投稿日 2012/03/31

ここ最近考えている4層フレームワークと、コミュニケーションとコンテンツの話

当たり前のように使っているiPhoneや、ツイッターなどのソーシャルメディア。このへんを自分が使いだしたのはここ5年以内くらいであることにふと気づきます。

今から5年前の2007年当時を思い返してみると、携帯電話はケータイと表現される今でいうフィーチャーフォンでした。SNSと言えばmixiだったし、ソーシャルゲームも今ほど話題を呼んではいなかった。当時、ケータイを使って何をしていたかというと、キャリアのメールや電話のコミュニケーションが中心で、今スマホでやっているようなネット閲覧、ソーシャルサービスの利用、あるいは動画などのコンテンツを見る/遊ぶのようなことはほとんどしていなかったはずです。ちょっと話が脱線しますが、最近は「ケータイ」という表現をあまり見なくなったように思います。「スマホ」が多い。もしかしたらケータイという言葉は死語になりつつあるのかも。

2007年と今を比べると、ここ5年くらいで大きく変わったんだなとつくづく思います。その要因をあらためて考えてみると、(1)ネットワークのインフラは高速/大容量通信がコストを下げながら実現され、(2)モバイルデバイスは2007年にiPhoneという新しいスマートフォンの登場とGoogleがAndroid OSの無料オープンにしたことでアンドロイド端末との競争、(3)ツイッターやフェイスブックあるいはGREEやモバゲーなどのプラットフォームが次々につくられ、(4)プラットフォーム上で音楽・動画・ゲームなどのコンテンツプロバイダーが展開する。これら4つの要素:インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの成長や変化がここ5年くらいで多くを変えてしまったのではと思います。

■4層のフレームワーク

この4層は、今の状況がどうなっているのか、あるいは今後はどう変わるのかを考えるために役に立つ切り口だと思っています。例えば2007年くらいというのは、4層は携帯キャリアがほぼ独占できていたように思います。ドコモなんかが典型で、
  • インフラ:ドコモが提供する携帯回線
  • デバイス:ドコモ仕様で携帯製造メーカーが作ったケータイ
  • プラットフォーム:iモード
  • コンテンツプロバイダー:iモード向けに様々なコンテンツを提供
こうして見ると、きれいに囲い込みができていますよね。ドコモ以外の例えばauでもez webというプラットフォームを持っていて、それぞれのキャリアが4層で独自のエコシステムを展開していました。

ところが2012年現在を考えると、4層には様々なプレイヤーが存在しキャリアの影響力は小さくなっている状況がうかがえます。
  • インフラ:キャリアが提供する携帯回線、Wi-Fiなど
  • デバイス:iPhone、Android。スマホやタブレットなど種類も増加。必ずしもキャリアに依存していない
  • プラットフォーム:フェイスブック、ツイッター、グーグル。GREE、モバゲーなどのコンテンツプラットフォーム。LINEなどのコミュニケーションプラットフォーム
  • コンテンツプロバイダー:ソーシャルメディアと連携された音楽/動画、ゲーム、など

最近、仕事でスマホを使うことがあったのですが、発注して新しく届いたアンドロイド端末を使用してみて思ったのは、使うのにあまりキャリアを意識することがなかったことでした。どういうことかと言うと、アカウントはGoogleアカウントで登録し、メールも@docomoではなく@gmailがあれば十分。電話もスカイプとかLINEなどのアプリを使えばいいし、ちょっとしたコミュニケーションだったらフェイスブックからもできてしまう。動画はYouTubeやTEDのアプリで余りあるほど見られるし、ゲームもAngry BirdsとかGREEとかいろんなアプリが用意されている。携帯会社というキャリアは携帯回線の4層で言うインフラ部分くらいです。

■コミュニケーションとコンテンツの2つに

ところで、自分がネット上でやりとりしている情報(データ)は大きく分けてしまうと、コミュニケーションとコンテンツの2つだと思っています。それぞれ具体的には
  • コミュニケーション:通話・メール・チャット。検索した言葉や何を買ったかなど人が発する情報も含む
  • コンテンツ:映画/動画・音楽・ニュースなどの情報やゲームなどのエンターテイメント
ニコニコ動画などは、動画を複数ユーザーで視聴しながらコメントをつけるなどのコミュニケーションの要素もあるので、コミュニケーションとコンテンツの両方を要素を持つ場合もありますが。

大きな方向性として、コミュニケーションは無料化の方向に、コンテンツは無料化と一部有料化に分かれると考えています。コミュニケーションは人と人とのやりとりなので、本来はそこにお金はかからないもの。コミュニケーションをする相手が目の前にいれば直接話すので、特にお金がかかるとかはありません。コミュニケーションを物理的に離れた人と、あるいはメールなどで時間差を使って行なうニーズが起こり、そのためにはコミュニケーションインフラを使うことになった。インフラ構築/維持にコストがかかるのでその分をユーザーが負担するため、携帯電話で電話をしたりメールを送るのに相応の料金が発生しています。

それが、技術の進歩やビジネスモデルを工夫することで無料で使える様々なコミュニケーションサービスがでてきています。電話であれば、スカイプやLINE、Viber、050プラスなどは基本無料。メールもドコモなどの携帯キャリアが提供するアカウントではなくGmailを使えばタダ。これが前述のコミュニケーションが無料化する流れです。

