今回は、アサヒビールが展開する 「スマドリバー」 を取り上げます。
スマドリバーは、ただのバーではありません。いかにしてお客さんの心をつかみ、期待を超える体験を提供しているのでしょうか?
お客さんの行動を捉え、その背後にある本当の望みや不満まで理解し、それに応える価値実現の秘訣を紐解きます。
スマドリバー
出典: アサヒビール
SUMADORI-BAR SHIBUYA は、ノンアルコール・低アルコールドリンクを提供するバーとして2022年6月に渋谷センター街にオープンしました。オープン以来、Z 世代やミレニアル世代を中心に人気を博しています。
2023年9月には、ノンアルコール・低アルコールドリンクの本格派バー 「THE 5th by SUMADORI-BAR」 がオープンしました。
お店のコンセプトを 「飲めない自分のままでいい」 とし、100種以上のメニューを用意し、アルコール飲料を飲めない人も楽しめるようにしました。
スマドリという、アルコール飲料を飲む人も飲まない人も、自分の体質や気分、シーンに合わせて好きなドリンクをスマートに楽しめる 「飲み方の多様性のあるバー」 を目指しています。
スマドリバーでは、Z 世代およびミレニアル世代をメイン顧客ターゲットにした具体的なペルソナを設定しました。ターゲット顧客の価値観や嗜好を反映したドリンクや店内の内装に細かい工夫を凝らすことで、店舗体験を追求しています。
学べること
ではスマドリバーの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
この事例は、アルコールドリンクという 「モノ」 だけではなく、「コト消費」 という体験を具体的に設計に落とし込んでいるのですが、ここに学びがあります。
顧客体験の追求
スマドリバーでは、見ていて楽しいと思える体験や、グラスがおしゃれといった味以外の要素も作り込んでいます。
メニューの多様さや選びやすさにも力を入れています。
アルコール飲料を飲めない人の 「お店では自分が注文できる飲み物の選択肢が圧倒的に少ない」 という声に応える形で、100種類以上のドリンクメニューをそろえました。
また、お酒の種類が多くても 「飲んだことがほとんどないので味が選べない」 という声もあったため、4象限のドリンクマップを作成しています。
出典: MarkeZine
診断コンテンツ形式で自分の好みに合わせてドリンクが選べます。
来店客の悩みや気持ちへの配慮
スマドリバーでは、来店客の不安や不満を解消するために、心理的な側面に配慮しています。
たとえば、ノンアルコール飲料も含めてすべてのドリンクでストローをつけずにドリンクを提供しています。その代わりにスマドリバーでは、アルコール度数の違いをコースターで識別できるようにしました。
顧客分析でわかった、アルコール飲料を飲めない人がドリンクを頼む時に 「自分だけストローが付いているのが嫌だ」 という気持ちに応えるものです。
他にも 「お酒を飲むと顔が赤くなるので恥ずかしい」 という声もあったことから、スマドリバーの店内照明をオレンジ色にし、顔の色がわかりにくいようにしています。
顧客理解からの価値実現
ここまで見てきたスマドリバーの取り組みは、アルコール飲料を飲まない人・飲めない人にとっての 「本格バーでの体験」 への憧れを満たすことを目指しています。
アサヒが狙っているのは、ノンアルコール飲料を 「お酒の代替品」 から 「大人の嗜好品」 にすることです。スマドリバーでは単に飲料を販売するだけでなく、お客さんがお店でどんな顧客体験をし、いかに価値を感じるかに焦点を当てているわけです。
では最後に今回のまとめとして、スマドリバーの事例からマーケティングへの学びを汎用化してみましょう。
次のプロセスを1つずつ進めることで、成功するマーケティングにできます。
✓ 顧客理解から価値実現へ
- お客さんの行動を捉え、背後にある本当の望みや不満などの心理を読み解いて理解する
- お客さんが取るであろう行動を予想し、求めている体験を予測する
- 求めている望みなどの文脈に合う切り口から、お客さんにとって魅力的に見えたり問題解決をする存在として商品・サービスを提案する
- お客さんに体験してもらい、価値を実現する
これらは、顧客中心のマーケティングアプローチにおいて必要不可欠な要素となります。
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