あなたは商品やサービスの価格設定に悩んだことはないでしょうか?
高すぎてお客さんに敬遠されるかもしれない、低すぎて利益が出ないかもしれない…。そんなジレンマに陥ることはありますよね。
今回は、ユニークなシャワーヘッド 「ミラブル」 の価格設定が成功した理由を解き明かします。お客さんの 「心の予算枠」 を見極め、価格設定の課題感を一緒に克服していきましょう!
✓ わかること
- シャワーヘッド 「ミラブル」
- 話題を呼んだ CM
- シャワーではなく美顔器
- お客さんの心の予算枠を見極める
- 価格を10倍にする方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ミラブル
出典: 日経クロストレンド
出典: &GP
ご紹介したいのは、微細な水の泡を発生させ洗浄力を高めたシャワーヘッド 「ミラブル」 です。
開発の背景
持ち株会社のサイエンスホールディングスの青山恭明会長へのインタビューで、ミラブルの開発の背景が語られていました。
―― ミラブルはどのように生まれたのですか。
「 (サイエンスの技術を使った浴室装置を導入していた) タカラレーベンさんと一緒にアンケートをやったときに、女性の方が (バブルを顔や髪に当てるため) 風呂に潜っているという実態を知りました。それならばとマイクロバブルの美顔器を作りかけました。でも、できあがったときを想像してみると、これは絶対面倒くさいやろと思い、いったん開発は中止にしました。生活習慣に溶け込めないとダメなんです。それで『使わんと生活できへんもんってなんやろ』と考えていたのですが、何気なしにシャワーを浴びていて思ったんです。シャワーが美顔器になったらお金を出して買った人が使わなくなってしまうことは絶対にないと」
―― 商品名もシンプルで覚えやすいですね。
「うちの開発メンバーが未来のバブルとか、ミラクルをもじってミラブルというのを持ってきたときに、なんの抵抗もなくよいと思いました。カタカナ5文字以内ですし、耳の響きもよいし、落ち着く言葉やなって感じました」
話題を呼んだ CM
ミラブルのこちらの CM が印象的です。
先ほどの記事からの引用を続けます。
―― 女性が油性ペンで顔に描いた線をミラブルをつけたシャワーで落とす CM も話題を呼びました。
「インパクトがありました。あれでいろんなテレビ取材がきまして、特に『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系) で (19年に) 取り上げられた瞬間、会社のホームページのサーバがダウンしました。そこから、代理店さん、百貨店、量販店もえらいことになって全部3カ月待ちになりました」
「あの CM は電通さんのクリエーターさんにまず体感してもらおうと、油性ペンが落ちるのを見てもらったんですよ。そうしたら『これでいきましょう』と言われて。その日にクリエーターさんと1杯飲みに行って、酔っ払って調子にのって冗談半分で『女性が顔に書いたら面白くないですか』といったら『それでいこう』となりました」
ミラブルの価格設定
注目したいのはミラブルの価格設定の考え方です。
会長はインタビューで次のように語っていました。
1番最初に出した『ミラブル』は (税抜き) 3万8000円でした。シャワーヘッドは3000 ~ 5000円出せば十分という時代に、異常な価格でした。
ただ、僕らはシャワーだと思っていなかったんです。浴室で使う美顔器だという考え方でデビューさせました。
学べること
ではミラブルから学べることを掘り下げていきましょう。
価格設定に学びが得られます。
シャワーではなく美顔器
ミラブルを発売した当時の価格は4万円近い値段でした。普通のシャワーは3000円から5000円で十分買えるというのに対し、10倍近い価格です。
なぜできたかと言うと商品の捉え方を全く別のものに変えたからです。
見た目や商品の仕様はシャワーですが、ミラブルのことをシャワーとは捉えず 「浴室で使う美顔器」 であると打ち出しました。ここに学びがあります。
心の予算枠
学びを一般化するとお客さんの 「心の予算枠」 を見極める重要性です。
人はお金を支払う出費をどう見るか、予算項目の認識によって財布の開き具合が変わります。
例えば食事です。単なる食費だとスーパーでの買い物には数十円単位を気にしたりと、予算感覚への目は厳しいです。一方、大切な人と一緒に外食をする食事は食費というよりも交際費になり、数千円や時には万単位でお金を出します。
心の中での予算枠が何かによって金銭感覚は変わるわけです。
価格を10倍にする方法
心の予算枠はお金を支払うことによって得られる価値で決まります。
ミラブルに当てはめれば顔に水を当てるという行為は同じでも、美しくあるためにお風呂で美顔器を使っていると思えば、一般的なシャワーの10倍の価格でも買ってもらえるわけです。同じものでも価値認識によって心の予算枠が変わり、お客さんが支払う価格感が決まるのです。
商品やサービスはお客さんにとって本質的にどんな価値があるのか。その価値は心の予算枠の何に当てはまるか。価格設定をするときに掘り下げたい問いです。
扱う商品・サービスで得られる本当の価値をお客さんに伝え、体験価値をわかってもらい価格を打ち出すといいです。
まとめ
今回はシャワーヘッドのミラブルを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 価格を10倍にする方法
- 人はお金を支払う出費をどう見るかの 「心の予算枠」 によって財布の開き具合が変わる
- 心の予算枠はお金を支払うことによって得られる価値で決まる
- 扱う商品・サービスで得られる本当の価値をお客さんに伝え、体験価値をわかってもらい価格を提示しよう
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