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今回は、顧客接点について書いています。
例えば、スマホのアプリは、ネットにつながったデジタルでの顧客接点 (タッチポイント) と見ることができます。
今回は、アマゾンの 「キンドル」 と 「アマゾン・ゴー (レジ無しの食料品店) 」 を例に、顧客接点が果たしている役割、ビジネスにどのような意味があるかを考えます。
エントリー内容です。
- 顧客接点の2つの役割
- 顧客接点の例 (キンドル、アマゾン・ゴー)
- ビジネスモデルと顧客接点
顧客接点の2つの役割
ユーザーとのタッチポイントとなる顧客接点の役割は、表と裏の2つがあります。
- 表の役割:利用されることにより、価値を提供する (ユーザー体験をもたらす)
- 裏の役割:顧客接点を通してユーザーデータを収集する
キンドルを例に顧客接点を考える
アマゾンの電子書籍端末のキンドルを例に、顧客接点の2つの役割をご説明します。
キンドルの表の役割
キンドルには、電子書籍を選ぶ・買う・読むというユーザー体験があります。具体的な提供価値 (ユーザーにとってのうれしさ) は以下です。
- キンドル内でストアに行き、欲しい本が見つかる。その場ですぐに電子書籍を買える
- 1台のキンドルに何冊も電子書籍を保存できる
- 持ち運びやすく、片手で読める
- ハイライトやメモができる。マイページ (クラウド) に自動保存される
- 文字の大きさや行間の長さを調整できる (シニアフレンドリーな機能)
キンドルの裏の役割
キンドルをユーザーデータの収集という仕組みで考えると、キンドルの役割は、電子書籍というコンテンツの 「選択」 「購入」 「利用」 のデータを取ることです。
あくまで私の推測ですが、具体的には次のようなユーザーデータを収集できます。
- どんな本から選び (選択範囲) 、何の本を買ったか
- 本をどこまで読んだか、あるいはどこを読まなかったか
- 何回読んだか
- どの部分をハイライトしたか
2つめから4つめのように紙の本では決してわからない、ユーザーの読書の状況を詳細にデータで取ることができます。
アマゾンは、EC サイトのビジネスは、購入された商品をユーザーの自宅等に届けるまででした。その後に商品がどのように利用されたかは直接知ることはできませんでした。レビューやカスタマーサポートへの問い合わせ内容で確認できる程度です。
しかし、キンドルでの電子書籍、他にはミュージックや映画の電子コンテンツは、ユーザーの選択や購入だけではなく、利用までデータが収集できるのです。
表と裏の好循環
表の役割と裏の役割は、うまく機能すれば好循環が起こります。
ユーザーが顧客接点で何度も利用し、利用時間が長いほど、価値のあるユーザー体験が提供できていることになります。利用すればするほど、ユーザーデータが収集できます。
ユーザーデータから、ユーザーがどんな人なのかのプロフィール情報がつくられます。どういう選択・購入・利用の仕方のデータから、ユーザーの行動情報が得られます。
裏の役割が機能すると、表の役割であるユーザー体験の向上に貢献できます。表と裏は表裏一体であり、卵と鶏という相互関係にあります。2つに一貫性があれば、好循環になります。
アマゾン・ゴーに見る 「表と裏の役割」
アマゾンの真骨頂は、他にはないユーザー体験を提供し、同時にデータ収集をしてより良いユーザー体験に発展させるやり方です。レジのない店舗であるアマゾン・ゴーにも見ることができます。
アマゾン・ゴーを、顧客接点という視点から見た表と裏の役割は、次の通りです。
- 表の役割:レジ無しで買えるユーザー体験の提供 (ネットのユーザー体験をリアル店舗で再現)
- 裏の役割:客の店内行動というユーザーデータを収集する仕組み (将来的には店舗という位置情報も含まれる可能性)
裏の役割として、ユーザーの店舗での選択・購入のデータを収集します。データによって、ユーザーのプロフィール情報と行動情報の質を高め、表の役割であるユーザー体験を向上させます。
なお、アマゾン・ゴーについては、別のエントリーで解説しています。よければ、ぜひご覧ください。
ビジネスモデル全体における顧客接点の重要性
キンドルもアマゾン・ゴーも、顧客接点という着眼点によって、共通する本質が見えてきます。ビジネスモデル全体における顧客接点の重要性です。
ビジネスモデルが筋の良いものかどうかを見る視点は、3つあります。
- 価値:主体者や仲介者から顧客へ提供される価値は何か。関係プレイヤー全員に win-win が成立するか
- 価値の源泉:提供価値を生み出す源泉は何か。希少性があり真似されにくいか
- 価値の収益化:ビジネスモデルの主体者や仲介者には、提供価値を通して持続的な収益がもたらされるか
ビジネスモデルの視点から、顧客接点を考えてみます。
顧客やユーザーへは、顧客接点を通して価値が提供されます。ユーザーにとっては、価値を直接体験するところが顧客接点です。上記3つのうち、1つめに当たります (顧客へ提供される価値は何か) 。
価値を提供するためには、ユーザーを理解することが必要です。提供者にとって顧客接点はユーザー理解の場所です。直接聞くこともあれば、キンドルやアマゾン・ゴーのように選択・購入・利用ごとのデータを収集する方法もあります。
いずれも大事なのは、誰のどんなデータを、何のために収集するかです。収集するユーザーデータや情報を、ユーザー体験向上というより高い提供価値につなげられるかです。
収集データからのユーザー理解は、より良いユーザー体験を生み出す源泉になります。ビジネスモデルを見極める3つのうち、2つめに該当します (価値の源泉は何か) 。
顧客接点のうち、どこをマネタイズして、何をあえて無料提供するかが、収益化の仕組みづくりです。これはビジネスモデルを見る3つの、3つめに当てはまります (価値の収益化) 。
以上のように、顧客接点をどのように設計し実現するかは、ビジネスモデルに直接関わります。顧客接点は、ビジネスに直結し、果たす役割は重要です。
最後に
顧客接点とは、顧客とつながる場所です。つながりが持てれば、顧客接点での表と裏の役割である価値提供とデータ収集ができるようになります。
俯瞰すれば、ユーザーとの 「対話」 です。顧客への価値を提供するだけでもなく、ましてやユーザーデータを一方的に搾取するのではなく、インタラクティブな対話装置として顧客接点をつくれるかです。