次にコンテンツの無料化と一部有料化。無料コンテンツの代表例は天気や電車/交通情報、ニュースなどでしょう。ニュースは日経や朝日が有料化に積極的ですが、国内外の出来事をざっと知るくらいであれば無料で手に入ってしまいます。これに比べ、お金を払ってでも見たい/遊びたいコンテンツは有料モデルが成立します。有料モデルとはユーザーへの課金モデルのことで、身近な例ではソーシャルゲームが当てはまります。もちろん基本無料で遊べますが、ゲームにハマってしまうと有料アイテムを使うケースも増えユーザーへの課金が発生します。逆に言えば、ユーザーはゲーム内のアイテムにお金を払ってでも遊びたい、ゲームを続けたいというニーズです。有料コンテンツは海外のほうが整備されている印象で、NetflixやHuluなどの有料動画サービス、Spotifyといった課金モデルの音楽サービスなど。無料登録だけでも利用できますが、有料会員になることでより便利に使えるようになります。フりーミアムモデルとも呼ばれている世界です。

■4層への影響

コミュニケーションの無料化と、コンテンツは無料化/有料化は、4層それぞれに影響を与えます。

インフラ:無料コミュニケーションにシフトしコンテンツ使用のためのデータ通信量が増大。ドコモやauなどの通信障害がたびたび発生しましたが、今後も増え続けるスマホユーザーとユーザーごとの利用データ量のダブルで増えるのでインフラ構築コストがかさみます。それに耐えられなくなったときに定額制がデータ従量制になるかもしれません。ネットワークの中立性という継続課題もあります。

デバイス:コミュニケーションとコンテンツ利用をするには不可欠なデバイス。スマホは先進国だけではなく低価格で多機能な端末提供されると新興国でもユーザーが爆発的に増えそうです。PCはないけどモバイルはある、コミュニケーションインフラが整っていない新興国ではモバイルでのコミュニケーションが無料というのは大きい。その後はゲームなどのコンテンツユーザーも増えるのでビジネスチャンスは広がりそうです。

プラットフォーム:コミュニケーションやコンテンツを提供するプラットフォーム。人間関係が構築されるフェイスブック、人間関係+興味のツイッター、ビジネスでの人間関係のリンクトイン。グローバル展開を加速させているGREEやモバゲーなどのゲームコンテンツプラットフォーム。プラットフォーム上ではコミュニケーションが行われ、ユーザーはコンテンツを利用する。無料サービスは今のところ広告モデルで成立させ、一部コンテンツを有料化するというビジネスモデルです。

コンテンツプロバイダー:同じコンテンツでも利用範囲が制限される無料版は広告モデルで、より便利なサービスは有料版でコンテンツを提供します。コンテンツが、お金を払ってでも利用したくなるようなプレミアムなものと、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)などの無料で利用できるものに分かれていく。

■最後に

冒頭で2007年と2012年現在を比べましたが、5年後の2017年には今とは大きく変わっているはずです。変化の幅は07年⇒12年よりもっと大きく変わっているかもしれません。「そういえばあのころはフェイスブックとかあったよね」みたいな会話をすることになるのかもしれません。人間関係のプラットフォームは今のところはフェイスブックですが、5年後もそうとは限らないのです。

インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの4層で、これから何が変わり、何が変わらないのか。変化の激しい時代にいますが、表面的なことに振り回されず本質を見落とさないようにしたいものです。

投稿日 2012/03/24

ドラッカーとチキンラーメンから考えるイノベーション




ドラッカーは、著書である マネジメント - 基本と原則 において、企業の目的を 「顧客を創造することである」 と定義しています。企業の基本的な機能は、マーケティングとイノベーションの2つと言います。


1. マーケティング

ドラッカーは、マーケティングは顧客の欲求を考えることから始めよと説きます。顧客は何を買いたいのか、顧客が求めている価値は何かです。


2. イノベーション

ドラッカーはイノベーションとは 「いまだかつで誰も行ったことがないことを行なうこと。誰も知らないことをすること」 だと言います。

科学や技術そのものでではなく価値であり、組織の中だけではなく、組織の外にもたらす変化です。イノベーションの尺度は外の世界にいかに影響を与えられるかであると言っています。


世界初のインスタントラーメン商品 「チキンラーメン」


これはイノベーションだと思うのは、チキンラーメンです。
投稿日 2012/03/20

できない社員が一気に伸びる 「行動科学マネジメント」 はゲーミフィケーションでもあった


Free Image on Pixabay


組織や部下のマネジメント方法の1つに、WILL PM が提唱する 「行動科学マネジメント」 というものがあります。

今回のエントリーは、行動科学マネジメントをご紹介します。


行動科学マネジメントとは


名前に行動科学とあるように、行動科学マネジメントは人の行動そのものに焦点を当てます。行動をより具体的に分解して目標を達成させる手法です。結果を生むプロセスに目を向けます。

ベースとなる考え方は 「結果とは行動の積み重ねによって生まれる『産物』である」 です。行動科学マネジメントは3つのステップで成り立っています。

  1. 行動が起こせるレベルまで分解する
  2. チェックリストをつくる
  3. 行動することに 「快」 を与える (例: ほめる)

最新記事

Podcast

多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。