2017/09/07

書評: プロの資料作成力 - 意思決定者を動かすテクニックとおもてなしの心 (清水久三子)


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プロの資料作成力 という本をご紹介します。



著者の問題意識


以下は、この本の冒頭に書かれていたことです。ビジネスの資料作成について著者の問題意識です。

資料作成については、これまであまり重視されていなかったようです。読者のみなさんもこれまで、資料の作り方について、誰かに習ったり、本などから基礎を学んだことは、ほとんどないのではないでしょうか。

(中略)

しかし、これまでなんとかなっていた人も、ここで資料作成のノウハウを、いまいちど確認しておいたほうがいいでしょう。これからはなんとかならないようになるとともに、今後資料作成のスキルの重要性がますます高くなるからです。

なぜなら今後、ビジネスが多様化、複雑化するのに伴い、会社や業界の垣根を超えて、提案や報告、交渉をする必要に迫られるからです。共通言語が異なる相手にも伝わる資料を作る力が問われてくるのです。

また、スピードも重要です。社会の情報化が進むにつれ、その膨大な情報の中から必要とするものを取捨選択する時間はますます貴重になりつつあります。


本書の特徴


この本の特徴は、一般的なイメージで捉えられている資料作成よりも、それ以前に本来やるべきことについて多くの説明がされている点です。

一般的に資料作成力を向上させるとは、グラフや図、タイトル、色の使い方など、いかに魅力的に資料をつくるかのテクニックを上げることでしょう。

しかし、本書が参考になるのは、資料作成のために明確にすべき以下の3つについてです。

  • 資料作成の 「目的」
  • その資料は誰に向けてつくるのかの 「ターゲット」
  • 資料で何を伝えるのかの 「メッセージ」

この3つが曖昧なままで、ワードやパワーポイントなどから資料作成の作業に入ると、作業時間ばかりが積みあがるだけではありません。相手に伝わらない資料になってしまいます。そうならないためにも、目的・ターゲット・メッセージの明確化は重要です。


資料作成の5つのプロセス


本書が提示するのは、資料作成の5つのプロセスです。先ほどの目的・ターゲット・メッセージの3つに加え、後工程で構成とビジュアルの2つを合わせたものです。

5つそれぞれは次のような位置づけです。

  • 目的:何のために資料を作成するか [Why]
  • ターゲット:誰に見てもらうための資料か [Who]
  • メッセージ:何を伝えるか [What]
  • 構成:メッセージをどのような順番で伝えるか [How 1]
  • ビジュアル:メッセージをどのような見せ方にするか [How 2]

資料作成で、文章・グラフや図などの手を動かす作業は5つ目のビジュアルです。プロセスの最後にあるように、広い意味での資料作成で大事なのは、作業に入るまでに目的から構成までを考え抜くことです。


5つのうち重要なのは 「ターゲット」


5つのプロセスで、著者が重視するのはターゲットの明確化です。具体的にやることは、ターゲットの理解と期待を把握することです。


ターゲットの理解

  • ターゲットをコアターゲットとサブターゲットに分ける。それぞれどのような人か
  • 現時点で、ターゲットが知っていること、持っている情報や知識は何か


期待

  • ターゲットが資料から知りたいことは何か
  • その知りたいことがわかれば、ターゲットにとってどのように役に立つか (例: 次にどんな行動を取ることができるか)


ターゲットが明らかになってはじめて、何を伝えるかのメッセージに落とし込みます。

メッセージはターゲットの立場から考えます。何をどのように伝えられれば、知りたいことを満たせるか、ターゲットにとっての次のステップに活かせられるかです。


資料作成に 「おもてなしの心」 を


本書の最後に書かれていた、「おもてなしの心を持った資料作成を」 という言葉が印象的でした。以下は、本書から該当箇所の引用です。

「おもてなしの心」 についてですが、とても日本的なニュアンスを感じさせるこの言葉は、英語では何と訳されると思われますか。

「hospitality (ホスピタリティ) 」 や 「entertainment (エンターテイメント) 」 がそれにあたると思われる方も多いでしょう。

(中略) これが 「おもてなし」 の英訳にあたるのではないかと言われている言葉があります。それは 「user experience (ユーザーエクスペリエンス) 」 です。

「user experience」 とは、製品やサービスを使ったり体験したりすることによって人間が認知する体験を総称したもので、例えば iPad や iPod といった製品、あるいはディズニーランドでの体験や高級旅館のサービスに代表されるように、一般的に求められる機能やサービスを超えてさらに 「楽しい」 「うれしい」 「心地よい」 「感動的な」 体験価値を重視しようという考え方です。

(中略)

資料作成という仕事においても同じでしょう。単にファクトさえあればいいというだけではなく、徹底的に考え抜かれたメッセージやストーリー、相手の立場に立ったわかりやすく、さらには心を動かす表現など、資料を通じてユーザーエクスペリエンスを提供することで選ばれる人材になれるのです。

資料作成での 「おもてなしの心」 とは、相手視点で考えることを突き詰めることです。いかに相手を慮った資料が作成できるかです。



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多田 翼 (書いた人)