知と新規のバランスは、少なくとも 5 : 5 、既知のほうが多い 6 : 4 。
広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計)
TRUST - 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか (レイチェル・ボッツマン)