投稿日 2020/01/29

「伽藍とバザール」 の話から、戦略やキャリアで学べること


今回は、「伽藍とバザール」 という話から、戦略やキャリアの観点で掘り下げています。

  • 「伽藍とバザール」 とは?
  • ネガティブゲームとポジティブゲーム
  • 戦略とキャリアの視点で学べること

こんな疑問に答える内容を書きました。

この記事でわかるのは、キャリアについてです。

ある本に書かれていた 「伽藍とバザール」 の話から、キャリアへの示唆を戦略の視点で書いています。ぜひ記事を読んでいただき、キャリアへの参考にしてみてください。

伽藍とバザール


まずご紹介したい本は、人生は攻略できる (橘玲) です。


この本に書かれていて興味深いと思ったのは、「伽藍とバザール」 です。

以下は、本書からの引用です。

それを 「伽藍とバザール」 で説明しよう。

伽藍というのは、お寺のお堂とか教会の聖堂のように、壁に囲まれた閉鎖的な場所だ。それに対してバザールは、誰でも自由に商品を売り買いできる開放的な空間をいう。そして、伽藍かバザールかによって同じひとでも行動の仕方が変わる。

バザールの特徴は、参入も退出も自由なことだ。商売に失敗して、「なんだ、あいつ口ばっかでぜんぜんダメじゃないか」 といわれたら、さっさと店を畳んで別の場所で出直せばいい。

その代わり、バザールでは誰でも商売を始められるわけだから (参入障壁がない) 、ライバルはものすごく多い。ふつうに商品を売っているだけでは、どんどんじり貧になるばかりだ。

伽藍とバザールでは、ゲームの勝ち方が異なります。

もう少し引用を続けます。

バザールでは、悪評はいつでもリセットできるのだから。

これを言い換えると、バザールの必勝戦略は 「よい評判 ( 「あの店、美味しいよね」 「そこがいちばん安いよ」 ) をたくさんあつめること」 になる。だからこれを 「ポジティブゲーム」 と呼ぼう。

それに対して伽藍の特徴は、参入が制限されていて、よほどのことがないと退出できないことだ。このような閉鎖空間だと、ちょっとした悪口 ( 「あそこの店主、態度悪いよね」 ) が消えないままずっとつづくことになる。

その代わり、新しいライバルが現われることはないのだから、競争率はものすごく低い。どこにでもある商品をふつうに売っているだけで、とりあえずお客さんが来て商売が成り立つ。

これがゲームの基本ルールだとすると、どういう戦略が最適だろうか。それは、「失敗するようなリスクはとらず、目立つことはいっさいしない」 だ。なぜなら、いちどついた悪い評判は二度と消えないのだから。

このように、伽藍の必勝戦略は 「悪い評判 (失敗) 」 をできるだけなくすことになる。こちらは 「ネガティブゲーム」 だ。

伽藍とバザールの比較


バザールと伽藍の特徴をまとめると、次のようになります。

環境


✓ バザールの環境
  • 開放的な空間
  • 誰でも商売ができる (参入障壁が低い) 。競争相手が多い
  • 悪評が立てば出ればいい
  • 出ていきやすい

✓ 伽藍の環境
  • 閉鎖的な空間
  • 参入が制限されている (商売をする人が決まっている) 。競争相手は少ない
  • 悪評がいつまでも残る
  • 出ていきにくい

攻略法


✓ バザールの攻略法
  • よい評判を集める
  • 新しいことに挑戦する
  • ポジティブゲーム

✓ 伽藍の攻略法
  • 悪い評判がでないようにする
  • 目立つことはせず、失敗を起こさない
  • ネガティブゲーム


思ったこと


ここからは、伽藍とバザールについて思ったことです。

✓ 伽藍とバザールで思ったこと
  • 環境の理解と選択
  • 複数のコミュニティを持つ
  • 成功要因 (KSF) 
  • 出口戦略
  • 自分のコントロール範囲

以下、それぞれについて順番にご説明します。

環境の理解と選択


1つ目に思ったのは、自分のいる環境の理解です。

今回の文脈では、ポジティブゲームなのかネガティブゲームのどちらの世界に自分はいるかです。そして、自ら環境を選ぼうとしているか、自分がより活きる世界を主体的に選んでいるかです。

戦場を選択する大切さです。マーケティングに当てはめるなら参入市場、キャリアなら業界・会社・職場の選択と理解です。

複数のコミュニティを持つ


自分がいるコミュニティはいくつ持っているでしょうか?

仕事に邁進をしていると、職場が自分のコミュニティの全てになっていることもあります。

伽藍とバザールの話で思ったのは、自分がいる環境は1つに依存するよりも、複数を持っておくとよいことです。仕事とプライベートでのそれぞれのコミュニティ、仕事でも複数あってよいです (複業の考え方) 。

コミュニティのポートフォリオという観点で考えさせられました。

成功要因 (KSF) 


伽藍とバザールでは、攻略法は180度違いました。成功要因は環境で変わるわけです。

戦略では、主要な成功要因を Key Success Factor (KSF) と表現します。

自分がいる環境での KSF は何かは、常に意識しておきたいことです。そして、目指す水準に対して自分の KSF のレベルはどれくらいかのギャップ理解、ギャップをどう埋めるかも把握しておきたいです。

また、一度 KSF を理解したり習得できたからと言って終わりではありません。KSF は変わる可能性があり、常にアップデートしていくことが大事です。

出口戦略


伽藍とバザールでは、そこからの出やすさ (立ち去りやすさ) が異なりました。

たとえ伽藍のような環境にいたとしても、最悪のシナリオとして出口戦略は持っておきたいです。

もちろん、出ないで済むのであれば、それに越したことはありません。しかし、戦略プランとしては 「もし ~ なら」 の想定と、それが起こった時にどう対応するかのシナリオはあったほうがいいでしょう。

自分のコントロール範囲


伽藍とバザールで思ったことの5つ目は、環境や KSF に対して、自分がどれだけコントロールできるかの見極めです。

環境に対して自分が影響を与えることはあるか、KSF や差別化をどうコントロールするか、出るタイミングなど、今の環境で自分にできること・できないことの把握です。


まとめ


今回は、伽藍とバザールについてでした。

最後に今回の記事のまとめです。

バザールの環境
  • 開放的な空間
  • 参入障壁が低く、競争相手が多い
  • 出ていきやすい

伽藍の環境
  • 閉鎖的な空間
  • 参入が制限されている。競争相手は少ない
  • 悪評がいつまでも残る。出ていきにくい

バザールの攻略法
  • よい評判を集める 「ポジティブゲーム」
  • 新しいことに挑戦する

伽藍の攻略法
  • 悪い評判がでないようにする 「ネガティブゲーム」
  • 目立つことはせず、失敗を起こさない

伽藍とバザールで思ったこと
  • 環境を理解し、自ら選択する
  • 複数のコミュニティを持つ
  • 成功要因 (KSF) の理解と実践
  • 出口戦略を持っておく
  • 自分のコントロール範囲の見極め



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。