ビジネスで成功するためには、「やること」 と 「やらないこと」 の選択が大事になります。
今回は、限られたリソースを最大限に活用するための戦略、そして戦略は 「戦いを略す」 と書くように、戦わないための3つの戦略を解説します。
戦略とは
いきなりですが、戦略という言葉にどのようなイメージを持つでしょうか?戦略とは何でしょうか?
結論から言ってしまうと、戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。目的達成のためのリソース配分の指針が戦略です。
ではなぜ戦略が必要なのでしょうか。その理由は、2つあります。
✓ 戦略が必要な理由
- 目的を達成するため
- リソースに限りがあるため
もし自分たちの戦力が無尽蔵にあればリソース配分は必要ないわけです。しかし、現実はリソースには限りがあります。限りあるリソースをどう配分すれば目的を達成するかを考えることが、戦略をつくるということです。
戦略の肝は 「やらないこと」 にあります。やらないことが明確になっているからこそ、やることにリソースを集中できるのです。
では、ここまでの戦略の話を 「雑草」 に当てはめてみていきましょう。
雑草の戦略
競争から逃げてきた
雑草へのイメージとして、多くの人に共通するのは、雑草は 「望まれないところに生える植物」 や 「邪魔になる草」 という存在でしょう。
日本語では 「雑草魂」 という言葉がありますが、一般的な雑草のイメージは、本当の雑草の姿とは実は異なります。様々な雑草に共通する特徴としてあるのが、雑草とは 「弱い植物」 だということです。
雑草が弱いとはどういうことかと言うと、雑草は森林など他の多くの植物がいる環境では、生きていけない植物なのです (参考: 雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 (稲垣栄洋) ) 。
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前提としておさえておきたいのは、植物同士の競争の中身は大きく2つあるということです。
上方向と下方向の2つで、
✓ 植物の競争
- 日光の奪い合い。植物は上へと伸びたり、枝葉を広げる
- 地中の水や養分の奪い合い
いずれにおいても雑草は勝てません。自然界は激しい生存競争が繰り広げられていますが、雑草はこれらの競争に勝てず弱い立場の植物なのです。
森林や山は豊かな自然環境ですが、一方で激しい競争の場です。
雑草はこうした環境下では生きていくことができず、別の場所で生きることを選択しました。それが、道ばたや畑・田んぼなどの人間のいる環境です。雑草は、植物全体で見れば特殊な場所に逃れてきたわけです。
雑草の 「踏まれても起き上がらない」 戦略
雑草は森林などの植物同士のレッドオーシャンな環境から、他の植物がいないブルーオーシャンに移ってきました。
しかし、そこでは新たな戦いが待っていました。それは人間との戦いです。
人との戦いでも、雑草は真正面から戦うことを避けています。
「雑草魂」 という言葉があるように、雑草魂へのイメージは、しぶとい・あきらめないという粘り強いものでしょう。
しかし、雑草の実際は、雑草魂からくるイメージとは異なります。雑草でおもしろいと思うのは、踏まれた雑草は立ち上がらないということです。踏まれたら、そのまま横たわっているのが雑草なのです。
なぜ起き上がらないかと言うと、立ち上がることにエネルギーを使うことは優先度が低いからです。
雑草にとって大事なのは、いくら踏まれようが種子を残すことです。立ち上がることに余計なエネルギーを使うよりも、踏まれても種子を残すことに注力しているのです。
雑草が 「戦わない」 理由
雑草には、弱いからこその戦略があります。雑草が一貫して 「戦わない」 という戦略をとれるのは、目的が明確だからです。
雑草の目的は、種子を蒔いて子孫を残すことです。この目的を達成するために 「やること」 と 「やらないこと」 がはっきりしています。
他の植物と真っ向勝負をするのではなく、生きる場所を変え、環境に適応し、人間との向き合いでも正面から戦うことを避けています。戦力で勝る相手と、いかに戦わずに生き残っていくかに示唆があります。
