
今回は、書評です。
世界 「倒産」 図鑑 - 波乱万丈の25社でわかる失敗の理由 (荒木博行) という本をご紹介します。
- どんなことが書かれている本?
- 倒産のパターン
- 読んで思ったこと
こんな疑問に答える内容を書きました。
この記事でわかること
この記事で書いているのは、
- 書籍 世界 「倒産」 図鑑 の概要
- 25社に共通する倒産へのパターン
- 失敗の本質から学べること
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、この本も読んでみてください。
この本に書かれていること
本書を一言で言えば、25社の倒産事例からの 「失敗の本質」 と 「教訓」 が書かれている本です。
成功よりも、倒産という失敗に焦点を当てています。失敗事例の具体と抽象での言語化集です。
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
「倒産」 は教訓と知恵の宝庫である。リーマン・ブラザーズ、エンロン、コダック、トイザラス、MG ローバー、山一證券、そごう、タカタ …… 日米欧の25事例を徹底分析!
良い会社かどうかを判断する時、我々は過去の実績や経営指標などのデータを重視します。しかし、数字だけでは見えないこともあります。
経営者も一人の人間であり、例えば急成長の後の油断や甘え、変化に対する焦り、恐れなどによって迷い、時には不正に手を染めてしまうことも……。倒産に至る過程を、人間ゆえの弱さを軸に見ていくと、また新たな発見と気づきがあります。
この本の特徴は、本全体を通して設定されているフレームにあります。
フレームで読みやすい
フレームは2つあります。1つは、倒産の原因の5分類と、25社それぞれの説明の構成です。
前者は本書全体を構成する大きなフレーム、後者は1社ごとの事例が書かれた各章内の小さなフレームです。
フレームで統一されているので、頭に入ってきやすく読みやすい本です。
では、2つのフレームについて、順番にご紹介していきましょう。
倒産原因の5分類
本書の冒頭で、倒産の5パターンが提示されます。
大きくは 「戦略の問題」 と 「マネジメントの問題」 の2つに分かれ、それぞれがさらに分類されて合計で5つのパターンです。
戦略の問題
- 過去の亡霊 (成功体験から抜け出せなかった)
- 脆弱シナリオ (戦略シナリオが脆弱)
マネジメントの問題
- 焦りからの逸脱 (焦りにより一線を越えてしまい自滅)
- 大雑把 (マネジメントが雑すぎた)
- 機能不全 (経営と現場が遠すぎ組織が機能せず)
次に、小さなフレームを見ていきます。
各章のフレーム
この本で取り上げられている倒産事例25社の説明は、決まったフレームに沿って書かれています。
流れが共通しているので読みやすいです。
各章のフレーム
- 創業から成功まで (どういう会社だったのか)
- 倒産の経緯 (どのようにして倒産に至ったのか)
- 失敗の本質 (なぜ間違えたのか)
- 学べること (私たちへのメッセージ)
具体と抽象の往復運動
4つのうち、始めの2つがファクトです。残りの2つが解釈です。
事実が丹念にわかりやすく書かれ、失敗の本質と教訓という視点で著者の荒木さんの解釈が書かれている流れです。
後半の解釈は2段階になっています。「失敗の本質」 は Why の掘り下げ、「学べること」 は So what から現代の私たちが得られる教訓です。
具体と抽象の往復運動を何回もできるのが、この本の醍醐味です。
いつでも当事者になり得る
読んで考えさせられるのは、どの倒産の事例も決して他人事ではないように思えることです。企業や組織だけではなく、個人のレベルにも当てはまると思わされるからです。
歴史上の過去の出来事や特殊なケースではなく、いつでも私たちは当事者になり得るのです。
思ったこと
ここからは、読んで思ったことをご紹介します。
読んで思ったこと
- 25社は、かつては成功を収めたイノベーターだった
- 倒産のターニングポイントから、一気に凋落した
- 生き残る種とは変化に適応したものである (ダーウィンの 「種の起源」 )
以下、それぞれについて順番にご説明します。
[思ったこと 1]
25社は、かつては成功を収めたイノベーターだった
25社の創業からの経緯を読むと、いずれも大成功と言えるほどの成長を遂げてます。
画期的なビジネスモデルをつくり、イノベーターと言える存在でした。
これは25社全てではありませんが、今で言うベンチャー企業がイノベーションを起こし業界や世界を変えたわけです。現在の日本でのメルカリや、世界レベルの企業では GAFA のような会社でした。
しかし、戦略の立案や意思決定、マネジメントという実行プロセスで誤ってしまったのです。
[思ったこと 2]
倒産のターニングポイントから、一気に凋落した
後から振り返ってのターニングポイントから、倒産までの凋落は崖を滑り落ちるようでした。
各章の最後に、その企業のライフラインチャートが描かれています。創業から絶頂をむかえ、倒産までの変遷です。
あらためて倒産までの経緯を見て気づくのは、いずれも頂点から倒産までの短さです。
[思ったこと 3]
生き残る種とは変化に適応したものである
読みながら思ったのは、ダーウィンの生物進化論です。
ダーウィンが言ったのは、「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」 です。
25社の事例にも通じます。外部環境の変化に、戦略やマネジメントで対応できなかったのです。
外部環境の変化には、日本のバブル崩壊や、リーマンショックなどの正確に変化規模が予想できないものも確かにありました。倒産の理由をこうした外部環境のせいにするのは簡単です。しかし、失敗の本質は別のところにあります。
バブル崩壊やリーマンショックにも適応し、生き残った企業も存在します。中には外部環境の変化後に、より強くなった企業もあるでしょう。
自責でどう生き残り続けるかは、戦略をアップデートし続け、マネジメントでは PDCA をまわし続ける、個人のレベルでも示唆に富む本です。
まとめ
今回は、世界 「倒産」 図鑑 - 波乱万丈の25社でわかる失敗の理由 をご紹介しました。
内容はいかがだったでしょうか?25社のいずれも興味深かったです。ぜひこの本を読んでみてください。
最後に今回の記事のまとめです。
25社の倒産事例からの 「失敗の本質」 と 「教訓」 が書かれている本。失敗事例の具体と抽象での言語化集。
具体と抽象の往復運動を何回もできるのが、この本の醍醐味
大小のフレームから読みやすい本。
大きなフレーム (倒産の原因)
- 戦略の問題 (過去の亡霊, 脆弱シナリオ)
- マネジメントの問題 (焦りからの逸脱, 大雑把, 組織の機能不全)
各章のフレーム
- 創業から成功まで (どういう会社だったのか)
- 倒産の経緯 (どのようにして倒産に至ったのか)
- 失敗の本質 (なぜ間違えたのか)
- 学べること (私たちへのメッセージ)
読んで思ったこと
- 25社は、かつては成功を収めたイノベーターだった
- 倒産のターニングポイントから、一気に凋落した
- 生き残る種とは変化に適応したものである (ダーウィンの 「種の起源」 )
世界 「倒産」 図鑑 - 波乱万丈の25社でわかる失敗の理由 (荒木博行)