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このブログでは、訪問いただいた方に役に立つと思ってもらえるような本を紹介しています。読んだ本の書評を書いたり、エントリーの参考情報として本の内容を引用しています。
今回のエントリーでは、2017年9月の1ヶ月でクリックが多かった本をご紹介します (6冊) 。順番は第6位から昇順です。
- 脳には妙なクセがある
- 凡人を達人に変える77の心得
- Harvard Business Review 2008年11月号
- プロの資料作成力 - 意思決定者を動かすテクニックとおもてなしの心
- ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件
- WHY から始めよ! - インスパイア型リーダーはここが違う
脳には妙なクセがある (池谷裕二)
脳の最先端の研究結果がわかりやすく紹介されています。著者は脳研究者である池谷裕二氏です。様々な脳の 「クセ」 が書かれています。
興味深く読んだのは、意識の自分が判断する前に、無意識の自分がもうすでに決めているという話でした。本人が 「まだどちらかにするか決めていない」 と思っていても、実は無意識下ではすでにどちらかに決めているとのことです。
もう一つ印象的だったのは、脳と身体の関係でした。 身体行動が先で、それに伴う感情が形成されるという脳の働きが紹介されています。
例えば、研究からわかってきたのは、笑顔をつくる → 楽しいと感じるという一般的な理解とは逆の順番でした。研究によると、笑顔の表情をつくるとドーパミン系の神経活動が変化をすることがわかりました。ドーパミンは快楽に関係した神経伝達物質なので、「笑顔をつくる → 楽しくなる」 の順番とのことです。
本書では、他に以下のようなトピックが扱われています。
- 「行きつけの店」 にしか通わない理由
- 何事も始めたら 「半分」 は終わったもの?
- 脳はなぜか 「数値」 が苦手
- 「心の痛み」 も 「体の痛み」 も感じるのは同じ部位
- 歳をとると、より幸せを感じるようになる理由
- 「今日はツイてる」 は思い込みではなかった
- 脳は 「自分をできるヤツ」 だと思い込んでいる
関連エントリーは以下です。
凡人を達人に変える77の心得 (野村克也)
野村克也氏の本です。この本は考えさせられることが多く、時折読み返しています。
本書では、野村氏がヤクルト・阪神・楽天の三球団で監督を務めていた時に、ミーティングで選手によく話していたことがまとめられています。
書かれている内容は野球のことが中心です。本書が考えさせられるのは、野球でこのように言える、同じことは営業などの一般的な仕事に当てはめるとこうではないかと続くことです。
具体例 (野球) → 一般化 → 具体例 (ビジネス) となっています。
読みながら、自分の状況と照らし合わせながら考えることができます。そのプロセスを踏めることが本書の価値です。
この本を取り上げたエントリーはいくつかあります。
Harvard Business Review 2008年11月号
掲載されていたインタビュー記事で、セオドア・レビットは興味深いことを言っていました。
- データは情報ではなく、また情報は意味ではない
- データを情報に、情報を価値に変えるには、何らかの加工が必要。それは思考である
セオドア・レビットの言葉には、データ分析やマーケティングへの示唆があります。
「データは情報ではなく、また情報は意味ではない」 というのは、data, information, intelligence を区別することの重要性を教えてくれます。
セオドア・レビットは、「いかに真のマーケティングを実践するか」 という問いに、「真のマーケティングに必要なのは知識ではなく思考である」 と語ります。また、データを情報に、情報を価値に変えるのは思考であるとも言います。
関連エントリーはこちらです。
セオドア・レビットが語ったデータ分析とマーケティングへの示唆
プロの資料作成力 - 意思決定者を動かすテクニックとおもてなしの心 (清水久三子)
この本は、どうすれば価値のあるビジネス資料を作成できるかが書かれています。
本書の特徴は、一般的なイメージで捉えられている資料作成よりも、それ以前に本来やるべきことについて多くの説明がされている点です。
一般的に資料作成力を向上させるとは、グラフや図、タイトル、色の使い方など、いかに魅力的に資料をつくるかのテクニックを上げることでしょう。しかし、本書が参考になるのは、もっと手前のプロセスにおいてです。
具体的には、資料作成のために明確にすべき以下の3つについてです。
- 資料作成の 「目的」
- その資料は誰に向けてつくるのかの 「ターゲット」
- 資料で何を伝えるのかの 「メッセージ」
3つが曖昧なままで、ワードやパワーポイントなどから資料作成の作業に入ると、作業時間ばかりが積みあがるだけではありません。相手に伝わらない資料になってしまいます。そうならないためにも、目的・ターゲット・メッセージの明確化は重要です。
書評エントリーはこちらです。
書評: プロの資料作成力 - 意思決定者を動かすテクニックとおもてなしの心 (清水久三子)
ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建)
この本の内容紹介は、次のように書かれています。
戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある。
大きな成功を収め、その成功を持続している企業は、戦略が流れと動きを持った 「ストーリー」 として組み立てられているという点で共通している。
戦略とは、必要に迫られて、難しい顔をしながら仕方なくつらされるものではなく、誰かに話したくてたまらなくなるような、面白い 「お話」 をつくるということなのだ。
本書では、多くの事例をもとに 「ストーリー」 という視点から、究極の競争優位をもたらす論理を解明していく。
本書で書かれていたことで、思わず人に話したくなったのは、ある競争戦略フレームでした。SP と OC という戦略概念です。
- SP (Strategic Positioning): ポジショニングの戦略。他社と違うところに自社を位置づけること。SP は、何をやる・何をやらないかという意思決定や活動の選択
- OC (Organization Capability): 組織能力による差別化。他社には簡単に真似できない組織や仕組みとしての強みのこと。表面的には真似することができても、実際の組織内での実行レベルでは中々真似できないもの。時間とともに常に進化していく
SP が他社と違ったことを 「やる」 に対して、OC は他社と違ったものを 「持つ」 ことです。SP は短期的な戦略的意思決定で、OC は中長期での競争優位性となるものです。
SP と OC のわかりやすい例えが、レストランです。
SP (やること) はどんなメニューを提供するかです。例えば日本食なのか中華なのかイタリアンかです。日本食でも高級か庶民的か、あるいは伝統的な料理か新しい料理かの、他店との違い (ポジショニング) です。
一方の OC (持つこと) は、腕前のよい料理人やシェフを雇い、どんな厨房や、料理の注文・調理・提供する仕組みを持つか、あるいは仕入先やどんな素材を持っておくかです。
WHY から始めよ! - インスパイア型リーダーはここが違う (サイモン・シネック)
TED で 優れたリーダーはどうやって行動を促すか をプレゼンしたサイモン・シネックの著書です。
本書で紹介されているアイデアは、「人が動かされるのは、何を (what) ではなく、なぜ (why) である」 です。Why は、自分の動機・ビジョン・理念です。自分が信じていることを語り、共感が生まれれば人々を惹きつけられるという考え方です。
本書ではゴールデンサークルというフレームが紹介されています。中心から why, how, what の三重の円です。

ポイントはこの順番です。著者は、優れたリーダーは why → how → what の順で伝えると言います。
関連のエントリーはこちらです。
Why からはじまるゴールデンサークル:シンプルかつ応用度の高い思考アイデア