戦わないための3つの戦略
雑草の話から一般化すると、戦わないための戦略に学びがあります。戦略を 「戦いを略す」 とするための3つのアプローチです。
✓ 戦わないための3つの戦略
- ニッチ戦略
- 不協和 (ジレンマ) 戦略
- 協調戦略
それぞれについて順番に見ていきましょう。
[戦わない戦略 1] ニッチ戦略
差異化とニッチは必ずしもイコールではありません。差異化はリーダーや大手プレイヤーと戦うこと、ニッチ戦略は戦わない戦略と捉えることができるからです。
前者の差異化は市場でのリーダープレイヤーと同じ土俵に立ち、違いを強調することによって戦います。
一方のニッチ戦略は、戦力が豊富な大手プレイヤーが気づかない、入ろうと思わないところで生きる道を見い出します。限られた市場で利益を上げることを狙います。
ニッチ戦略で重要になるのが、参入障壁をどう築くかです。参入障壁には、質的なものと量的なものの2つがあります。
質的な参入障壁とは、その市場での技術やビジネスモデル、ユーザー体験を常により良いものに磨き、市場での成功パターンを強化し続けることです。
もう1つの量的な参入障壁とは、市場規模や中身が大手にとって魅力的に映らないように意図的にコントロールすることです。
具体的には3つです。
✓ 量的な参入障壁
- 市場規模を大きくしすぎない
- 利益率を高くしすぎない
- 市場を一気に立ち上げない
自分たちの拡大や成長への欲求を抑えていくことが、量的な参入障壁になるわけです。
ニッチ戦略のポイントは、限られた市場を維持するために、質的または量的な参入障壁をつくり続けられるかです。
[戦わない戦略 2] 不協和 (ジレンマ) 戦略
2つ目の戦わない戦略は、不協和戦略です。
不協和戦略は、相手が持っている資源や強みを無効にする、さらには強みを弱みに転換することを狙います。
大手プレイヤーにとっては市場に入りたくても、もし参入するとジレンマが起こり入ってこられない状況をつくり出します。
ジレンマとは例えば、多くの店舗や営業人員を抱えることは高い営業力になってたものを、人やお店を介在しないビジネスモデルが成功パターンになれば、店舗や人員という資源が負債になってしまうことです。人・実店舗を介在させない新しいビジネスモデルに転換するために、簡単には人や店を捨てることはできないでしょう。
不協和戦略での勝ち筋になるのは、いかに大手プレイヤーよりも先手をうち、対応される前にジレンマとなる状況を実現するかです。
[戦わない戦略 3] 協調戦略
3つ目の戦わないための戦略は、協調戦略です。
ここまでの2つであるニッチ戦略と不協和戦略に共通するのが 「棲み分け」 でした。それに対し、協調戦略は 「共生」 の道を選びます。
協調戦略は、相手のバリューチェーンに入り込みます。または自分たちのバリューチェーンに他社を組み込むこともあります。
バリューチェーンや業務プロセスの一部を引き受け、共生できる領域と方法を探り、自分たちが必要不可欠な存在になるわけです。
バリューチェーンに入り込むためには、自分たちがそこで他よりもうまくできる強みを発揮できるかが問われます。
協調戦略で成功のカギを握るのは、自分たちのコアコンピタンス (強みにつながる源泉) を見極め、それを活かしてバリューチェーンをより良いものにできるかです。
まとめ
今回は雑草の話を皮切りに、戦略について考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと。目的達成のためのリソース配分の指針
- 戦略が必要な理由は、目的を達成するため、リソースに限りがあるため
- 戦わないための3つの戦略は、
① ニッチ戦略: 戦力が豊富な大手プレイヤーが気づかない、入ろうと思わない領域で生きる道を見い出す
② 不協和 (ジレンマ) 戦略: 相手が持っている資源や強みを無効にし、大手プレイヤーが市場に参入するとジレンマが起こり、入ってこられない状況をつくる
③ 協調戦略: バリューチェーンや業務プロセスの一部を引き受け、共生できる領域と方法を探る。自分たちが必要不可欠な存在になる
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