初代たまごっち (1996年発売)|出典: Marketing Native
今回のテーマは、マーケティングのブランドです。
✓ この記事でわかること
- たまごっちの25年の歴史
- 歴史を俯瞰して見えてくること
- ブランディングへの示唆
- 「変えること」 と 「変えないこと」
おもちゃの 「たまごっち」 を取り上げ、マーケティングへの学びとしてブランドのつくり方を解説しています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
たまごっちの25年の進化
日経新聞に、たまごっちのことが書かれた記事がありました。
以下は記事のリード文です。
バンダイの携帯型育成玩具 「たまごっち」 が再び人気になっている。
2021年11月には誕生25周年を記念した腕時計型の 「Tamagotchi Smart (たまごっちスマート) 」 を発売。タッチパネル採用でスマートウオッチのような仕様が小学生だけでなくかつてのブームを知る20 ~ 30代の大人にも受け入れられている。
たまごっちスマート (出典: FASHION PRESS)
では、バンダイの公式サイトにあったヒストリーページや今の日経記事を参考に、たまごっちの25年の歴史を見ていきましょう。
大きくは3つの世代に分かれます。
第一世代
たまごっちが最初に発売されたのは1996年です。
手のひらに収まる小さな卵形のデザインに液晶画面がついたおもちゃで、持ち主が世話をしないと死んでしまうという生き物を扱う設定が当時は斬新でした。
女子高校生を中心に人気を呼び、発売2年半で日本を含む30以上の国と地域で累計4000万個以上が販売されました。
第二世代
その後ブームは落ち着きましたが、2000年代前半に人気が再燃します。
今度は小学生を主要ターゲット層として、2004年に 「かえってきた!たまごっちプラス」 が登場しました。第一世代から赤外線通信機能を追加し、通信機能によってたまごっち同士がつながり、キャラが交流できるようになりました。
さらに玩具店などの店頭に通信用機器 「でかたまごっち」 が設置されました。
キャラのエサやアイテムをダウンロードして入手する仕組みがあり、たまごっちは玩具のみで閉じず、外部との連携を進化させました。
また、2008年に発売された 「たまごっちプラスカラー」 は初のカラー液晶を実装し、キャラの表情が豊かになりました。
第三世代
2014年に登場したのが、「TAMAGOTCHI 4U (たまごっち フォーユー) 」 です。
機能的な特徴は、NFC (非接触型 IC カードのキャッシュレス決済などに使われる近距離無線通信) を新たに採用したことです。この機能を使って飲料の自動販売機などから限定アイテムを入手できるプロモーションなどを実施して話題を集めました。
2018年発売の 「たまごっちみーつ」 ではブルートゥースに対応し、スマートフォンとも連動できるようになりました。
さらに、2021年に新作の 「たまごっちスマート」 が登場しました。
機体のタッチパネルを指でなぞって操作するのが特徴です。画面上のキャラを指でなでると喜怒哀楽の感情を示したり、マイク機能を使えば話しかけた音を感知して反応します。
利用者の動きを感知するセンサーも内蔵しており、1日の歩数に合わせてキャラがねぎらいの言葉などをかけてくれます。
以下は 「たまごっちスマート」 のプロモーション動画です。
日経新聞によれば、2021年のクリスマス商戦の女児向け玩具の中では、たまごっちスマートは人気1位だったとのことです。20代以上の大人にも支持されており、バンダイによれば 「過去10年間で一番の売れ行き」 のようです。
「変えたこと」 と 「変えないこと」
前列左は1996年発売の初号機。前列右は2004年、後列左は2008年、後列右は2021年発売の機種 (出典: 日経)
ここまで見てきたたまごっちの歴史を俯瞰して、何が言えるかを掘り下げてみます。
結論を言うと、「変えたこと」 と 「変えていないこと」 に本質があります。
変えたのは機能の進化です。例えば、赤外線通信、NFC (近距離無線通信) 、Bluetooth 、タッチパネル画面、マイク機能です。
一方であえて 「変えていないこと」 もあります。
操作のボタンは画面の下に3つ、あとはオンオフ機能をつけていません。そして注目したいのはコンセプトです。たまごっちは 「生き物を育てる」 というコンセプトは一貫しています。オンオフ機能がないのはこのコンセプトだからで、生き物にオンもオフもないからです。
ブランディングへの示唆
たまごっちの 「変えたこと」 と 「変えていないこと」 には、マーケティングへの学びがあります。
たまごっちの 「生き物を育てる」 という変わらないコンセプトは、ブランド構築に貢献していると見ました。
ブランドのコアとなるコンセプトやつくりたい世界観は、一度決めれば安易に変えるべきではありません。コンセプトや世界観という 「中心に通る軸」 が定まっているからこそ、軸のまわりにあるものは変えられます。
たまごっちの場合は、「生き物を育てる」 というコンセプトがあり、コンセプトがブレない範囲での機能追加やデザインの変更でした。コンセプトは、何を変えるかの判断基準になります。
商品やサービス、あるいは企業がブランドになるのは一朝一夕ではできません。信念として通す軸が中心にあり、目指す世界観を見据えながら様々な打ち手をやっていきます。
コンセプトや世界観が浸透し少しずつ共感を得ながら、変えるものは変え、時間をかけて他とは違う特別な存在になり、ブランドになります。
たまごっちは、他のおもちゃにはない独自のポジションを築いています。ベースとして 「変えないこと」 があり、様々な進化をしながら変わってきたからこそ、結果として選ばれ続けるおもちゃになっているのです。
まとめ
今回はたまごっちを取り上げ、マーケティングのブランディングへ学べることを見てきました。
最後にまとめです。
たまごっちの 「変えたこと」 と 「変えていないこと」
- 25年の歴史でたまごっちは様々な機能を追加した。例えば、赤外線通信、NFC (近距離無線通信) 、Bluetooth 、タッチパネル画面、マイク機能
- 一方で変えていないのは、たまごっちは 「生き物を育てる」 というコンセプト
- オンオフ機能がないのはこのコンセプトだから。生き物にオンもオフもない
ブランディングへの示唆
- ブランドのコアとなるコンセプトをつくりたい世界観は、一度決めれば安易に変えるべきではない
- 中心に通る軸が定まっているからこそ、それ以外は変えられる
- コンセプトや世界観が浸透し少しずつ共感を得ながら、変えるものは変え時間をかけて他とは特別な存在であるブランドになる
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