お客さんの問題をどこまで解決できるのでしょうか?
お客さんが直面している 「不」 を自分たちが引き受けることで、ビジネスの可能性が広がります。
今回は、病院給食の自動配膳システム導入の事例から、「問題解決の自分ごと化」 という切り口でビジネスチャンスを捉える方法を紐解きます。
病院食の配膳の効率化システム
ご紹介したいのは、病院向けの業務効率化の事例です。
病院向け給食事業を手掛ける第一食品 (大阪府東大阪市) とパナソニックホールディングス傘下のパナソニックコネクトは病院給食のトレーに料理を並べる作業を自動化するシステムを開発した。このほど第一食品の相模原工場 (相模原市) に導入した。
開発されたシステムでは、病院向けの食事メニューはセントラルキッチンで調理と盛り付けがされます。そして、各患者ごとの指定されたメニューがトレーに載った状態で出荷されます。
この時点ですでに配膳は自動でできており、あとは受け取った病院で再加熱して患者に提供すればいいという流れです。
病院食の配膳の効率化システムによって、病院にとってはどのような恩恵があるのでしょうか?
登録された患者ごとの食事内容のデータを元に、1食ずつ料理ののった皿が自動で作業者の前に出てくる。作業者は皿をトレーに置くだけでセットが完了する。最後に人が目視で間違いがないかを確認し出荷する。
従来は患者ごとの食事内容が書かれた 「食札 (しょくさつ) 」 と呼ぶ紙を見ながら、スタッフが手作業で料理がのった皿を棚から選び、トレーに並べていた。
システムの導入で1ラインの作業人数は従来の14人前後から半数まで減らせるほか、経験の浅い人も作業を担えるようになった。従来の手作業ではスピードと正確性が求められ、1人の育成に2年程度かかっていたが、新システムでは入社2日目の社員にも作業を任せられたという。
学べること
では病院食の配膳の効率化システムの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
この事例から学べるのは、お客さんの 「不」 を引き取ることの重要性です。
病院給食提供の 「不」 と解決
一般的に病院給食の提供は、1人ひとりの患者の症状やアレルギーに応じて内容を変える必要があります。一見単純なことに見えるかもしれませんが、実際には細かい配慮や作業が求められます。
具体的には、それぞれの患者ごとに食事内容が記された 「食札」 の情報を確認し、スタッフが手作業で料理を選び分け、患者への指定内容に従ってトレーに並べます。現場に負担をもたらしていました。
このような状況を解決すべき問題と捉え、第一食品とパナソニックコネクトは病院食の自動配膳システムを開発しました。
作業者の前にすでに患者ごとに決められたメニューが用意された状態で料理が出てきます。作業者はそのままトレーに収め、最後に間違いがないかを目視で確認するだけです。
配膳効率化システムの導入により、1ラインの作業人数は従来の14人から約半数まで減りました。また、作業経験の浅い人でも配膳作業を担当できるようになり、従来は1人の育成に2年程度かかっていた作業を入社2日目の社員にも任せられるようになったのです。
問題解決を引き受ける
では最後に、今回の事例を一般化して捉えてみましょう。
お客さんの現場で起こっている 「不」 を自分たちが積極的に引き受け、問題解決を代わりに行うことで提供価値を高め、お客さんの満足度を上げることができます。お客さんの中で長らく見過ごされていた問題を解決する役割を、自社で丸ごと引き受けるというレベルまで踏み込んでいるわけです。
今回の学びのポイントは、「お客さんのその問題は自分たちが引き受けられないか」 という視点を持つことです。相手の問題を強く自分ごと化することで、新しいビジネスへの機会につながります。
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