今回は IoT データの有効活用を、マーケティングの観点から掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- ハンガーとビーコンで、来店客の購買行動データを収集
- この実証実験の本質とは?
- マーケティングに学べること
おもしろいと思ったアパレルの取り組みをご紹介し、データ活用という視点でマーケティングに学べることを解説しています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ハンガーで来店客のお気に入りを可視化
今回ご紹介したいのは、アパレル店舗での IoT を活用した取り組みです。
この話は、日経新聞の記事を読んで知りました。
アパレル大手の TSI ホールディングスは京セラと組み、店のハンガーにセンサーをつけて客の行動をデータ化する実証実験を始めた。
来店客がどの服を手に取り、試着したかを記録し、関心度を測る。データは販促に使うメールマガジンに反映し、将来は電子商取引 (EC) とのデータ連携も検討する。効果が確認できれば他の店舗にも拡大する考えだ。
ハンガーにつけたセンサーで客の行動を検知し把握する (出典: 日経)
仕組みをもう少し詳しく見ていくと、ハンガー以外にブルートゥースとビーコンを使います。そして、収集したデータをメルマガで紹介し、アプリや EC サイトでの販促につなげるとのことです。
再び記事からの引用です。
ハンガーには加速度センサーとブルートゥース (近距離無線技術) のビーコン (電波受発信器) などを装着。鏡や試着室にもビーコンを設置している。
客は入店時にスマートフォンのアプリを起動させ、店頭の機械にスマホをかざす。服を手に取ると、ハンガーの加速度センサーが検知してビーコンを発信。客のスマホのブルートゥースがビーコンを受信し、商品を手に取ったと判別する。
さらに服を店内の鏡や試着室に持っていくと、近くのビーコンが発した信号をハンガーのセンサーと客のスマホが受信。鏡の前で体に服を合わせたり、試着したりしたと判別する。試着した服は、手に取った服や体に合わせた服より、関心が高いと推測する。
関心があるものの購入しなかった商品は、後日メールマガジンに載せて、EC サイトや店舗への再来店を促す。将来はアプリのプッシュ通知や EC サイトとのデータ連係も検討する。プライバシーの保護に配慮し、収集したデータは実証実験のみに使う。
ハンガーのデータをもとにメルマガ経由で EC サイトや店舗へ誘導する (出典: 日経)
ハンガーからのデータ収集の意味合い
それでは、ご紹介している取り組みの本質は何かを掘り下げてみましょう。
結論として、ポイントは3つです。
✓ ハンガーからのデータ収集の意味合い
- ブラックボックス情報の可視化
- 顧客の理解
- 販促への活用
それぞれ順番に補足しますね。
ブラックポックス情報の可視化
1つ目の 「ブラックポックス情報の可視化」 とは、これまではお客の店内での行動は店員が目で追っていて、属人的にしか理解されていませんでした。お店全体で共有されたり、データとして蓄積されていたわけではありません。
ハンガーとビーコンから行動データを自動で収集し、顧客情報としてストックできるのが1つ目の意味です。
顧客の理解
2つ目の意味合いは 「顧客理解」 です。
お客さんがお店で気になった服を手に取ったり、その中でも試着室へ持っていったものはそれだけ興味関心が強いわけです。収集したデータからお客さん1人1人の服への好みが見えてくるので、顧客理解につながります。
販促への活用
3つ目のポイントは、販促の活用です。
手に取ったり試着してもらってもその時は買われなかった服を、後からメルマガで紹介しアプリや EC サイトに誘導することで、お客さんの好みに合った服をレコメンドできます。
学べること
では最後に、店内での IoT ハンガーとビーコンを使ったデータ収集から、マーケティングに学べることを整理してみましょう。
一言で表現すれば、学びは 「お客さんについて理解したことは打ち手につなげよう」 です。
今回の事例のポイントは2つで、「ハンガーとビーコンによる顧客理解 (気になった服の把握) 」 と、「メルマガ等での販促への活用」 です。
お客さんの店内行動データを収集し、しっかりと具体的な打ち手につなげています。
お客さんを理解することは大事です。ただし、理解をして 「なるほど」 で終わらせてはいけません。収集させてもらった行動データを、お客さんへの価値に変えて戻すことが大切なのです。
ご紹介した事例は 「収集した顧客データからの価値転換の仕組み化」 として学びがあります。
まとめ
今回は、店内のハンガーとビーコンで 「お客さんの買い物行動のデータ収集」 という取り組みから、マーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
ハンガーからのデータ収集の狙い
- ブラックボックス情報の可視化
- 顧客の理解
- 販促への活用
顧客理解から打ち手へ
- 実証実験でやっていることは、収集した顧客データからの価値転換の仕組み化
- 顧客理解は大事だが、理解しただけで終わってはいけない
- お客さんについて理解したことは打ち手につなげよう
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