ご紹介したい本は、「心」 が分かるとモノが売れる (鹿毛康司) です。
本書の概要
この本は、お客さんの 「心」 を理解することの重要性と、具体例から心をどのように掘り下げて理解するかの方法が書かれています。
人はいつもいつも合理的に、論理的に行動しているわけではありません。本人も気づいていない心理が少なからず行動に影響を与えています。
マーケティングではこのような行動につながる、奥にある心の琴線のことを 「顧客インサイト」 と言います。心のホットボタンとか心のツボと呼んだりもします。
顧客インサイトを見つけるのは簡単ではありませんが、本書が言っているのは 「自分の心」 を使えば、お客さんの心 (インサイト) を発掘しやすくなるということです。
ではどうすれば顧客インサイトを見出せるのでしょうか?
顧客インサイトを掘り起こす方法
自分の日常での選択や行動から 「自分の心の動きや感情」 を探ることで、顧客インサイトへのヒントを得られます。
たとえば、「普段は行かない牛丼チェーン店に1人で入って食べる」 という行動を通じて 「今は誰も私に関わらないでそっとしておいて」 という感情を見つけられます。また、「出社前のドリップコーヒーを買う」 から 「今日1日の仕事に向かうために、少しだけ最後にリラックスした気持ちに浸りたい」 や 「仕事に集中する儀式を行いたい」 という気持ちを見出すことができるでしょう。
このように、自分の心の中を深く探っていくことは、他者の心も理解することにつながります。
ただし、全ての顧客体験を自分で経験することは難しいでしょう。
例として、ハーレーダビッドソンという大型バイクのマーケティングを担当する場合、自分でユーザーになって体験するためには大型二輪の免許やまとまったお金が必要になるので、実際にハーレーのバイクに乗ったり所有することがすぐにはできないかもしれません。
しかしそれでも、類似の経験、たとえばジェットコースターやスキーなどの体験を通じて、お客さんの深層心理に迫る感情や動機を探ることはできるはずです。
自分の経験や感情を深く掘り下げることで、お客さんの心の中にある顧客インサイトへの手がかりが得られるのです。
お客さんの心に響く価値提案
顧客インサイトから価値提案へ
マーケティングのプロセス全体を見たときに、顧客インサイトを捉えることは前半の山場です。逆に言えば、インサイトを発掘することはまだ半分のところでしかありません。
後半で残っている大事なことは、顧客インサイトにもとづいたお客さんへの価値を定義し、つくり出し、お客さんの心に響くような価値提案をすることです。真にお客さんに響く 「心の価値 (顧客インサイトを満たす価値) 」 の実現です。
売り手は商品の性能や特徴を強調してしまいがちですが、買い手であるお客さんは商品について、同じほどは関心がないものです。お客さんにとって大事なのは、自分が本当に望んでいること、ずっと諦めていた問題や不満をその商品が解消してくれるかです。
心の琴線として隠れていた顧客インサイトを呼び起こすような価値提案をし、お客さんから 「そうそう、こんな商品が欲しかった」 と思ってもらえるかです。
効果的なマーケティングには、インサイトまで深くお客さんを理解し、顧客理解にもとづいてのお客さんの心に響く価値提案があるのです。
マーケターとクリエイターの協業
価値提案への効果的な言葉やメッセージ、ビジュアルをつくり出すには、クリエイターの力が不可欠です。
クリエイターに対して、お客様像を明確に伝えることが大事です。特にお客さんの心のツボについてはしっかりと伝え、解像度高く共有しましょう。
パンフレット制作を例に、クリエイターへの具体的な伝え方は次のようになります。
「今回は新商品なので、パンフレットでは商品名とともに、〇〇 の良さをお客さんに驚きを持って見てもらえるようにしたいと考えています。お客さんには △△△ というインサイトがあると思っています。だからお客さんがこのパンフレットを手に取ったときに、一瞬でその心のツボが押されるような内容にしたいです。そして、パンフレットを一通り読み終えた後に、その場ですぐにこの電話番号に電話をかけたくなるようにしたい。電話のコール数は少なくとも3000件を目指したいです」
パンフレットへの意図、お客さんに次にどうしてほしいか、その文脈となるお客さんの心 (顧客インサイト) までの詳細をクリエイターへ伝えられるのは、お客さんの心まで理解しているマーケティング担当者だからできることです。
成功するマーケティングとは
深く理解したお客さんの心を価値提案に結びつけ、お客さんに価値だと思ってもらえるための最後のメッセージまでつなげます。最後までやり切りこだわることで、神は細部に宿ります。
成功するマーケティングのポイントは、
- お客さんを決める
- 顧客インサイト (人を動かす隠れた気持ち (心のホットボタン) ) まで深く理解する
- お客さんの心 (顧客インサイト) にもとづき商品の価値を定義する
- 価値をお客さんへのメッセージにして提案する
- 自社商品がお客さんに選ばれる状況にする
まとめ
今回は、「心」 が分かるとモノが売れる (鹿毛康司) という本をご紹介し、読んで学べたことからポイントを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- お客さんの 「心」 を理解することの重要性と、具体例から心をどうやって掘り下げて理解するかの方法が書かれている本
- 自分の行動や気持ちを掘り下げることで、お客さんの心を理解する手がかりが得られる。自分自身の心との対話を通じて顧客インサイトを探る
- 顧客インサイトをもとに、お客さんの真の要望や問題解決につながる価値提案をする。マーケティングの成功のカギは、お客さんの心に響く価値を実現し、自分たちが選ばれる状況をつくれるか
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!