今回は書評です。
本のタイトルは、Pitch ピッチ 世界を変える提案のメソッド (Open Network Lab 著) です。
✓ この記事でわかること
- 本書の概要 (内容を一言で言うと)
- ピッチとプレゼンの違いとは?
- シンプルなピッチのフレームワーク
- 仮説検証プロセス (4つのフィット)
- 豊富な事例から学べる本
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
この本に書かれていること
今回ご紹介したい本は、Pitch ピッチ 世界を変える提案のメソッド (Open Network Lab 著) です。
一言で内容を言えば、スタートアップ企業の実際のピッチ事例から、仕事での提案やプレゼンへの学びがある本です。
ピッチというスタートアップの時には生死を分ける勝負には、ビジネスパーソンの参考になることがたくさんあります。
以下はこの本の内容紹介からの引用です。
シリコンバレーではじまった、スタートアップが多忙な投資家から資金提供を受けるために短時間で行うプレゼン、それが 「ピッチ」 です。従来のプレゼンとは異なり、相手の予備知識や環境などの条件が整っていない中でも、「その場で相手の決断を引き出す」 ことをゴールとしています。
本書は、日本初のスタートアップ・アクセラレーターである 「Open Network Lab (オープンネットワークラボ : オンラボ) が、日本のスタートアップを支援する中で、積み重ねてきたピッチのノウハウを紹介しています。
投資家の決断を引き出す説得力あるピッチを作るには、前提として 「誰のために」 「どんなビジネスを」 「どうやって」 作るのかといった、ビジネスの結晶化が欠かせません。これまで多くのスタートアップを支援し育ててきたオンラボ独自の、ビジネス創出のメソッドを丁寧に解説しています。
ビッチとプレゼンの違い
まずは前提として、ピッチと一般的なプレゼンの違いを見ておきましょう。
ピッチは通常は3分から長くても5分程度で、その場で相手、例えば投資家の決断を促します。決断とは、投資する意思決定です。相手の即時のアクションを求めるわけです。
ピッチとプレゼンの違いを整理すると、次のようになります。
出典: The highest Goal
ピッチのフレームワーク
この本の骨格になっているのが、ピッチの共通のフレームワーク (7つの項目) です。
7つの項目
本での説明の順番、実際のスタートアップ企業のピッチスライドもこのフレームが使われています。
✓ ピッチのフレームワーク
- 誰の
- 課題を
- 解決する
- なぜ今
- 既存代替品
- 市場規模
- なぜあなた
7つの補足
順番に補足をすると、最初の3つ 「誰の」 「課題を」 「解決する」 は、想定するターゲット顧客が持っているどの課題に対して、自分たちはどうやって問題解決をするかです。解決のソリューション (方針) と、具体化された商品やサービスは何かです。
次の4つ目の 「なぜ今」 は、なぜこのタイミングなのかです。例えば、時流に乗っている、キーとなる技術が実証可能になった、このタイミングでローンチ (市場投入) しないと他の競合に先を越されてしまうといった、なぜ今自分たちはこれをやっているかの理由です。
項目の5つ目 「既存代替品」 とは、ターゲット顧客が既にやっている他の解決手段のことです。競合の商品・サービスに当たります。
6つ目の 「市場規模」 は、参入しようとしている市場の魅力度です。市場の大きさや将来性、競争環境のことです。その市場において、自分たちの特徴と、発揮できる強みは何かも含めます。
最後の7つ目 「なぜあなた」 は、自分たちのチーム紹介です。商品・サービスアイデアを本当に実現できるメンバーなのか、投資家に 「このメンバーなら信頼できる」 「ぜひ投資したい」 と思わせるチームになっているかです。
アイデアの具体化
この本にはピッチスライドの作り方に加えて、アイデアをどうやって具体化し、実現するかの方法も書かれていて参考になります。
4つのフィット
次の4つを順番に進めていきます。
✓ アイデアを具体化プロセス (4つのフィット)
- 顧客と課題のフィット
- 課題とソリューションのフィット
- ソリューションとプロダクトのフィット
- プロダクトと市場のフィット
それぞれの補足
4つについて、補足解説をしますね。
1つ目の 「顧客と課題のフィット」 とは、対象とする見込み客は本当に自分たちが想定する課題を持っているかです。仮説として設定する課題を持つ人は実在するかの検証です。
2つ目の 「課題とソリューションのフィット」 とは、顧客課題に対して自分たちが考えたソリューション (問題解決の方法) は、お客にとって魅力的に見えるかです。見込み客にその方法を採用したいと思ってもらえるかの検証になります。
3つ目の 「ソリューションとプロダクトのフィット」 とは、ソリューションが具現化された商品・サービスを欲しいと思うか、お客に自分のためのプロダクトと思ってもらえるかです。そしてこれが重要で、「お金を払ってでも欲しい」 と思ってもらえるかです。
4つ目の 「プロダクトと市場のフィット」 とは、商品・サービスの市場性です。市場性とは、お金を払ってでも必要とされるマスト度合いに加え、ビジネスとして成立する売上と利益の規模は本当にあるのかどうかです。
以上の4つのフィットを1つずつクリアしていきます。この方法は、商品アイデアという仮説の検証プロセスです。
豊富な事例から学べる本
この本の特徴は事例がたくさん載っていることです。
ここまで見てきた 「ピッチの7項目 (フレームワーク) 」 と 「4つのフィット (仮説検証プロセス) 」 を、実際のスタートアップ企業の事例を使ってわかりやすく説明されています。
例えば、企業の労務業務を自動・効率化する 「スマート HR」 の当時の投資家へのピッチスライドや CEO の言葉やインタビューからリアルに学べます。これが他の本との違いです。
理論と実践の両方があり、参考になる本でおすすめです。
まとめ
今回は、「Pitch ピッチ 世界を変える提案のメソッド」 の書評でした。
最後にまとめです。
本書の概要
- スタートアップ企業の実際のピッチ事例から、仕事での提案やプレゼンへの学びがある本
- これまで多くのスタートアップを支援し育ててきた、オンラボ独自のビジネス創出メソッドが書かれている
ピッチのフレームワーク
- 誰の (ターゲット顧客)
- 課題を
- 解決する (ソリューションと商品・サービスの特徴)
- なぜ今 (このタイミングでのピッチや起業した理由)
- 既存代替品 (顧客がすでに使っている方法 (競合) )
- 市場規模 (市場の魅力, 市場での自分たちの優位性)
- なぜあなた (チーム紹介)
アイデアの具体化プロセス (4つのフィット)
- 顧客と課題のフィット → 顧客は本当にその課題を持っているか
- 課題とソリューションのフィット → 課題に対して適切な解決方法か
- ソリューションとプロダクトのフィット → 商品・サービスはお金を払ってでも欲しいか
- プロダクトと市場のフィット → 商品・サービスの市場性があるか
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